1・4東京ドーム当日は土曜日。

これで一般の仕事始めは6日の月曜日となるから、

カレンダー上では久々に最高の日に当たった。


観客数は3万5000人。

昨年の実数発表である2万9000人を

6000人上回ったことになる。


当日、テレビ朝日『ワールドプロレスリング』の解説陣は

午後2時に会場入りと決まっていた。

プロレス3D用の撮影があったり、

もちろん制作打ち合わせがあるし、

第0試合が午後4時25分からと

いつもより早目に設定されていたこともあるからだ。


午後2時前、ドーム周辺にやってきて、

多少驚くと同時に嬉しい気分に浸る。

当日券を求める行列が200メートルほど続いているし、

グッズ売り場にも人垣と列ができている。


ドーム内に入ると、入場などのリハーサル中。

普段と勝手が違うせいか、けっこう押しているのが分かる。

「開場時間に間に合わないんじゃないの?」

関係者が口々に心配していた。

今回の舞台演出を手掛けたのは、

ももいろクローバーZの演出を担当する佐々木敦規ディレクター。

ももクロだけでなく、スポーツ、バラェティなどの演出も手掛けてきた人物。


私も顔見知り。

第一次『WRESTLE-1』(ファンタジーファイト『WRESTLE-1』の

2003年1・19東京ドーム大会のときにお世話になった。

あの大会のテレビ解説(フジテレビ系)を務めたのが、

ターザン山本氏と私だった。


佐々木ディレクターは大会数日前に、

進行台本を持参しわざわざゴング編集部まで訪ねてきてくれた。

そこで1時間ほど大まかな演出と進行を説明してくれた。

非常に仕事熱心な人である。


開場時間が押すだろうなあと思っていたものの、

なんとか進行リハーサルを収めて、

定刻に開場となる。


その現場の空気を見ながら、『PRIDE』を思い出した。

よく入場リハーサルが押しまくって、

マスコミ関係者まで入場できずに待たされたものだ。



第0試合の解説が終わって、少し時間に余裕ができた。

いよいよオープニング。

派手なセットバック、ビジョンを利用して第1試合からメインまでの

試合が順次、紹介されていく。

WWEみたい…

いや、WWEよりカッコいいんじゃないかな?


その模様をアリーナの後方から野上慎平アナウンサーと観ていた。


「凄いね、カッコいいわ!」


「金沢さん、なんかコレ観ているだけで涙が出そうになりますよ」


「これなら一見さん、ビギナーのお客にも響くだろうねえ」




かつてない昂揚感というか、不思議な感覚に襲われる。

いよいよスタート。


私の解説担当試合は、第0試合、第3試合(コンウェイvs小島)、

第5試合(矢野&ムタvs鈴木&ベンジャミン)、第7試合(後藤vs柴田)、

ファイナルマッチ(中邑vs棚橋)の5試合と休憩中の見どころ解説。

無論、他の試合もなるべくリングサイドの放送席

の並びで観戦するようにしていた。


それでは、いつものビッグマッチバージョン。

プロレスが趣味であるノリのいいGK氏と、

プロレスを仕事として掘り下げまくる金沢氏による

対談形式で1・4ドーム大会を語っていこう。


なお、写真のほうもビッグマッチ仕様。

ニッポンイチのプロレスカメラマン、

大川昇カメラマンの作品をところどころで披露したい。






GK  内野スタンドの入りは去年とそう変わらないと思ったんだけど、

    アリーナの客席がビッシリ組まれていたねえ。

    バックネット付近まで客席があって、通路も狭かったし。

金沢 あれは久しぶりの密集感だった。 

    アリーナの入りに関しては全盛期を彷彿させたんじゃない?

GK  で、第1試合から盛り上がっている空気は伝わってくるんだけど、

    なにか試合内容が散漫とした感じがしなかった?

金沢 それはジュニアの4WAYのバタバタ感とか、外国人同士のIWGPタッグ選手権とか、

    応援しづらいマッチメイクだったからじゃないのかな?

GK  内容は悪くないんだよね。

金沢 そう、ガイジン同士とはいっても、IWGPタッグはスリリングだったよ。

    試合に思い入れを持てるかどうかの問題。

GK  小島は意外とあっさりとNWA世界王座を奪取した。

    まあ、俺はハ―リー・レイスがいるだけで満足だったけど。

金沢 小島の力量からいえば、2連敗はないよね。

    むしろ、これからNWAベルトがどういう位置づけをされ、

    どういうチャレンジャーを迎え、どういう防衛戦を重ねていくのか、

    そちらのほうが興味津々ですよ。

GK  そして予測不能だったグレイシーの登場。

    あの入場Ⅴはよかった。

    ヒクソン、ホイス、ハイアン、ヘンゾの顔がセピア色に映しだされて…。

金沢 時代遅れか時代錯誤かわからないけど、キュンときたね。

    日本の総合格闘技ブームの火付け役は、間違いなくグレイシ―だから。

    とくに、ホイスとヒクソン。

GK  考えてみると、新日本が本気でヒクソンを新日本の東京ドームに

    上げようと交渉を進めていたのが、1998年の暮れごろだから、

    15年越しでグレイシーを引っ張り出したことになる。

金沢 しかも、タッグマッチだからね。

    俺はリングサイドで観ていたけど、

    スタンド席とかの反応はどうだったの?

GK  イチバン沸いたのは桜庭の入場だよ。

    やっぱり、あの知名度はプロレスの枠を超えている。

    ビギナーの人、一見さんでも桜庭和志は知っているから。

金沢 マッチメイク的にはこれしかないんだよね。

    グレイシーハンターの桜庭と、どんな相手に対しても、

    ケンカ腰の攻防に持っていける永田。

GK  それ以外なら、やっぱりクレイジー一族の矢野&飯塚しかいない(笑)。

金沢 それは観たいけど、ドームでは無理でしょう(笑)。

GK  結果はダニエルが道着を使った絞めで永田に反則負け。

沢 まあ必然的に再戦となるわけだけど、ダニエルより、

    ホ―レスのほうがプロレス向きだった。

    風貌もそうだけど、動きもプロレスに順応できそうな感じ。

GK  そういえば、格闘技好きとしても知られる木谷高明オーナーが

    放送席のすぐ後ろ、リングサイドで観戦していたね。

金沢 少し話をしたよ、木谷さんと。

    本当なら、スタンド席で観ないとお客さんの反応は分からないんですよと。

    そういえば、地方のビッグマッチなんかでも、木谷さんは

    人知れず2階席から試合を観ていることもあるからね。

GK  他には何か言ってた?

金沢 グレイシーに関して、いまのファンは知らないんですかね?

    どの程度の認識で観ているのかなあと。

    木谷さんはつねにファン目線で考える人だから。

GK  そういえば、藤田和之が来ていたんでしょ?

    永田&桜庭の応援に来たとかいうことで。

金沢 前日に突然メールをもらったんだよね。

    永田先輩と桜庭さんが組んでグレイシーとやるっていうし、

    新日本プロレスの東京ドームの空気を感じてみたいと。

    人を介して連絡をとってみたら、新日本さんが席を用意してくれた。

    子どもも観たがっていたし、本当にありがたい話ですってね。

GK  最初から試合を観戦していたの?

金沢 試合開始時間ぐらいに着いてから、永田、桜庭に挨拶したり、

    フロントの人たちに御礼を言ってからケイタリング・ルームで

    モニターテレビを観ていたみたい。

GK  1人で来たの? アンタは会ったの?

金沢 会ったよ。ケイタリング・ルームにいますってメールが来たから、

    時間を見つけて覗いてみたら、義弟さんと4歳の息子さんと一緒にいた。

    そこに小林邦昭さん、坂口征二相談役が入ってきて、和気あいあいとしてた。

    坂口さんが「藤田、大晦日観たよ!いい試合だったな」って。

    藤田はいちいち恐縮していたけど。

    そのあと柴田勝頼がやってきて、少し話していたね。

GK  藤田と桜庭が仲いいから、柴田ともいい関係だもんね。



金沢 これは俺が携帯カメラで撮った写真。

    まだ目の周辺が腫れているけど、これでも腫れが随分引いたんだよ。

    だって、石井慧戦の翌日に送られてきた写メを見たらドン引きしたもん。

GK  そんなに腫れていたの?

金沢 「正月早々こんな顔です!」って書いてあったんだけど…

    なんというか掲載禁止のリアル・ムタというか、

    そのまんまでグレート・ムタになれるっていう感じ(笑)。

    あるいはショッカ―の怪人かな?

    だから反対に、たった3日で人間の顔はここまで元に戻るのかって感心した。

GK  それで、藤田は永田&桜庭の試合だけを客席で観戦して帰ったの?

金沢 その後のグレート・ムタの入場も観て帰ったらしい。

    藤田はね、昔からムタマニアだから(笑)。

    新日本の若手時代も、ムタの入場のときだけは

    雑用をさぼって観ていたぐらいだからさあ。

GK  大晦日の試合のことは何か言ってなかったの?

金沢 それはドームとは関係がないので、また後日にでも。

    じゃあ、ひとつだけ情報をやろうか?

    「ローブローでかなり苦しんだみたいだけど、あそこは大丈夫?」

    って聞いたら、「ハイ、今後とくに使う予定もないんで」だって。

GK  ガッハハハハ!さすが藤田クン。

金沢 でもサッパリしていたよ。

    本来の明るくて礼儀正しい藤田だった。

GK  そこでムタの試合だけど、

    なんとなくまたしても矢野通の独壇場だったような…。

金沢 その通り!

    ムタという千両役者がいながらにして、矢野劇場だった。

    矢野がやられまくって、それでも矢野が決めてというね。

    Y・T・Rのキャラは完全に確立された感がある。

GK  ここで前半戦が終了するんだけど、もう2時間近く経過してるんだよね。

金沢 正直いって、前半戦は可もなし不可もなしというか、

    これぞ!というインパクトのある試合がなかったよね。

GK  そこで最大のインパクトは、今年度G1クライマックス最終戦、

    8・10西武ドーム大会開催の発表だった。

金沢 これはぶっ飛んだでしょう!

    自分も大会前のミーティングのときに初めて知って、

    ウソ!?と思ったぐらいだから。

    G1の歴史24年目にして両国国技館から西武ドームへ。

GK  プロレス史上初なんだけど、格闘技界では2000年8月27日、

    一度だけ『PRIDE.10』が進出している。

金沢 忘れもしない、石澤常光(ケンド―・カシン)が PRIDE初参戦で

    ハイアン・グレイシーのパンチ連打に136秒で沈んだ日。

GK  あの石澤が負けるかよってねえ。

金沢 ショックだったね。

    同じ大会で桜庭はヘンゾ・グレイシーの左腕を破壊して、

    藤田はケン・シャムロックを戦意喪失に追い込んだ。

    あの日は暑くてねえ、体中から汗という汗がぜんぶ出尽くした感じで、

    そこに石澤の惨敗だから、もう泣きそうだったよ!

GK  まあ、オッサンの思い出話に付き合っていてはキリがないんで…。

    とにかく、さいたまスーパーアリーナだったとしてもサプライズなのに、

    西武ドーム初進出だからね。

    確かに、昨年のG1優勝戦の両国国技館は完売になったうえ、

    入場できない人が相当数いたみたいだし。

金沢 新日本も勝負に出たよね。

    いいんじゃない?

    ある意味、G1優勝戦こそテッパン中のテッパンなんだから。



GK  後半戦のスタートが真壁vsバッドラック・ファレの

    ノ―フォールマッチ。

金沢 これがおもしろかった。

    大味なんだけど迫力があって、単純明快。

    この試合が後半戦のスタートに火を点けたと思うよ。

GK  真壁は当然として、あのファレが商品になったことを思うと

    ちょっと感慨深いものがあるね。

金沢 この写真のパワーボムなんか机を通り越して真っ逆さまだよ。

    ファレはよく頑張ったと思う。

    この試合には敢闘賞をあげたいなあ。







GK  敢闘賞の次は、文句なしのベストマッチだね!

金沢 柴田vs後藤の4度目の一騎打ち、後藤にとっては5カ月ぶりの復帰戦。

    素晴らしかったね、言葉はいらないよね。

    テレビ解説に付いていながら言葉はいらないと思った。

    柴田が容赦なくいつも以上に顎を狙うわけ。

    顎のあたりを蹴って、エルボーをバシバシ打ち込んで、

    さらにあの低空顔面ドロップキックだからね。

GK  俺が後藤の身内だったら怒るよ、マジで!

    なんでそこまでやるんだよって。

金沢 柴田の覚悟は分かっているし、彼の性格も分かっている。

    だからこそ、ふだん掴みどころがないというか、

    善人まる出しで人のいい後藤がどうなのかなって。

    でも、後藤の覚悟から魂から何もかもが伝わってきたね。

    身体を戻すのだってシンドかったと思うよ。

    だけど、心身ともに強い洋央紀を見せてもらった。

GK  試合後、2人とも大の字になりながら会話していたでしょう。

    そのあと、柴田が涙ぐんで、後藤も涙ぐんで…

    柴田が肩を貸して引き揚げていく途中、後藤が素の笑顔を見せた。

    こういう関係って今まで見たことがない。

金沢 うん、今大会のベストマッチにして、2人ともMVPだな!






GK  さて、ジュニアはめでたく飯伏がベルト奪取と。

    これでジュニアのシングル戦線は活性化するね。

金沢 そう、デヴィットが違う路線を行っているから、

    彼がジュニアのベルトを保持しているとジュニアが停滞してしまう。

    新王者・飯伏の誕生は喜ぶべきことだよね。

    それに、所属となりながらまだどこかでお客さんムード

    の消えなかった飯伏が中心に座ったことにより変化してくるはずだから。

GK  いよいよ、ダブルメインです。

    まずはファイナルをインターコンチに譲ることになった

    IWGPヘビー級選手権、オカダvs内藤の印象は?

金沢 結果的に30分超えの試合になったでしょ?

    前半ゆったりしていたというか、

    これでスタンドのお客さんは退屈していないかな?とか考えたんだよね。

    あとは、内藤はなぜガンガン攻めていかないの?

    内藤の身上はスピードにあるし、ファイナルマッチも含めて

    4選手の中で一番スピードがあるんだから、それを生かすべきだろうと。

GK  確かに、スタンド席のお客さんの中には前半長く感じたという人もいたね。

金沢 だけど途中で気付いたんだよ。

    あ、内藤はドームの器を意識してるんだな、

    大きく見せようとしてあえて間を取っているんだろうなって。

GK  なるほど、内藤の成長の証だね。

    それに後半、頭突きの乱れ打ちとか感情の入った内藤は

    やっぱり魅力的に映ったけれど。

金沢 そうだね、それから問題のシーンが起こった。

    コーナーの内藤にオカダがドロップキックを放って場外へ蹴落としたところ。

GK  内藤の左足がコーナーのパイプに引っ掛かって

    一瞬宙づり状態になったんだよね。

    あれは怖かった。

    まだ右足じゃなくてよかったと思ったけど、

    下手すれば大怪我だからね。

    1997年のG1準決勝でやった橋本vs天山を思い出したよ。

    ダイビング・ヘッドバットで飛んだ天山のリングシューズの紐が

    コーナーの金具に引っ掛かって宙づりになってしまい、

    天山は肉離れを起こしたじゃない?

金沢 そのあとのオカダの怒り方が半端じゃないわけ。

    頭突きの乱打でムカッときたのかもしれないけど、

    あんな怒髪天のオカダの表情は初めて見た。

    左腕のサポーターをはずして、場外の内藤に投げつけたんだよね。

GK  つまり、ショッパイ受け身しやがって!ってこと。

金沢 実際は違うのかもしれないけど、

    それが原因ではないのかもしれないけど、

    自分にはそう見えたんだよ。

    目の前の出来事だったし。

GK  オカダは対戦相手にも完璧を求めていたのかな?

金沢 そうだとしたら、そういうことになる。

    誰よりもファイナルマッチを意識して、

    IWGPヘビー級選手権、IWGPヘビー級王者に誇りを持って

    臨んできたのはオカダだっていうことになる。

GK  かといって、あれはアクシデント的なものだから内藤を責められない。

金沢 うん、責められないね。

    闘いなんだから、そういうことだって起こり得るんだよ。

    だけど、オカダ・カズチカはまた強さを見せたね。

    気の強さまで見せてくれた。




GK  公約通り、オカダがセミファイナルでIWGP王者らしい

    試合を見せたあとのファイナルマッチ。

    ”キング・オブ・ギタリスト”マーティ・フリードマンの

    生ハイエナジーの演奏にはシビれたねえ!

金沢 それに比べて、真輔がポールダンサーと絡んだのは違和感バリバリ。

    ダンサーにアルゼンチン・バックブリ―カ―を決めていたし。

GK  野人じゃないんだから、あれはパフォーマンスですよ。

金沢 で、これは翌日にサムライTVの三田(佐代子)さんと

    メールで意見交換していたんだけどね、

    全体的にちょっと演出過多で入場時にダレてしまい

    試合に集中できなかったんじゃないかって。

GK  観客が…ってことでしょう?

金沢 そう。前の方の試合の演出はもっとシンプルでいいんじゃないかって。

GK  真輔のときもね、「おい、裕二郎かよ!」って野次が飛んでたよ(笑)。

金沢 三田さんの意見でドンピシャなのがあった。

    中邑真輔に付属品はいらない、

    真輔は1人で入場してくるほうがよっぽどセクシーだってね。

    ああ、それは言えてるなあって。

GK  今回、真輔はマイケル・ジャクソン風のコスチュームだったよね。

    だったら、在りし日のマイケルのプロモーションⅤを流して、

    そこに合わせて真輔がムーンウォークとかやったらもう最高でしょう!

金沢 それこそ女性ファンは昇天ですよ!

GK  いや、昇天・改ぐらいはいくね!

金沢 意味わかんねぇーし(笑)。 





GK  肝心の試合はどう見た? 

金沢 集中力と技の正確さが研ぎ澄まされているから、

    お互いのダメージが半端じゃなかったと思う。

    1発1発がビシッと的確に決まっていた。

    だから、10分経過ぐらいで、2人ともきつそうな表情を見せていた。

    ふだんなら余裕だろうし、この2人なら60分だっていけると思うのに…。

GK  ファン、関係者の間では、もっと想定外の新しい凄さを期待していたから、

    期待はずれだとか、最後があっさり決まって拍子抜けなんて声もあるけど。

金沢 そういう声も聞いたけど、俺はリングサイドで解説しながら観ていて、

    洗練されていて一切無駄のない素晴らしく高度な攻防だと思った。

    ビックリするような目新しさはないけど、ハイクォリティなプロレスだったよ。

    棚橋のロ―プ越しのドラゴンスクリューを真輔がハイキックで切り返したり、

    真輔の三角絞めを意地のテキサスクローバーに持ち込んだ棚橋が、

    テキサスクローバーのままスタイルズクラッシュにいったりと…

    派手ではないけど見ごたえがあった。

GK  フィニッシュが意外にあっさりという意見には?

金沢 これは表現方法が難しいんだけど…実はスカパー!の

    放送時間の終了が午後10時だったの。

    うちら実況陣は聞かされていなかったんだよね。

    それに、どう考えても、午後5時スタートの10試合興行に

    5時間かかるなんて誰も予想もしていないでしょう? 

GK  メインが終わったのが、午後9時55分だったよね。

金沢 そう、だからスカパ―!放送終了の時間は、

    ちょうど棚橋がエアギターをやろうとした瞬間だった。

GK  だから、あえて2人は短期決戦に出たっていう?

金沢 最初はそう思ったの。

    新日本サイドも彼らも放送のケツ時間を知っていたと思う。

    だから60分1本勝負でありながら、

    彼らは30分1本勝負のつもりで決着をつけてやろうと

    互いに思っていたんじゃないかって。

    だけど、そんな想像は不粋だよね。

    放送時間がどうであろうと関係なく、あれが2人の試合だったと思う。
GK  ナチュラルにああいう試合になった。

金沢 そう思う。

    観ている俺もそうなんだけど、

    闘っている2人も楽しんでいたんじゃないかな?

    ああくれば、こう返す、こういけば、ああ返すみたいな。

    2年4ヵ月の空白が逆に2人の距離を縮めたんじゃないかって。

GK  ああ、2年半前の最後の一騎打ちのあたりでは煮詰まっていたというか、

    互いのまったく違うカラ―をぶつけ合おうとギクシャクしていた節もあった。

金沢 そう、なにかイデオロギーの違う2人の試合は

    異種格闘技戦的でなければいけないみたいなね。

    あえて裏をかくとか、想像を裏切るとか…。

    だけど、今回はナチュラルに噛み合った。

    2年4カ月の空白期間で2人とも進化したからこそ、

    ものすごく噛み合った。

    頭で考えるより身体が勝手に動いていくかのように、

    無駄なく動いて、厳しくぶち込んでいった。

GK  じゃあ、あえて言うなら進化の集大成を見せたという感じ。

金沢 そうなるかな?

    とにかく観ていて心地よかった。

    棚橋の言った「レベルが違うんじゃなくて、歴史が違う」というのは、

    たしかにこのことを言っているんだろうなと納得がいった。

GK  じゃあ、IWGPヘビーと比較したら、どっちに軍配を上げる?

金沢 比較するのは難しいねえ。

    ひとつ言えるのは、どっちがファイナルにきてもおかしくはなかったってこと。

    そこで強いて言うなら、歴史の違いという部分で、

    中邑真輔vs棚橋弘至戦のほうに思い入れを感じたかな。

         





GK  なるほど。でも、これだけファイナルとセミファイナルを露骨に

    比較された大会というのも本当に珍しいよね。

    じゃあ、最後に今大会のベストマッチを決めてもらおうか!

金沢 ①後藤vs柴田、②中邑vs棚橋、③オカダvs内藤、④真壁vsファレ、  

    ⑤飯伏vsデヴィット…この5試合の順になるだろうね。

GK  じゃあ、次回の更新では大川昇カメラマンのドーム写真館をやりましょう!