24日午後、サムライTVの番組収録のため、
都内のスタジオで4時間弱、天山広吉と一緒の時間を過ごした。
番組名は「俺たちの新日本プロレス」。
この10月からの改変によって同番組も
1990年代以降の試合を中心に、古くても闘魂三銃士、
さらに今も現役バリバリで活躍する第3世代を中心とした
メニューをお届けすることになった。
そこで、♯8、♯9のプログラムは天山をゲストに招き
懐かしの天山名勝負を私とのトークも交えて収録した。
♯8のタイトルは「黒の軍団」特集。
①蝶野正洋&天山広吉&ヒロ斉藤vs長州力&橋本真也&平田淳嗣
(1995年2月12日、後楽園ホール)
②橋本真也&武藤敬司&佐々木健介&ロード・スティーブン・リーガル&中西学
vsスコット・ノートン&蝶野正洋&天山広吉&マーカス・バグウェル&nwoスティング
(1997年3月20日、愛知県体育館)
③天山広吉vsワイルド・ペガサス
(2000年1月4日、東京ドーム)
というわけで、天山と話していると、
番組用とプライベートでの昔話がごっちゃになって、
収拾不可能になる。
というのも、彼とは練習生時代から面識があったし、
デビュー間もない新弟子の身分(?)でありながら、
明るくおもしろく人見知りしない天山は、
まったく遠慮なく私に話しかけてきたからだ。
デビューからようやく初勝利をあげたときなども、
地方の体育館の片隅で、マスコミ勢が彼を囲んで万歳三唱をやった(笑)。
マスコミに万歳三唱をしてもらった選手も天山ぐらいのものだろう。
①そんな彼がヨーロッパ修行で大変貌を遂げて凱旋。
帰国1ヵ月で橋本の保持するIWGPヘビー級王座に挑戦し、
その後、いわゆる平成の乱が勃発。
2・12後楽園の昼興行(平成維震軍興行)で越中詩郎の勧誘をソデにして、
蝶野との合体を表明。
夜の本隊興行では、狼群団として始動した。
まあ、凄まじい試合。
裏切り者の天山を制裁すべく、
怒髪天の長州&橋本。
ところが、天山のタフネスぶりもまた尋常ではない。
リキラりアットを何発食らおうが、
橋本にコンクリートの階段から突き落とされようが、
立ちあがってくる怪物・天山。
最後はダイビングヘッドバットで長州を沈め、
ここにヒールのニュースターが誕生した。
さらには、サブゥ―まで乱入してきて試合後も大立ち回り。
このⅤに関しては、映像を観ながらの天山との生トークも入る。
当時の裏話もふんだんに出てくるが、
なんといっても後楽園ホールの爆発ぶりが異常なほど。
いま現在の新日本の後楽園ホールの盛り上がりぶりも異常といえるが、
この一戦に限ってはそれさえも上回っている。
だからこそ「平成の乱」と呼ばれ新日本史上に残るインパクト満点の
メモリアルデーとして歴史に刻まれているのだろう。
なぜ蝶野との合体を選択したのか?
天山の答えにすべてが集約されている。
②nwoジャパン最強の5人衆が本隊の主力4人プラス”助っ人”リーガルと
全面戦争イリミネ―ションマッチで激突する。
まず、いきなり天山が武藤をフォール。
しかし、それだけで沈黙する武藤ではない。
最後には、とんでもない大どんでん返しが待ち受けている。
③2000年の1・4東京ドームといえば、来日予定だった
ビル・ゴールドバーグが怪我でドタキャンした大会。
そう言えば、思い出す人も多いだろう。
天山vsペガサスに関しては、覚えていないファンもいるかもしれない。
だが、すでに当時WCWでヘビー級戦線のトップにいたペガサスは、
この天山戦のあと、クリス・べノワとしてWWEへ電撃移籍。
のちに、WWEで頂点に立つ。
試合映像を観ながら、思わず天山は顔をしかめていた。
ペガサスの大音響のチョップ連打により胸板が変色していくからだ。
「あのクリスのチョップ、中西のチョップより効きましたよ」
それだけペガサスは肉体的に全盛期を迎えていたのだ。
そして、あっと声をあげてしまうようなアクシデントシーンへ。
天山が雪崩式フランケンシュタイナーを仕掛けたものの、
それがすっぽ抜けてしまったのだ。
「自分の頭が重いから頭から落下してしまって…」
と笑いで誤魔化す天山であったが、
タフな天山でなければ大事故につながった可能性もある。
このシーンばかりは、何度見てもゾッとさせられる。
「自分で見てもゾッとする」と最後は本音も出てきた天山。
その絶体絶命のダメージから立ちあがるプロ魂を見てほしい。
続いて、♯9のテーマは「テンコジ」特集。
①山本広吉vs小島聡
(1992年2月10日、名古屋レインボーホール)
②山本広吉&小島聡vs中西学&永田裕志
(1993年4月6日、両国国技館)
③天山広吉&小島聡vs天龍源一郎&越中詩郎
(1999年1月4日、東京ドーム)
①デビュー7カ月の小島は未だ勝ち星なし。
一方、小島のデビュー戦の相手を務めた天山は、
紫のタイツに白のシューズという独特の出で立ち。
そういえば、凱旋当初、レインボーカラ―の派手な
ロングタイツを履きながらも、
やはり天山のシューズは白だった。
「やっぱり、大ファンだった長州さんの白を真似ていました」
そんなふうに昔を懐かしむ天山。
一方で、若手時代の小島の印象を聞くと、
「おとなしくて大丈夫かなと…
なんかアザラシに似ていてね(笑)。
でも、話すとおもしろいやつなんですよ。
結局みんな同期がやめていくなか、小島だけが残った。
さすがに浜口ジムで鍛えられた男なんだなあって」
と、昔も今も小島の性格が変わらないことを強調していた。
この試合が貴重なのは、現存するテンコジ対決の
最古の映像であることだ。
②叩き上げのテンコジに対するは、
レスリングエリートの中西&永田。
とにかく、注目は中西の風貌である。
例のアマレスの吊りパンにヘッドギア、
さらに頭はモヒカン刈りときたもんだ(笑)。
「もう、中西は最初から変やった!」
映像を見ながら爆笑の天山。
ちなみに、このタッグマッチは天山が
ヤングライオン杯で優勝した直後の試合。
そういう天山の髪型もなぜか前髪だけが異常に逆立っており、
かなり奇抜なので注目してほしい。
③この試合は感動的だし、名勝負である。
テンコジが初めてIWGPタッグベルトを巻いた歴史的試合でもある。
それ以上にドラマチックなのは、このタイトル戦はセミファイナルに組まれ、
直前の試合が橋本真也vs小川直也の大混乱を呈した一戦であったこと。
その影響で、観客がうんともすんとも言わないなか、
黙々と闘い続ける両チーム。
しかし、4選手の熱は確実にファンに伝わり始める。
クライマックスシーンは天山がコーナーから場外に向けて放った
ムーンサルトアタック…今風に言うならケブラ―ダである。
この1発でドームは大爆発!
テンコジの若さと、天龍&越中のキャリアの重みが、
見事にドームの澱んだ空気を一変させた。
「ホンマにあんな無謀なことを…
でも相手は天龍さん、行くしかないと思った」
それにしても、6本のⅤを見て驚いたのが、
天山がドロップキック、プランチャ、雪崩式フランケンシュタイナー、
ダイビング・ニールキック、場外ムーンサルトと、
今では考えられない派手な大技にトライしていること。
「そうですねえ、復帰したらやりますか!
雪崩式フランケン以外ならプランチャでもなんでもいきますよ(笑)」
当の天山も過去の自分を見つめ直すことで、
改めて冒険心が沸いてきた様子だった。
10・14両国大会での復帰へ向けて、
天山にとっては有意義な時間となったようだ。
もちろん、私にとっても
久々の天山との交流は本当に楽しい時間だった。
まあ、問題はNGワードが多すぎることぐらいだろう(笑)。
そこのところ、編集よろしくお願いしまーす!
サムライTV『俺たちの新日本プロレス』
♯8「黒の軍団」特集=10月2日(水)23:00~24:00放送、他。
♯9「テンコジ」特集=11月に放送予定。