ついにシリーズ累計130万部を突破した

DVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』。


新刊となるvol.38は『グレート・ムタ、阿修羅の如く!』のタイトルで、

グレート・ムタ特集の集大成ともいうべきラインナップとなっている。


全試合ノ―カット収録(103分)のDVDメニューは次の通り。


①WWF王者とのアメリカン・ドリームタッグ実現!!

ハルク・ホーガン&グレート・ムタvsヘルレイザ―ズ(ホーク&パワー)

(1993年9月23日、横浜アリーナ)


②毒霧乱噴射!ムタ独壇場で火の国が地獄絵図に!!

グレート・ムタ&馳浩vs長州力&藤原喜明

(1994年4月7日、熊本市体育館)


③魔性の異空間、”昭和の鬼”vs”平成の悪魔”!!

アントニオ猪木vsグレート・ムタ

(1994年5月1日、福岡ドーム)


④WWFの人気スターを、壮絶血ダルマ冥土葬り!!

グレート・ムタvs新崎”白使”人生

(1996年4月29日、東京ドーム)


⑤Good Bye Papa…最初で最後の”親子共演”!!

グレート・ムタ&ザ・グレート・カブキvs後藤達俊&小原道由

(1998年8月8日、大阪ドーム)



金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


①は同年5月に福岡ドームで一騎打ちを行なったホーガンとムタが

ベビーフェイスとヒールの壁を超えて初合体。

ドリームタッグを結成したメモリアルマッチ。


しかも対戦相手は、新日本マットの№1タッグチームである

ヘルレイザ―ズ(ホーク&パワー)だから、

ホーガンvsホークという超大物外国人対決まで見られてしまう。


この試合の3日後、大阪城ホールで武藤敬司vsホーガン

のシングルマッチが決定しているだけに、

ただでは済まないムードが充満していた。


ところが、スーパースターの2人は仲間割れどころか、

最終的には毒霧→アックスボンバーという

まさかのコンビネーションプレーを披露して

パワー・ウォリアー(佐々木健介)をフォールしてみせる。


当時でいうなら、新日本マットでしか実現しえない

夢空間をよくぞ作り上げたものだと思う。


②は本来なら前月に勃発した平成世代闘争の流れから、

武藤&馳で組まれていた試合であったが、

3日前に猪木の引退カウントダウン第1戦の相手がムタに決定。


それを受けて、馳とタッグを組んだのは武藤ではなくムタだった。

大都市以外でのムタの登場はもちろんサプライズであり、

熊本ファンは大喜び。


そして、試合は予想通り大荒れの展開。

ムタにチームプレーを求めることなど無理だった。

対戦相手の長州&藤原ばかりか、

パートナーの馳にまで毒霧を浴びせる狂乱のムタ。


すでにムタの眼中には”昭和の鬼”アントニオ猪木の

姿しか映っていなかったかのようである。


③猪木の引退カウントダウンの候補として、

あのジョ―ジ・フォアマン、大仁田厚の名前もあがっていたものの、

初戦の相手に選ばれたのがムタだった。


昭和の鬼か? 平成の悪魔か?

稀代の名レスラー同士によるキャラクター勝負は、

日本人対決としては最高のファンタジー空間を作り上げた。

だが結果的に、ファンもマスコミも同じ感想を持ったのではないか?


「ムタは試合に負けたが、勝負に勝った!」


そう、武藤敬司では猪木を絶対に超えられなくても、

したたかで破廉恥なムタには師弟関係など通用しない。

それを利用したムタは、あの猪木を相手にリング上を

完全なムタワールドに染めてみせた。


馳浩戦、新崎”白使”人生戦、そしてこの猪木戦こそ、

ムタ史上最高の名勝負ベスト3だと私は思っている。


④1年以上もムタを封印していた武藤敬司が、

96年の4・29東京ドームで封印を解いた。

相手は、WWFで活躍していた新崎”白使”人生。


キャラクターではムタに劣らない白使だったが、

思った以上に体格差、力量差が浮き彫りになった感もある。


試合のハイライトシーンは2つ。

まず、白使の帯を奪い取ったムタが、

エプロンサイドで白使を首吊りにするシーン。


続いて、白使の額から溢れ出る血を指で拭い取ったムタが、

卒塔婆に”死”という文字を書いたシーン。

しかも、血の量が足りないとばかり、

二度拭ってみせるのだから圧巻だった。


ムタの残忍性とプロレス頭が冴えわたり、

白使の受けの凄みも評価できる一戦だった。


⑤平成維震軍を去って、IWAジャパンに新天地を求めた

ザ・グレート・カブキが98年夏に引退を表明。

それを受けて「パパとタッグを組んで試合がしたい」とムタが発言し、

フィクションの親子が最初で最後のタッグチームを結成する。


ムタの顔には大きく「SON(=息子)」の3文字が描かれていた。

架空の親子でありながら、ホロリとさせられたのは、

93年に2人が血で血を洗う骨肉の親子抗争を

展開したことがあるからだろう。


親子による毒霧の同時噴射が最高の名シーン。

カブキに敬意を表して最高の花道を用意した新日本。

カブキにとってもムタにとっても、

忘れられない試合となったことだろう。


日本が生んだ世紀のスーパーヒール、

グレート・ムタの魅力満載の一作である。


なお、マガジンのほうでは、私が全試合の解説を務めており、

『プロレス雑学王38』では、橋本真也との永遠の別れについて触れている。

そちらのほうも、ぜひご一読くださいませ!


燃えろ!新日本プロレスvol.38

グレート・ムタ、阿修羅の如く!

3月14日(木)発売…つまり絶賛発売中!

発行元=集英社

定価=1680円