DDTの両国2DAYSの2日目、

8・18両国国技館『両国ピーターパン~プロレスの傾向と対策~』

を観戦し取材してきた。


今年で5年目の両国進出(昨年は日本武道館)となるから、

もはやDDTの両国ビッグマッチは夏の風物詩のひとつ。

しかも今年は17日、18日と2連戦にチャレンジし、

初日=8500人(超満員)、2日目=9000人(超満員札止め)と

きっちり大きな器を埋めてみせた。


初日は、アイドル、アーティスト、タレント、俳優らと

コラボレートし、ファンの間口を広げた興行で、

2日目は現在進行形のDDTに他団体の大物選手を招聘する

純粋(?)プロレス興行。


2日目の第1試合がスタートしたころ会場入りした私は、

前日、所用のため取材に来なかったことをすぐに後悔させられた。


「昨日もよく入っていたし、おもしろかったよ」


「プロレス(DDT)ファン、アイドルファン、アーティストファン

が混然一体となって、かなりおもしろい盛り上がり方だった」


「坂口憲二のドロップキックが素晴らしかった!

アトミックドロップも決まったし、とにかくカッコいい。

あの姿を見たら、安易にイケメンレスラーなんて

言葉はもう使えないなあって(笑)」


会う人、会う人がそう絶賛する。

坂口憲二さんにはもう随分と会っていない。

最後に会って会話をしたのは何年前だったか…

とにかく全日本プロレスの両国大会で、

ドリー・ファンク・ジュニアに花束を渡すために来場したとき。


バックステージで、当時まだメキシコAAAに遠征中だった

鈴木健想(現KENSO)の話題で盛り上がった。

憲二さんはKENSOと昔から仲がいい。


「健想からたまに電話がかかってくるんですけど、

最近は愚痴ばっかりで…大丈夫かなって」


そう言って、KENSOのことを

心配していたのを覚えている。

まあ、改めて言うまでもなく、

坂口憲二は見たままの好人物なのだ。


ところで、初日にもっとも見たかった憲二さんの

リングデビュー(?)だが、某Y××T××eを検索してみたところ、

どうやらファンが撮影したらしい映像を発見。


これがまた片足踏切りの見事なドロップキックと

バランスのいいアトミックドロップだった。

やっぱプロ級の腕をもつサーファーだけに、

運動神経とバランス感覚は抜群なのだろうなあ。


初日の大会(DDT万博~プロレスの進歩と調和~)

を見逃したことで2009年からの皆勤賞は途切れたけれど、

悔やんでも仕方がないので、2日目を大いに楽しむことにした。


DDTを観ていて昔から思うことは、

試合前から観客が出来上がっていること。

これは大日本プロレスにも言えることだと思う。


簡単に言えば、インディーと呼ばれる団体

(※DDT、大日本ともにインディーという枠では、

とっくにくくれない存在となっているのだが…)

へお金を払って見に来る人たちは、

最初から楽しみを見つけて来ているのだから、

惰性で来場するようなことは当然のようにない。


そのファン心理を分かっているから、

団体サイド、選手はファンの期待に対して、

最初からそれ以上のもので応えようとする。


これは数年前までメジャーと呼ばれる団体にはなかった現象。


「ファンのみなさんのおかげで…」


「応援してくれるファンの皆さんのために…」


こういうセリフがメジャーからはまず出てこなかった。

やはり、ファンに対して上から目線だったことは事実だろうし、

反対に媚を売らないという面もまたメジャーの魅力となるのだろう。


ところが、この3年ほどで新日本プロレスだけは激変した。

ファンとの一体感こそ、レスラーにとって最高の喜びである。

それを体現し、堂々と言葉にしたのが棚橋弘至。

棚橋がエースを張ったことで、

今や新日本の会場には全国どこでも一体感が漂い、

試合前から会場が出来上がっている。


新日本の大躍進、

新黄金時代到来の予感。


このフレーズを使うときに思い出すシーンは、

やはりファンとの一体感であり、

試合開始前から出来上がっている会場のムードと、

試合後いつまでも帰ろうとしないファンの姿なのである。


そういった意味でいうなら、

こじつけではなくDDTという団体は

ファンとの信頼関係でメジャーを凌駕していたのだと思う。


ここ数年、飯伏幸太をレギュラー的に招聘するなど、

DDTと友好関係を結んできた新日本は、

自然とそういう部分を学んだのかもしれない。


色ものもあれば、お笑いもある。

だけど、興行として学ぶべき点がいっぱいある。

選手たちはしっかりと自分の役割をこなし、

勝っても負けても完全燃焼する。


フロント、スタッフの役割もしっかり決まっていて、

それを高木三四郎(大社長)がしっかり束ねている。


だから、DDTという団体と接すると、

いい空気だな、

いい仕事場だな、

みんな生き生きしているな、

いつもそんなふうに感じる。


まあ、極論するなら、

いま新日本プロレスが断然飛びぬけているのだが、

それに続く団体がDDTなのかもしれない。

そう感じてしまうし、それは間違いではないと思う。


というわけで、少し褒め過ぎかい(笑)。

いやいや、DDTにしか演出、現出できない

世界観は確かにおもしろかったよ!



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この日の目玉でもあった赤井沙希デビュー戦は、

第3試合に組まれた。

6人タッグのミクスドマッチだが、

相手方にはいま売り出し中の志田光と世Ⅳ虎がいる。


浪速のローッキーこと赤井英和さんの次女で

モデル、女優の彼女はルックス&スタイルが抜群。

身長174㎝で腕、脚が長いから、

とにかく見栄えがするしカッコいい。


いま、女子プロ界も選手が小粒になっているし、

風香、ゆずポン(愛川ゆず季)、栗原あゆみと

アイドル的な選手も次々と引退してしまった。

赤井沙希が本気でプロレスラー業に専念するなら、

本当に金の卵という感じがする。


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ファンお目当ての大一番が、

ダブルメインイベント第1試合(セミファイナル)の

飯伏幸太vsオカダ・カズチカ。


ゴールデン☆スターvsレインメーカー。

奇しくもデビューが近く、ほぼ同キャリアの2人。

G1クライマックスでは実現しなかったドリームカードである。

過酷なG1を完走し、さらに評価をあげた飯伏が、

現IWGPヘビー級王者をホームで迎え撃つ。


ここが、DDTのリングであり、

飯伏がG1を通してヘビーのトップに通用することを証明し、

一方のオカダが4勝4敗1分けでⅤ戦線から脱落した直後だけに、

余計に期待感は高まったのかもしれない。


その期待感とは、勝負論のほう。

飯伏の勝利も充分にあり得るという空気感である。

ノンタイトル戦であっても、飯伏が試合を獲れば

初のIWGPヘビー挑戦は決定的になるだろう。


へえーと思ったのは、それほど体格差を感じなかったこと。

飯伏は181㎝あるし、手足が長いから大きく見えるのだ。

試合そのものは、やはり素晴らしくキレのある攻防となった。


唯一、ヒヤリとさせられたのは、

コーナーに座った状態のオカダに

飯伏が三角飛び式の雪崩式フランケンシュタイナーを仕掛けたが、

それがすっぽ抜けたシーン。


飯伏は1人フランケンの格好で自爆し、

オカダはバランスを崩して場外に転落した。

天才的なプロレスセンスを持つ2人でも

こういうアクシデントがあるからプロレスは怖いのだ。


しかし、2人とも受身をとっていて事なきを得た。

あとは、飯伏がオカダの顔面に突き刺さるドロップキックを放てば、

オカダも飯伏の顔面を打ちぬくドロップキックで逆襲するなど、

超身体能力対決は華麗にして凄まじいシーンを続けざまに見せてくれた。


一言で評するなら、現代プロレスの粋を結集したような試合。

そう言えば、試合前の煽りⅤでオカダはこんなことを言った。


「ジャイアント馬場、アントニオ猪木しか知らない人に

新しい世代のプロレスのレベルの違いを見せましょう!」


一語一句正しいかどうかは分からないが、

たしかそういうニュアンスだったと思う。

そのメッセージが響いた瞬間、両国は大歓声に包まれた。


ここまでハッキリと言ってしまうオカダへの期待感がピークに達したのだ。

一方、「僕はお金なんかいらない、夢がほしい」と言った飯伏の入場では、

本物の宝くじが宙を舞い、客席に降り注いだ。

あまりに、粋で格好のいい演出だった。


試合は、オカダが制した。

だが、オカダは飯伏の実力を認めた。

飯伏も「経験の差」による敗北を認めた。


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どうだろう?

ベルトを賭けてすぐに再戦するのもいいけれど、

1年待ったら一体どうなるのか?


1年をかけて飯伏がヘビー級として経験を積めば、

そこが新日本マットであれ、DDTマットであれ、

1年後には勝者が入れ替わっているかもしれない。


そういう期待感も込めて、来年のG1に再び飯伏をエントリー

させてほしいと私は願っている。

もっと強くなってほしいし、必ず強くなると思う。

そういう可能性も秘めている男だから、

来年のG1にエントリーしたときには、

飯伏がⅤ本命に挙げられているかもしれない。


未来へとつながる、いい闘いを見せてもらった。


ところが、そのあと、少しばかり

不快になる場面を見せられてしまった。


2人のコメントを聞いてから、メインを待つ会場に戻ると、

ちょうど挑戦者であるHARASHIMAの煽りⅤが終わるところだった。

メッセージの手紙を読み上げていたのは、

学プロ時代の先輩である真壁刀義。


真壁は映像に登場することなく、

手紙を読む声だけの出演。

これもまた粋な演出だなと思った。


あとで聞いたところによると、

王者の入江茂弘への手紙を読んだのは、

ライバルである石井慧介と恩人である大谷晋二郎だという。


そこで、不快なシーンとは、

私の周囲の観客がチラホラと席を立ちつつ

帰り支度を始めたこと。


「さっきの試合がメインでよかったのに!」

と言っている女性もいる。


実際、数名が席に戻ってこなかったし、

他の升席でも席を立つ観客がチラチラと目についた。


これからが、メインイベント第2試合のKOーD無差別級選手権であり、

DDTが自信を持って提供する、いま現在の最高のマッチメーク。


このバカたれが!


そう怒鳴りたくなったけど、

怒鳴るわけにもいかない。

ただ、寂しいよなあと感じた。


たとえ、飯伏vsオカダ目当てで来たとしても、

そのカードを実現してくれたDDTなる団体がナンボのものなのか、

それはファイナルの試合を観てきちんと判断してほしい。

それを観ないで帰るようならプロレスファンとは言い難い。

ただのミーハーじゃん!

そうなふうに思うほど、腹立たしい光景だった。


だから、メインが終わったとき、

大人げないオイラは「帰ったやつら、ザマ―見ろ!」と思った。


飯伏vsオカダのように華麗なわけでもないし、

変幻自在に飛べるわけでもない。


だけど、感情と気持ちのこもった素晴らしいメインだった。

HARASHIMAの実力に関しては、いまさら触れるまでもないだろう。

体格的にはジュニアでありながら、どんな相手と闘っても、

敵が大きかろうが小さかろうが、相手を光らせて好勝負にしてしまう男。

それに明るいキャラだから、言ってみれば、DDT版・棚橋という感じ。


一方の入江に関しては、ある事情から”入江クン”と呼ばせてもらう。

25歳でキャリアはまだ5年余。

名古屋のインディー団体『でら名古屋プロレス』出身。

今年、DDTに正式入団したばかりで、

3・20後楽園ホールにてケニー・オメガからまさかのベルト奪取。


ところが、まさかどころか、あれよあれよのうちにⅤ8を達成。

KO―D王座の最多防衛記録を塗り替えてしまった。


と、なんでも知っているかのごとく書いてみたが、

私は入江クンの試合をしっかりと見た記憶がほとんどない。

サムライTVに出演した際に、ダイジェストで見たり、

あるいは週刊プロレスを読んでいてチャンピオンになったことも知った。


ただ、それを知ったときは本当に驚いた。

あの入江クンがDDTの頂点に立ったのか!?

本当に、そういう素直な驚きだった。


入江クンの試合はちゃんと見たことがないくせに、

私は入江クンと朝まで飲んだことがある。

もちろん、その場には大谷晋二郎がいた。


昨年の11月1日。

新宿歌舞伎町の『ロフトプラスワン』で

ト―クイベントを開催したときのこと。


私と”あべちゃん”ことあべ由紀子さんが進行役となり、

ゲストにZERO1の大谷晋二郎&橋本大地。

そのイベントにきちんと入場券を買って

入江クンが見に来ていたのだ。


イベント終了後、寮住まいの大地は帰して、

他のメンバーで打ち上げを行った。

入江クンも参加。


このメンバーだと、想像通りの展開。

大谷、私、あべちゃんの3人はとにかく飲む。

おそろしく飲む。

大谷は気分よく酔っ払いながら、

入江クンのことを私に何度も説明してくれた。


「金沢さん、入江クンはねえ…」

と何度も同じ話を聞かされたような気がする。


「金沢さん、入江くんはねえ、名古屋のインディー団体にいたんですよ。

でね、2年前の5月だったかな、僕が名古屋に行って試合したんですね。

そのときは彼の団体が活動停止になった直後でしてね。

もちろん、入江クンの顔も名前も知らなかったんですけどねえ(※ゲップ)、

彼はまだ21歳でキャリア1年ぐらいとかでねえ、

それなのに気迫が凄いんですよ。

こんなオトナシイ顔しているのに、

リングに上がったらもの凄い顔で僕に向かってきたんですよ!

僕と田中選手でボコボコにしても、向かってくるんですよ。

音をあげないんですよ、最後までね。

だからねえ、金沢さん、聞いてます?

僕はねえ、試合後にプロレスの教科書を読んだんですよ。

あれは何ページだったかな?(※153ページです!)

とにかく『プロレスは裏切らない』というような言葉をね、

僕は入江クンたちに贈ったんですね。

入江クンはきっと上がってくるやつなんでね、

金沢さんも彼を見守ってやってくださいね。

いいやつだし、凄くがんばってるんでね」


大谷は何度もそういうことを言った。

入江クンのことがかわいくてたまらないようだった。

入江クンは黙ってニコニコしていた。


だから、メインの煽りⅤで大谷の手紙へとつながった。

あのとき、大谷が語ったプロレスの教科書153ページ

の中身は正確にはこうなる。


「何があったかは知らないが、これだけのお客さんが答えだろう?

プロレスの教科書153ページ!

壁にぶつかったときこそ上を見ろ!

辛いときこそ上を見ろ!

プロレスは絶対に裏切らない!!」


以来、入江クンはその言葉を肝に銘じ心にしまったおいた。

それから4年、DDTの頂点に立った入江クンは、

試合後の締めゼリフとして、

「プロレスは絶対に裏切らない!」

を叫ぶようになった。


尊敬する大谷からプレゼントされた大切な言葉を

初めて自分の言葉として使うことを決心したのだ。


この日、初めて心して観た入江クン…

いや、KO―D無差別級王者・入江茂弘の試合。

あのとき大谷が言ったように王者であっても、

彼の姿勢はあのころとまったく変わらないのだろう。


ひたすら突進、体ごとぶち当たっていく。

気持ちのいいほど真っ直ぐだ。

HARASHIMAのエグイ蹴りを何発食らってもキックアウトする。

もの凄い表情で立ち上がっていく。


死闘だった。

最後はHARASHIMAのスワンダイブ式蒼魔刀がズバッと決まり、

入江が沈み、HARASHIMAが第46代王者に返り咲いた。


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新王者が共同インタビューに応じている間、    

入江は階段に通じる凹みのところに立って待っていた。


「いい試合だったよ!」


私が声を掛けて握手を求めると、

悔しげな表情が一瞬はにかんだような顔に変わり、

握手に応える。

そのときの顔は入江クンだった。


その後、共同インタビューに応じた入江は悔し涙。

悔しさと、両国のメインを務めた充実感。

その両方が入り混じっているようだった。


奇しくも、HARASHIMAはこう言っていた。


「オカダ選手を目当てに普段は来ない

新日本のファンの方とかも来るじゃないですか?

そういうファンの方に僕らの試合を観てもらえるという

楽しみの方が大きかったです。

まあ、ちゃんとメインを観て帰ってくれてたらいいんですけど(笑)」


ほーら、そういうことだよ。

見ないで帰った人たちは後悔だって。

そういうオイラだって、普段のDDTの興行には

ほとんど顔を出さないから

HARASHIMAの指摘する対象に入っているのかもしれないけど(笑)、

観るときはしっかり見届けるぜ!


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エンディングは、控室でノーサイドの記念写真。

この模様もビジョンで会場に流された。

チームワーク抜群のDDT。

ドラマティック・ドリーム・チームの面々。


かつて、プロ入りした小川直也は師匠のアントニオ猪木に問うた。


「プロレスとはなんですか?」


猪木は即答した。


「プロレスとは闘いである。

また、プロレスとは興行でもある」


この興行という言葉に、本当はもうひとつ注釈を加えなくてならない。


興行とは、チームワークである。


カラ―は違えど、やはりいま現在のプロレス界でいうなら、

新日本を追う最右翼の存在はDDTだと痛感させられた。



  ○オマケ○

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右は、第2試合の時間差バトルロイヤルで優勝し、

第974代アイアンマンヘビーメタル王者となったアキヒロ。

ヨシヒコにも似ているし、あの三輪明宏さん風でもある。


ともかく、アキヒロの入場テーマは昨年大晦日のNHK『紅白歌合戦』で、

三輪明宏さんが歌い日本中に感動を与えた「ヨイトマケの唄」だった。


左はお馴染み三輪…いえいえ、三田佐代子さん。

第600代同王者に君臨した経験を持つだけに、

アキヒロを余裕で祝福する。


2人まとめて、三田アキヒロなのだ!