今回は対談形式で書いてみよう。

プロレスは最高の趣味だから楽しんで観ているというGK氏と、

プロレスを深く考えすぎてドツボにはまるタイプの金沢氏による対談である。


GK  最近、試合リポートをまったく書かないよね?

    「プロレスは趣味だからさぼれない」と言ったくせに、どうしてよ?

    だから、ブログのアクセス数も下降気味だし、ファンの人たちからも苦情というか、

    試合リポートをリクエストする声がコメント欄に書き込まれるんだよ!

金沢 いやあ、さぼっているつもりはないんですけどね(苦笑)。

    この夏から秋にかけて、新日本プロレス以外にも、全日本、ノア、

    ZERO1、W-1旗揚げ戦とか、時間があるときは取材に行っているし。

    ただ、書こうかな…と思っていながら、何かが引っ掛かって乗り切れない。

GK  それはただの言い訳じゃん!

金沢 そうかもしれないけど、今のマット界を見渡してみたときに、気がついたことがあって。

    あくまで自分の感覚なんだけど、あの集客力、観客の沸き方、ファン層の入れ替わり、

    特に親子連れが増えたせいで…子どもたちの姿をよく目にすると。

    しかも、大会は驚くほど盛り上がるし、選手層が厚くて試合内容もいい。

GK  それって、新日本プロレスを指しているんだろ?

    だったら、それを素直に書けばいいじゃんか。

金沢 そうなんだけど、ふと妙な感覚が沸き上がってくる。

    新日本と並ぶメジャーと言われたノア、全日本は

    選手の離脱、分裂などで、話題がそっちへ流れてしまった。

    だからって、試合内容じたいは決して落ちていないんだよね。

    それなのに、ここまで新日本が独走してしまうと、なにかジャンルとしての

    プロレスそのものの価値観まで変わるというか考えこんでしまう。

GK  ホント、面倒くさくて神経質な男だな(笑)。

金沢 神経質じゃないと、週刊誌の編集長は6年も務まらないって(苦笑)。

    そこでね、どういう考え、感覚が浮かんできたかというと、プロレスはプロレスでありながら、

    新日本プロレスだけが新日本プロレスというジャンルを作ってしまったんじゃないかって。

    もう、新日本ブランドを超えて、新日本プロレスという

    新ジャンルが出来つつあるんじゃないかなって。

GK  なんとなく言いたいことは分かる。

    だって、新日本全盛期だって、試合開始前からあんなに盛り上がって、

    勝手に空気が出来上がっていることはなかった。

    しかも、後楽園ホールだけじゃなくて、7月の秋田大会もそうだし、

    大阪は言うに及ばずG1の地方大会も出来上がっていた。

    9・29神戸大会もそうらしいじゃない?

    そうだ、アンタ、神戸大会にも触れてないんじゃないの?

金沢 あれは書きかけで、あまりに長文になりそうだから途中で放置されている(苦笑)。

    でも、せっかくだから神戸大会から触れてみようか。

    だいたい、俺は神戸ワールド記念ホールに取材に行くことじたい、

    おそらく『週刊ゴング』時代以来だから、7~8年ぶりだったと思うんだ。

    テレビ解説のローテーションの都合でなぜか毎年、

    神戸だけはハズれていたから。

GK  客入りはどうだったの?

金沢 超満員! あんなに人で埋まった神戸ワールドは初めて見たかもしれないよ。

    会場入りしていきなりプロモーターの星野真二さん

    (※故・星野勘太郎さんの甥っ子で新日企画代表)に会ったんだけど、

    「今日は売れてますよ!金沢さんのブログに書いてもらうのが楽しみです」

    って言われたから。

GK  真二さんがそう言ってくれたのに、なぜ書かない!?

    勘太郎さんにも怒られるぞ。

金沢 そこが一連の不思議な心境だよ。

    なにか新日本だけが違う世界に見えて、反対に構えてしまうんだよね。

GK  新日本以外の試合も書いていない!

金沢 そこも構えてしまう(苦笑)、なんとなく新日本と比較してしまうから…。

GK  だから、こういう形式でいこうということだね?

金沢  ビンゴ~!

GK  とっとと神戸の感想を言いなさい。

金沢 まず、キャリア7年半でIWGPを奪取した25歳のオカダに、

    キャリア13年半で初めてIWGPヘビーを戴冠した43歳の

    小島が挑戦したメインのIWGPヘビー級選手権。

GK  小島聡の上手さが光ったね?

金沢 うん、小島は上手いねえ、間の取り方とか試合のリズムとか。

    あれは完全に武藤敬司から盗んだものなんだけど、

    あの片膝立ちでタクト(指揮棒)を振るように指でリズムを刻んでいくところとかね。

    だけど、その間に焦れることもなく試合ができるオカダもまた

    やっぱり「レェェ~ベルが違うんだよ!」と思った。

GK  最終的には、小島が自分には決まらないと公言したレインメーカーが決まるか、

    それとも小島の一撃必殺の豪腕ラりアットが決まるかが焦点になった。

金沢 その前に、セコンドに天山が付いて、さらに小島がモンゴリアンチョップ、

    アナコンダバイスを出したところで、もの凄く盛り上がったでしょ?

    ただし、俺は猛反省しています。

    アナコンダバイスという技名がすぐに出てこなかった。

    「あれ、川田殺しかな?」と思ってしまって…解説者失格です!

    あそこでサラリと口をはさんで、アナウンサーをフォローするのが自分の役目で、

    それが出来なかったら自分が放送席に座っている意味がない(苦笑)。

GK  まあ、アンタの反省は分かったから、試合の話をしてよ。

金沢 最終的に、左は決まったけど、右の正調ラりアットを小島は出せずに、

    最後の最後にレインメーカーをようやく決めたオカダの勝利。

    あと、フィニッシュに向けて、小島が雄叫びをあげたシーンもよかった。

    橋本真也や佐々木健介に挑んで行ったときの小島を思い出したよね。

    小島は見せるものは見せつけたと思う。

GK  でも、最後のレインメーカーを食らったときに右肩から落下して、

    肩鎖関節脱臼(全治2カ月)というダメージを負った。

金沢 ここだけの話だけど、小島は7・20秋田大会のIWGPタッグ選手権

    (天山&小島vs矢野&飯塚)で右肩を負傷していて、

    G1公式戦・2試合目の柴田戦で柴田のPKを食って古傷がまた悪化した。

    翌日から右肩にテーピングを施してG1を最後まで闘ったよね。

    そこが治らない状態のままで、だましだまし9月シリーズに出場していた。

    タイトルマッチが決まっているのに、テーピングなんかしていたら興醒めでしょ?

    だから一切そういうものは表に出さなかった。

    それが最後のレインメーカーの受身で完全にいってしまったわけで。

    プロなんだから当たり前のことだけど、小島の覚悟や姿勢は立派だと思うよ。

GK  次は、シェルトン・Ⅹ・ベンジャミンに完全決着をつけた中邑真輔。

金沢 文句なしでしょう。試合をするたびに内容が進化している。

    よく観ていないと見逃してしまうような玄人受けする切り返しの攻防なんだけど、

    新規ファンが観てもおもしろさ、緊迫感が伝わってくる

GK  真輔はまるで昔のアントニオ猪木のようで…。

金沢 そう言うと、お互いに不本意なのかもしれないけど、

    闘いながら外国人選手のポテンシャルを最大限に引き出して、

    試合をするたびに相手を成長させるという点では似ているよね。

    かつてのハンセン、ホーガンがそうだったように。

GK  真輔の存在感は際立っているねえ。

金沢 棚橋や真壁が「中邑真輔はスゴイ」と素のまま口に出すぐらいだから。

    パフォーマンス、試合内容ともに”真輔ワールド”を作り上げた感じ。

GK  イヤァオ!

金沢 本当に、イヤァオ!(※最高という意味)な選手になりました。


                  金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba

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※昨年の『G1 CLIMAX2012』の8・7仙台大会で右膝前十字靭帯断裂の重傷を負った内藤。

 翌8日の公式戦(MVP戦)でなんとか勝利をあげたものの、高橋広夢の肩を借りて歩行。

 インタビュールームでは頭を抱え込んでいた(上2枚)。


今年の6・22大阪大会で復帰した内藤。これは入場前の緊張の瞬間(下写真)。



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GK では、田中将斗vs内藤哲也のNEVER選手権は? 

    G1覇者の内藤は、1・4のIWGP挑戦権利証も賭けたわけだけど…。

金沢 7・20秋田では田中に完敗を喫したよね。

    それからG1優勝者として2ヵ月ぶりの再戦となったわけだけど、 

    これは予想以上に内藤がよかった。

GK  田中を相手に好勝負にならなかったら、問題あるでしょ?

金沢 そうなんだけど、勝利にも説得力があった。

    6・22大阪で復帰したときは、どうも動きがピリッとしなかったけど、

    それ以降、身体を絞り込んで、3カ月後の神戸まで約10㎏の減量に成功した。

    結果、田中のキレ、スピードに引けをとらなかったし、スタミナでも負けなかった。

    なによりよかったのは試合の終盤で、張り手合戦、エルボー合戦になっても

    まったく引かずにバシバシ打ち合っていたこと。

    内藤の魅力は、負けず嫌いで勝気なところなんだけど、

    それがいい感じで出ていたし、厳しい表情もよかった。

    この一戦に関しては、敗れた田中も納得というか、充実感を得たと思うよ。

    やっぱり、G1を獲って覚醒してきたなあと。

GK  ところが、10・14両国では…。

金沢 それはまた後で話すとして、棚橋弘至vsプリンス・デヴィットの

    ランバージャック・デスマッチの話題へいこう。

GK  この3年、シングルではデヴィットが3勝2敗と勝ち越して迎えた一戦だ。

    しかもタナは大阪、G1公式戦と2連敗中だから、もう負けられない!

金沢 結果的に、ランバージャック・デスマッチという形式にしたことは、

    タナにとって正解だったし、有利に働いた。

    バレットクラブの乱入、介入に本隊サイドも対抗できるわけだから。

    まあ有利じゃなくて、正しくは同じ条件で…となるんだけど(苦笑)。

GK  実況の掛け合いもおもしろかった。

    キャプテン・ニュージャパンがお返しで、デヴィットの足をすくったときに、

    山崎一夫さんが「今日はいい意味でキャプテンが足を引っ張りましたね」って。

    そうしたら、アンタが「山崎さんに、座布団10枚!」ってねえ(笑)。

金沢 後日あの試合の放送を観た棚橋本人もウケていたよ。

    あそこは本当におもしろかったって。

    まあ、勧善懲悪を絵に描いたような劇画チックな試合でもあるんだけど、

    たまにはこういう毛色の違うルールの試合もいいと思った。

    シンプルにおもしろかったし、お客さんも沸きっぱなしだったから。

GK  永田が桜庭に3カウントフォールを奪われたタッグマッチ

    (永田&中西vs桜庭&柴田)はどういう印象?

金沢 これはもう永田vs桜庭の絡みがメインテーマだから、

    中西、柴田は脇役になってしまった。

    この後の両国の結果を踏まえて、永田と桜庭がタッグ結成をアピール

    という予想外の流れになったけど、桜庭・柴田組は

    小休止でもいいんじゃないかなとも思う。

    G1で改めて気付いたんだけど、本来の柴田はシングルプレイヤーですよ。

    シングルでやってこそ、彼の魅力が爆発するから。

    無理にタッグを組まなくても、そのときそのときの流れを受けて、

    2人の方向性が違うようなら、それを自然に受け入れたカードのほうがおもしろい。

GK  なるほどね。じゃあ、続けて10・14両国大会を振り返ろうよ。

金沢 あ、そろそろブログの限度文字数を超えそうだから、

    それはパート2へ続くということで(笑)。