大好評につき60号までの続刊が決定した
DVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』vol.47は、
「新日本事件簿番外編、
しょっぱい試合ですいません!」と驚きのタイトル。
”至高の名勝負コレクション”を謳いながら、
しよっぱい試合とはこれ如何に?
そう思われるかもしれないが、
もちろんこれはスーパー・ストロング・マシンによる
マイクを使った心の叫び。
マシン(平田?)というレスラーは、
「おまえ、平田だろ!」と
「こんなしょっぱい試合ですいません!」の
2つの名言とともに、時代を超えて今もファンの支持を得ている。
では、全試合ノーカット収録(117分)DVD、
前代未聞のしょっぱいシリーズの
ラインナップを紹介してみる。
①”韓国の虎”との遺恨マッチで”荒鷲”号泣!!
坂口征二vs大木金太郎
(1975年5月16日、日大講堂)
②漫画から飛び出た謎のマスクマンの実力に呆然!?
アントニオ猪木vsミスターⅩ
(1979年2月6日、大阪府立体育会館)
③海賊男の不可解乱入でファン激怒!暴動!!
アントニオ猪木vsマサ斎藤
(1987年3月26日、大阪城ホール)
④マシンの暴挙に”格闘王”大流血!!
前田日明vsマサ斎藤
(1987年5月18日、千葉公園体育館)
⑤「燃えてくれ!」浜口、涙の気合ビンタ!!
長州力vs後藤達俊
(1990年1月18日、徳山市体育館)
⑥素顔の絶叫、両国に轟いた大「ヒラタコール」!!
武藤敬司&馳浩vs蝶野正洋&スーパー・ストロング・マシン
(1994年10月30日、両国国技館)
①日本プロレス時代から手の合わなかった坂口と大木の関係が
さらに悪化したのは、1973年に坂口率いる日プロと新日本の
合併が発表されたとき。
すでに日プロには興行機能なしと判断し猪木との合体を望んだ坂口と、
あくまで力道山が創設した古巣にこだわる大木が衝突。
その遺恨がそのままリングに持ち込まれた格好である。
初戦(ノ―コンテスト)、2戦目(坂口のリングアウト勝ち)ともに
殴る、蹴る、頭突きと大荒れの喧嘩マッチとなり、これが3戦目。
舞台は『第2回ワールドリーグ戦』の決勝進出決定トーナメント。
この大切な舞台でも感情が大爆発した両者の喧嘩は
収拾不可能で「両者失格」という裁定に。
不本意な結末に坂口は男泣き、
猪木でも止められなかった両者の遺恨は凄まじいばかりだった。
②当時、少年マガジンで連載されていた『四角いジャングル』
に登場してくる謎の格闘家が現実のリング上とリンクして
格闘技世界ヘビー王者に認定された猪木に挑戦してきた。
劇画のミスターⅩは強かったのだが、現実の赤覆面格闘家は
道着の上からでも体のタップンタップンぶりがうかがえた。
ゴングが鳴ると、もう目も当てらない事態へ(苦笑)。
おそらく最初に決まっていた格闘家のキャンセルにより、
別の人間が急遽Ⅹになったと思われるが、
あまりに情けなかった。
猪木史上、最低、最悪の対戦相手として、
このⅩは観る価値ありかも…。
とにかく、ショッパイ!
③これまた新日本マット史上に残る大暴動を引き起こした一戦。
猪木vs斉藤の一騎打ちは当然のようにストロングスタイルの
攻防を展開していたものの、20分過ぎに海賊男が乱入。
しかも、新日本の敵と見られていた海賊男がなんと
マサ斎藤を手錠でつなぐという意味不明の暴挙に出た。
これには猪木も呆然、試合は収拾のつかない状況へ。
理解不能な結末に観客が激怒して暴れ出し、
ついに大阪府警の機動隊まで出動する事件に発展した。
ちなみに、この2週間後からテレビ中継は、
バラエティ色の強い「ギブUPまで待てない!!」に変わる。
時代の過渡期に登場した海賊男は、
暗黒史に残る貴重なキャラでもあった。
④前田vs斎藤の遭遇は、ある意味、ファン垂涎のカード。
喧嘩最強とも称された斎藤を相手に、前田がどんな仕掛けを見せるか?
実際、試合前に私が前田を取材したときには、
「あの人は日本人レスラーでも異質な人。
レスリングができて喧嘩も強く、
独りでアメリカを渡り歩いてきただけに腹が据わっている」
と斎藤の実力を認めていた。
ところが、前田に再三共闘を申し入れていたものの、
それを無視されていた同期のマシンが前田を急襲。
ゴングを前に前田は血だるまにされる。
これにて、前田vs斎藤の実力勝負は消滅。
大ダメージを負った前田は斎藤の場外バックドロップに沈んだ。
ちなみに、当時あまりにも流血が凄惨なため、
週刊ゴングは表紙掲載を自粛したが、
週刊プロレスは大流血の前田を堂々と表紙にもってきた。
両誌の考え方の相違がもろに出ていたような気がする。
⑤猪木が政治家に転身、坂口社長が引退表明、
腰の負傷で藤波が長期離脱と、新日本の現場監督に
就任したばかりの長州にとって、悩める時期でもあった。
この日は地元・徳山でブロンド・アウトローズの後藤と一騎打ち。
そこへ飛び込んできたのは、ゴールドマスク姿のマシン。
これはアウトローズ入りを示唆するアピールでもあった。
だが、次なる乱入者は誰も予想できなかった。
なんと、かつての盟友であり、引退した浜口が
長州に馬乗りになってビンタの雨あられを浴びせたのだ。
「長州、燃えろ! 燃えてくれー!!」
そう叫びながら、号泣する浜口。
新日本の現状を憂い、
盟友・長州へエールを送るために飛びこんできた浜口。
これを機にカムバックした浜口は、
あえて長州の敵に回りアウトローズの指南役となった。
⑥94年のG1クライマックスⅤ3を機にヒール転向を宣言した蝶野。
10月のSGタッグリーグ戦では互いにパートナー不在ということで、
実力者の蝶野&マシンが手を結んだ。
チーム分裂の危機を何度か迎えつつも、
優勝戦に駒を進めた蝶野&マシンを待ちうけていたのは、
絶妙のコンビネーションを誇る武藤&馳の名コンビ。
試合終盤、たび重なる蝶野のスタンドプレーに激高したマシンは、
自らマスクを脱いで蝶野へと投げつけた。
館内は「大ヒラタコール」に包まれたが、蝶野は試合放棄。
2対1で素顔のマシンに勝ち目はなかった。
「みなさん、こんなしょっぱい試合ですいません!」
しょっぱいなる隠語が初めてファンの前で
飛び出した瞬間でもあった。
以降、マシンは平田淳嗣として
本隊サイドに加入し活躍することになる。
それにしても、ありきたりの好勝負ではなく、
インパクト、事件までを含めた今回の選抜メニューは必見だろう。
燃えプロならでは!
そう言いきっていいのではないだろうか?
燃えろ!新日本プロレスvol.47
「事件簿番外編 しょっぱい試合ですいません!」
発行元=集英社
定価=1680円
絶賛発売中!