DVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』vol.37は、
プロレスの歴史を変えた東京ドーム初進出の特集号。
夢がデカすぎる!初ドーム
「'89格闘衛星★闘強導夢」
と題し、プロレス界の先陣を切って
新日本プロレスが東京ドーム初興行に挑んだ
1989年4月24日、東京ドーム大会を特集している。
もちろん、同大会の目玉となった日米ソ三国対抗戦
(IWGP新王者決定トーナメント)を目玉とした開会式の模様も収録。
日本チーム代表として日の丸の国旗を掲げたのは、
若き日の蝶野正洋である。
選手、関係者、マスコミ、そして5万3000人(主催者発表)の大観衆。
すべての人間が、この異様に大きな空間に酔った。
それまでプロ野球の試合以外で東京ドームが使用されたのは、
ミック・ジャガー、美空ひばり、BOØWYのコンサートと、
マイク・タイソンのボクシング世界ヘビー級戦だけ。
それを考えると、新日本のチャレンジは歴史的であって、
称賛に値するものだろう。
このドーム進出によって、新日本は業界盟主の座を
不動のものとしたわけである。
当時、『週刊ファイト』の記者だった私も、
初めて立ったドームのフィールドからリングを眺めたとき、
あまりの距離感に言葉にならない衝撃を受けたことを覚えている。
もちろん、世界を驚かせた旧ソ連のペレストロイカ政策に着眼し、
ソ連の強豪レスリング選手たち…レッドブル軍団を共産圏初の
プロレスラーとしてデビューさせた猪木の手腕は、
社会的にも大きな注目を浴びた。
それでは、全試合ノ―カット収録(116分)DVDの
ラインナップを紹介してみたい。
①IWGPヘビー級王者決定トーナメント全7試合完全収録!!
〔1989年4月24日、東京ドーム 以下同〕
●1回戦
ビッグバン・ベイダーvs蝶野正洋
藤波辰巳vsウラジミル・ベルコビッチ
ビクトル・ザンギエフvsバズ・ソイヤー
橋本真也vs長州力
●準決勝
藤波辰巳vsビッグバン・ベイダー
橋本真也vsビクトル・ザンギエフ
●決勝戦
橋本真也vsビッグバン・ベイダー
②“怒りの獣神”デビュー戦!!
獣神ライガーvs小林邦昭
③ソ連のアマレス最強戦士、衝撃の初陣!!
サルマン・ハシミコフvsクラッシャー・バンバン・ビガロ
④異種格闘技戦で初黒星、裏投げに散る!!
アントニオ猪木vsショータ・チョチョシビリ
①は、この大舞台のためにあえて藤波が返上した
IWGPベルトを日米ソの実力者たちが争うトーナメント戦。
1回戦は、見どころたっぷり。
ベイダーの容赦ない猛攻に蝶野が記憶を飛ばされて敗退。
一方、橋本は丸めこみ技ながらいきなり長州を破る大金星。
ただし、私が個人的にもっとも好きなのは、
バズ・ソイヤ―vsビクトル・ザンギエフ戦。
この大会の3年後、32歳の若さでこの世を去った
ソイヤ―は当時の私にとって外国人レスラーの中で
唯一の友人だった。
マッドドッグの愛称通り、対戦相手の尻に噛みついたり
ショーマンシップ豊かなレスラーだが、
パワースラムの切れ味は天下一品。
今でも世界№1と言いきっていいだろう。
そして、一皮剥けばアマチュアレスリングの実力派。
対するザンギエフは抜群の身体能力でもっともプロ向きと言われた男。
米ソの本格派同士によるジャーマンスープレックス合戦が見どころである。
いま改めて、ソイヤ―を見ると本当に涙がこぼれそうになる。
明るくて、優しくて、イタズラ好きで、
本当にいいやつだった!
準決勝は、橋本vsザンギエフ戦に尽きるだろう。
”ソ連のミグ戦闘機”ことザンギエフを橋本が仕留めた技は、
なんとプロレスの古典技である足4の字固め。
このセンスが大会後に絶賛されることになる。
あの武藤敬司vs高田延彦戦のフィニッシュとなった足4の字は、
この橋本vsザンギエフ戦をヒントにしたような気がする。
そこに、武藤らしくドラゴン・スクリューというスパイスを利かせたのではないだろうか?
結局、決勝戦ではベイダ―の分厚い壁に跳ね返された橋本だが、
このトーナメントでの活躍によって闘魂三銃士のトップに躍り出る。
②は、リバプールの風になった男の再デビュー戦。
初期の獣神ライガーのコスチュームにも注目してほしい。
ここからライガー時代がスタートするわけだ。
③レスリング・フリ―スタイル100kg級の世界選手権で、
3連覇を含む4度の優勝経験を持つハシミコフは別格の存在として
トーナメントには出場することなく、C・B・ビガロとスペシャルマッチで対戦。
なんと、あのビガロを軽々と担いで秒殺してしまう。
この衝撃は凄まじかった。
単純な技に見える水車落としが必殺技となり、
その後、水車落としはさまざまなレスラーが使う流行技にもなった。
④メインは限界説も囁かれていた猪木が2年5ヵ月ぶりに
異種格闘技戦に臨んだ試合。
相手は72ミュンヘン五輪・軽重量級金メダリストである
ソ連の柔道王、ショ―タ・チョチョシビリ。
ちなみに、このミュンヘン五輪では、重量級&無差別級の
2階級はウィリエム・ルスカ(オランダ)が制している。
試合形式は3分10R制で、
ノ―ロープ円形リングが採用された。
試合は左腕を殺され、裏投げの連発を食った猪木の惨敗。
猪木が初めて異種格闘技戦で敗れるという結末も壮絶だったが、
この一戦から裏投げという必殺技がクローズアップされた。
のちに馳浩の代名詞となった裏投げだが、
現在その使い手はいない。
この投げ技を甦らせてくれるレスラ―が出てくることにも期待したい。
とにかく、夢のように時間が過ぎたドーム初興行。
大会終了後には、新日本の女性社員のほとんどが泣いていた。
それほど、プレッシャーのかかる未知の領域であったわけだし、
大会が成功に終わった安堵感で感極まったのだろう。
私も、この4・24ドーム大会を観直すたびに、
あの当時のなんとも言いようのない空気を思い出す。
まさに「踏み出せば、そのひと足が道となる」を地で行く
壮大なチャレンジだったわけである。
新日本プロレスが、プロレスをドームに刻み込んだ日。
ぜひ、堪能してもらいたい!
なお、マガジンのほうでは、全試合を私が解説しているので、
そちらのほうにも目を通してくださいネ!
燃えろ!新日本プロレスvol.37
夢がデカすぎる!初ドーム「’89格闘衛星★闘強導夢」
発行元=集英社
価格=1680円
2月28日(木)、本日発売!