――続き――


GK  まさに、ここ数年の新日本の努力が形になったということかな?

    クッシ―は正直、不完全燃焼だったろうね。

金沢 本音は当然そうでしょ。

    飯伏からベルトを奪うなら最高の試合をしたかったろうし。

    でも、これもプロレス。今まで苦労してきたクッシ―なら切り替えられる。

    次回の飯伏戦まで楽しみが伸びたと思えばいいよ。

    それにG1でヘビー級相手にハクをつけた飯伏との再戦となれば、

    このカードはもっともっと盛り上がるんだから。



GK  じゃあ、ノアの有明コロシアムにいこうか。   

    なんといっても、今回の演出は素晴らしかったよ。

    ダンサーとポールダンサーが大活躍した。

    メインのGHCヘビー級選手権、永田裕志の入場なんか最高だったよね。

    あの毎回踊るたびに変化する、いや進化してるのか退化してるのか

    よく分からないナガダンスを女性ダンサーが見事に見せてくれた。

    聞くところによると、あのセオリーなきナガダンスにプロのダンサーも

    かなり苦労したらしいよ(笑)。

金沢 そのうえ、入場花道でダンサーたちと”ゼア!!”を決めた(笑)。

    近年最高の演出だったね。

GK  演出ばかり褒めてもどうかと思うので、

    丸藤正道が満を持してベルトを奪還した試合はどう見たの?

金沢 永田が元気すぎることもある。

    もちろん、永田はコンディションもいいし強いよ。

    だけど、丸藤は受け過ぎというか食らい過ぎじゃないかな?

GK  ああ、たしかに丸藤が受けまくる展開だった。

    でも、彼は受けと受身の達人だからね。

金沢 それはもう十二分に分かっているんだよ。

    ただ、この2年ほど彼の試合を観ていて、疲れてるんじゃないかなって。

    以前のように、ネコのようにポンポンっと受身をとって、

    痛烈なトラ―スキックの雨あられで大反撃に転じる丸藤とは少し違って見えた。

    リング上では三沢さんのあとを継いで、リング外では副社長でしょ?

    そりゃあ、疲れるし、キャリア・年齢以上にダメージも蓄積するって。

GK  次の挑戦者は同門の中嶋勝彦に決まったよね。

金沢 そう、だからまさに勝彦に期待してるんだよ。

    彼だって、キャリア10年を超えたし、今が最盛期だからね。

    丸藤に取って代わるぐらいのものを見せてほしい。

    それで楽をさせてあげると言ったら語弊があるけど、

    少しでも肩の荷を降ろせたら丸藤ももっといいコンディションで

    リングに上がれると思うんだ。



                  




GK  じゃあ、次は両国国技館で開催されたWRESTLE-1(以下、W-1)だね。
    集客はイマイチだったけど、内容はどうだったの?
金沢 W-1の長所はTNAとガッチリ提携していること。
    短所は、興行に1本の芯が通っていないというか、
    エンタ―テインメント路線がファンに浸透していないことかな?

    ただし、今回はいい発見がいくつかあったよね。

GK  あの吉岡世起にベルトを取られたイギリスの選手はよかった。

    ディーン・オールマークだね。まだ29歳だって。

金沢 ああ、いい選手だった。

    ライガーがイギリス遠征で対戦しているんだけど、

    ライガーも絶賛していたらしいよ。

GK  大和ヒロシに負けたけど、ドイツのレオン・ヴァン・ガステレンもおもしろい選手。

    カール・アンダーソンに似てるんだよね。

金沢 今回、ようやく大和がEWPインターコンチのベルトを奪取したでしょ?

    オレはね、大和はもっと2年早くトップ戦線に上がってこなきゃいけないと思ったし、

    KAIなんかは3年前にスター選手になっていないと。

    要は、ポスト武藤敬司という部分で、遅れをとってしまったわけだよね。

    そこは全日本の分裂騒動やリング外のトラブルがあったり、

    イチバン大切な時期にゴタゴタがリング上にまで

    大きく影響してしまったのは仕方がないことだけど。


                  



GK  そのポスト武藤の筆頭である真田聖也はどうだった?
    今回は相手がグレート・ムタとはいえ、直接対決で敗れている。

金沢 真田も、本当は3年前にトップスターになっていないと。

    だけど、今回はよかったと思う。

    過剰なパフォーマンスはいらないんだよね。

    そういう意味でも、真田聖也というレスラーを真っ直ぐにムタへぶつけていった。

    たしかに、ムタに負けたけど、オレ自身の感覚でいくと、

    あれは真田がリードした試合だと思うんだよ。

    TNAを経験して、今いい方向に伸びていると感じた。

    語弊があるかもしれないけど、できればムタに引導を渡してほしかったね。

    それこそ、W-1の未来じゃない?

GK  あれだけ立派な道場を持っているわけだから、
    若い選手をどんどん育ててほしいね。


                


金沢 もうひとつ大事な試合があったね。

    ZERO1の佐藤耕平と船木誠勝の世界ヘビー級選手権。

    異色だったねえ、あの空間にあって。

GK  本当に、あの試合だけカラ―も会場の空気もまったく違っていた。

    まあ、耕平は逞しくなったよ。

    大物の風格が出てきたし、船木とグラウンドで渡り合えるんだから。

金沢 ただ、あれは耕平の100%どころか、60%ぐらいしか魅力が出ていない。

    もっとバチバチに打ち合いたかったんじゃないかって。

    エルボーでボコボコにやり合いたかったんじゃないかな?

    そこを船木が上手く自分のペースで、そういう展開にもっていかせなかった。

GK  今の耕平はZERO1でも頭ひとつ突き抜けた感じで、

    全盛期の高山善廣を彷彿させるような

    一撃の強さを存分に発揮しているんだよね。

金沢 これは絶対に「もう一丁!」だと思うんだけど、

    船木は大谷戦を望んでいたね。

    以前にタッグマッチで一度対戦しているけど、

    大谷から感じるものが凄くあったみたいで。

GK  秋には実現するんじゃないかな?

    大谷もその気十分だから。

    だけど、せっかくZERO1のベルトを巻いたんだから、

    田中将斗もぜひ体験してもらいたいね。

金沢 まったく同感!

    船木と大谷は新日本出身でルーツは同じだよね。

    そこであえて言うなら、UWF出身の船木とFMW出身の田中の対戦となると、

    これもまたエキサイティングだよなあ。

    そういえば、田中も言っていたよ。

    「予想外に噛み合うか、大凡戦になるか、どっちかでしょう」って。

    オレなんかは、船木vs大谷も船木vs田中も噛み合うと思うよ。







GK  これはリング外になるんだけど、4日に新生・全日本プロレス

    (オールジャパン・プロレスリング)の発足会見が行なわれた。

    秋山準が新社長となり、なんと馬場元子さんが取締役相談役で

    役員に名を連ね、会見にも出席したから驚いた。

金沢 秋山がついに腹を固めて、勝負に出たわけだよね。

    よく決心したと思う。

    だけど、やっぱり彼しかいないんだよ。

    最後の王道復活のチャンスへ向け腹を括った感じ。

GK  アナタ、秋山準の評価が高いものね?

金沢 それはレスラーとして?

    レスラーとしては、2000年代最高のレスラーだと思ってるよ。

    2000年代でいくと、武藤敬司、川田利明、秋山準が私的ベスト3だね。

    まあ、好きなレスラー、いいレスラーは他にもいっぱいいるから、

    なかなか絞れないけど、秋山は抜群にいいよねえ。
GK  そこで、今度は社長レスラー秋山になにを期待している?
金沢 彼はノア所属で三冠ヘビー級王座を奪取したときに、

    元子さんに連絡を入れているじゃない?

    「馬場さんのPWFを腰に巻いてもいいでしょうか?」って。

    そういう気配りも含めて、ジャイアント馬場とは何たるか?

    馬場全日本、王道全日本は何たるか?

    それを肌で知っている人間なんだよね。

GK  たしかに馬場さんを知っている世代となると限られてくる。

    諏訪魔は武藤体制全日本がスタートで、潮崎豪はノアからスタートしている。

    それに宮原健斗は健介オフィス出身だものね。

金沢 じつに、そこなんだよ!

    秋山がやるべきことは、馬場全日本プロレス、王道スタイルの真髄というものを

    諏訪魔、潮崎、宮原の3選手に心身ともに教え込むこと。

    どう考えたって、ヘビー級として新生全日本の将来を託せる男は、

    この3選手になるわけだからね。

GK  なるほど。

    秋山は頭がいいから、期待したいところだよね。

金沢 それと、いま新日本のリングは充実していて鎖国状態でやっていけるんだけど、

    フロントのトップが秋山となったら、ここ最近では断絶状態だった

新日本ー全日本の関係もフラットになると思うよ。


※その③へ続く……。