新日本プロレスの6・21大阪大会『DOMINION』は、

4時間にわたる一大ビッグショー。

今年度№1ともいえる、とんでもない盛り上がりの大会となった。


では、ビッグマッチ限定で登場するお気楽なGK氏と

4時間=全9戦のテレビ解説を務め喉がガラガラのガラケーに

なってしまった金沢氏に大阪の陣を振り返ってもらおうではないか!


GK  いやあ、入った。よく入った。

    超満員札止め、7300人だよ。

    2階席にしても向う正面の大型ビジョンの

    左右ギリギリまで人でギッシリなんだからこりゃあ驚いた。

金沢 戦前、中邑真輔vsバッドラック・ファレのインターコンチネンタル選手権が

    メインじゃカードが弱いなんて言われていたけど、すべてふっ飛ばした。

    大阪『DOMINION』伝説は健在どころかますますヒートアップしたね。

GK  先だっての横浜アリーナ大会は満員にならなかったけど、

    その不安要素を一掃してお釣りがくるような大会でしょう?

金沢 うん、現時点で今年度№1興行と言っていいかもしれない。

GK  まず、オープニングマッチのIWGPジュニアタッグ選手権

    (ヤングバックスvsタイムスプリッターズ)からいきなりかっ飛ばしてくれたよね。

金沢 いやあ、本当に素晴らしい試合だった。

    なんといっても俺が評価したいのは、いきなりハイスパートじゃなくて、

    ちゃんとレスリングから入っていったこと。

    そこにKUSHIDAとアレックス・シェリーの確かなレスリング技術

    を垣間見ることができるんだよ。

    2人ともチェーン・レスリングができるからね。

GK  ヤングバックスもただ飛ぶだけ、ただ蹴るだけ、ただ下品なだけ(笑)

    のチームじゃないからね。

金沢 凄まじいハイスパートの連続の末に、お互いの必殺連係の

    Ⅰ-94(パワーボム&スライスブレッド2)もモアバンク・フォー・ユアバック

    でも決まらない。

GK  最後はKUSHIDAがニックにホバーボードロック(飛びつき旋回式キムラロック)

    を完璧に決めた。KUSHIDAはスーパージュニアで優勝こそ逃したけれど、

    自信という何ものにも代えがたいものを身に付けたような気がする。

金沢 うん、タッグ最強といっていいヤングバックスを堂々とねじ伏せたんだから。

    もう、第1試合から会場は大爆発だよ。メインイベントでもいいような内容だった。

GK  そこで早速、来たよね。7・4後楽園ホールでは飯伏vsKUSHIDAの

    IWGPジュニアヘビー級選手権。

金沢 KUSHIDAが完全にファンに認知されたいま、

    これぞ”今の新日ジュニア”という闘いを見せてくれそうだ。

GK  これぞジュニアといえば、IWGPジュニアヘビー級選手権は

    予想と想像をはるかに超えた闘いになったね。

金沢 ハイフライヤ―世界一決定戦に偽りなしだって!

    もしかしたら今年のベストバウトかもしれないって!

    ジュニアのK点というか、プロレスという競技、

    ジャンルのK点を超えていたかもしれないって!!

GK  なんで越中詩郎の”やるって節”になってるんだって?

金沢 君もなってるって!

GK  ちょっと落ち着こうよ。

    もう、この試合に関しては、3つのムーブのインパクトに尽きるよね?

金沢 それに加えて、心配されていた飯伏のコンディションが素晴らしくよかった。

    あの、その場飛びカンク―ントルネードを観たかい!?

    永遠に回り続けるんじゃいかと思うぐらい回転していたよ。

GK  そして会場をドカ~ンと爆発させ、放送席も思わず声を失ったリコシェ・マジック。

    飯伏のエプロンからのスワンダイブ式雪崩式フランケンシュタイナーを食って、

    スクッと着地してのけ、次の瞬間、延髄斬りで逆襲。

    次は、リング上からダッシュしてコーナーマット&鉄柱超えの

    ノータッチトぺ・コンヒ―ロときたもんだ!

金沢 あんなスゲェ―空中技は初めて見たって!

    初代タイガーだって、サスケだって、ウルティモだって、

    ボラドールJrだって、ミステル・アギラだって、獅龍(カズ・ハヤシ)だって、

    あれはできないでしょう。

    できるのかもしれないけど、見たことないって!

GK  またエキサイトして”やるって節”になってますけど。

    さらに3つ目のインパクトはフィニッシュ・ホールドだよね。

    なんと飯伏が披露したのは新日本マット初公開となる切札、

    フェニックス・プレックスだった。

    でも放送席で、あんたよく言えたねえ。

    咄嗟に技名が出てきたの?

金沢 一瞬、アレ!?って思ったんだけどね。

    この技の型は見たことあるけどって。

    あ、3年前のDDT日本武道館決戦のメインでケニー・オメガを仕留めた

    究極の雪崩式フェニックス・プレックスと同じ技じゃないかって。

    俺は、正調のフェニックス・プレックスは見たことがなかったので、

    ちょっと躊躇ったんだけど、もう言っちまうしかないよねって。

GK  あとで聞くと、正調式フェニックス・プレックスを公開したのも、

    2年前6月のDDT後楽園ホール大会以来まる2年ぶりだってねえ。

    よくぞ咄嗟に言えた!

金沢 サンキューな(笑)。

GK  今のは、越中調? それとも真壁調?

    まあ、どっちでもいいか。

    それ以降も熱戦がこれでもか!と続いたけど、

    メインのIWGPインターコンチネンタル選手権はどうだった?

金沢 ちょっと待った!

    その前にメイン級のサプライズ発表があったじゃない。



GK  そうだ、飯伏vsリコシェの大熱闘の余韻に浸る間もなく、

    今年の『G1 CLIMAX』の全エントリーメンバーと

    各会場の注目カードが大型ビジョンで発表された。

    これもまた盛り上がったねえ。 

    新日本の演出力にはただただ感心するのみだよ。

金沢 そこでやっぱり俺は、ヘッドセットを外して観客の反応を確認してみたわけ。

    もちろん、沸きっぱなしなんだけど、そこの微妙な差を感じてみたいから。

    まずエントリーメンバーのAブロックでいくと、棚橋、飯伏、柴田、中邑、石井の5人、

    Bブロックでは、真壁、オカダ、AJスタイルズの3人に対して歓声が大きかった。

GK  まさかAJが出てくるとは!?という驚きがあったんだろうね。

    IWGP王者のAJは特別扱いだと思っていたところで、

    堂々と横一線のエントリーをしてきた。

金沢 新日本プロレスのクリーンヒットだよね?

    AJがいるといないとじゃ大違いだから。

GK  そのあと、注目カードが紹介されていたけど、観客の反応は?

金沢 まず、開幕戦7・21北海きたえーるのAJvsオカダ、棚橋vs飯伏で

    ウオッ―ときて、柴田vs中邑でドカーンと来たね。

    次7・26秋田の飯伏vs石井、AJvs内藤、柴田vs棚橋の3試合。

    7・28仙台では、中邑vs飯伏、8・1後楽園ホールのAJvs鈴木もかなりきていた。

    それに中邑vs石井の同門対決も沸いていたね。

GK  8・3大阪大会に関しては、地元開催だから3試合(AJvsランス、柴田vs飯伏、

    棚橋vs中邑)ともウォーと沸いていた。

    こんな感じかな? ここでやっぱり分かるのは棚橋、オカダ、中邑の3トップ、

    さらに柴田絡み、飯伏絡み、AJ絡みが飛びぬけて注目されているってことかな?

金沢 そうだね、だって鈴木みのるvsAJスタイルズなんてどうなっちゃうの?

    これ異次元というかあり得ないマッチアップだからね。

    果たして鈴木がAJをどう料理するのか? 興味津々だよ。

    AJがチャンピオンなんだけど、そういう考え方をしてしまう。

    あるいは、鈴木でもAJを料理できないかもしれないし…。

GK  そして、あなたのライフワークともいうべき一戦が、

    いよいよ、開幕戦で実現するね?

金沢 俺は10年待ったから!

    この中邑真輔vs柴田勝頼の宿命対決を10年待ったんだよ!

GK  まあ、興奮する気持ちは分かるよ。

    最後に2人がシングルで交わったのが、2004年のG1公式戦、

    8・8大阪のメインイベント。

    柴田がPKで真輔を破ったんだけれど、

    柴田の挑発行為に真輔がキレて、試合後に大乱闘を展開した。

    しかも引き揚げる真輔がダッシュして花道を戻ってきて、

    柴田に殴りかかったんだよね。

    「オマエに何がわかる!オマエに何がわかる!?」と叫びながら。

金沢 もうね、俺はもったいないから、この一戦に関しては黙っておくよ(笑)。

    それに当事者の2人にもコメントを出してもらいたくない。

    2人の10年を安っぽくしてほしくないんだ!

    この10年、2人は別々の道を死にもの狂いで歩んできた。

    10年間、悩み苦しみ、それでも信念をもって生きてきた。

    止まっていることなんて一時たりともなかった。

    ただし、俺の中でいくと、時計は止まっているんだよ。

    柴田vs真輔が10年前に見せた新世代プロレス、

    天龍vs永田、高山vs健介の闘いのあとに堂々とメインを張った

    2人の闘いの続きを待ち望んだまま、俺の時計は止めてあるんだよね。

GK  わかったよ、どれだけ特別な感情を持っているか、もう分かったから。

    過去の対戦成績は3戦して、1勝1敗1無効試合。

    そこに高校レスリング時代の戦績を入れると、真輔が一度勝っているから、

    2勝1敗1無効試合になるのかな?

    まあ、高校レスリングの話をしただけで、柴田は沸騰しそうだけど。

    とにかく今年の『G1 CLIMAX24』は「空前絶後の夏が来る!」の

    キャッチコピーが大袈裟とは思えない大会になりそうだ。

    さあ、大阪大会に戻ろうよ。

    メインの真輔vsファレをどう見た?

金沢 これは試合内容も予想以上だったし、

    最後の最後にとんでもないサプライズが起こって、

    ハッピーエンドではないけどインパクト満点のメインだった。

GK  真輔が担架送りになるほどのダメージを受けて完敗を喫したわけだからね。

金沢 真輔は戦前からファレにメッセージを送り続けてきたよね?

    りミッタ―を外して来てみろと。

    そうじゃないと、お前はただ腕組みしてるだけの男だぞって。

    だけど、真輔はファレの秘めたるポテンシャルを充分に理解しているようだった。

GK  アンタもファレのことは買っていたよね。

    緩急があって、どっしり構えていながら、いざとなった時の瞬発力と

    スピードにはスゴイものがあるって。

金沢 そう、それがまさにそのまま発揮された。

    ファレはリミッタ―を外して、振り切ってきたよね。

    あのスピアーを見た?

    あれ、本家ゴールドバーグより破壊力があるんじゃないかな。

    放送席でそれを言おうかと思ったけど、

    今のファンはゴールドバーグも知らないかもしれないから言わなかったけど。

GK  フィニッシュは140㎏のダイビング・ボディプレスから、

    バッドラックフォール。あの真輔が完全ノックアウトだよ。

金沢 俺はこの試合を観てアントニオ猪木vsスタン・ハンセンを思い出したよ。

    ハンセンは危険過ぎて米マットで干されかけていたでしょう?

    だけど、それを見出した猪木は、思いっきり来いと。

    それであの凄まじいウェスタン・ラりアットをもろに受けていた。

    闘いを通して、ハンセンを育て上げてしまったんだよね。

GK  うん、タイガー・ジェット・シンもそうだし、ハルク・ホーガンもそうだ。

金沢 箸にも棒にもかからないと言われたら怒られそうだけど(笑)、

    あのMVPのベストマッチを引きだしたのも真輔だし、

    ソンブラの価値をグンと高めたのも真輔で、

    スミスJr、シェルトン・Ⅹ・ベンジャミンとの連闘もしかりだよね。

    以前にも言ったけど、これは双方とも嫌がるかもしれないけど、

    中邑真輔はアントニオ猪木の粋にまで入ってきている。

    現代版・猪木と言っていいのかもしれない。

GK  一夜にして、ファレをトップ選手に育ててしまったことにもなるね。

金沢 もちろん、計算外はあるでしょう?

    リミッタ―を外したファレがここまで強烈だとは思わなかったんじゃないかな。



GK それにしても、これでリング上の勢力図は大変な事態になってきた。

    IWGPヘビー、IWGPインターコンチ、IWGPタッグをバレットクラブが独占。

    またもバッドエンドだよね?

金沢 いや、今回ばかりはセコンドのタマ・トンガが序盤に一度手を出しただけだから、

    決してブーイングを浴びるような王座交代劇ではなかったと思うよ。

    大阪のファンもブーイングではなくて、真輔の完敗に呆然という感じ。

GK  バッドエンドではないから、サプライズエンドという感じかな?

金沢 そうだなあ、こういう場合は”バレットエンド”としようか(笑)。

GK  おあとがよろしいようで!