さすがに10日もブログを更新していないと、仕事仲間から

更新の催促どころか、安否を気遣うメールまで来る。


私が無事(?)だと分かると、

「早くDDTの武道館大会のことを書いてくださいよ!

金沢さんがどう見たのか、楽しみにしてるんだから」

と容赦なく追撃がきた。


忙しいというのは理由にならないのだが、

ここで言い訳をさせてもらうと…実に忙しかった(笑)。

だから、DDT武道館大会に関しても、24日、23時48分という時刻で、

書きかけのまま4日間も放置されていた。


もう、これだけ時間が過ぎてしまったのだから、

改めて書きなおそうとは思わない。

そのとき書いたことがイチバン素直な感想なのだから、

まずは書きかけだった24日、23時48分の時点での文章を

そのまま掲載しようと思う。

               

                  金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


(↓以下、そのときの原文ママ)

22日の水曜日、近所の書店で『週刊プロレス』を購入。

表紙は、DDT15周年記念の8・18日本武道館大会。

飯伏幸太がケニー・オメガに初公開となる

雪崩式フェニックス・プレックスを決めている絵だった。


レジに持っていくと、

「680円になります。袋にお入れしますか?」

とオネエさんに言われた。


「ハイ、お願いします。あと領収書をください」


これはいつもの返答。

ただし、口にこそ出さなかったものの、ちょっと驚いていた。

ろ、ろ、ろっぴゃくはちじゅうえーん???

いつの間にそんなに値上げしていたんだぁー!?


自宅に戻り袋から取り出してよくよく眺めてみると、

8・18日本武道館大会の大特集。

つまり、まるごと1冊・DDT尽くしの増刊号だった。


へえー、DDTで増刊号を出すのかぁー。

週プロも勇気があるし、DDTは大したものだなあ。

また、翌23日に同じ書店に入ったみたら、

本誌・週刊プロレスが置いてあった。


表紙は、東京ドームをバックにした高木三四郎大社長。

こっちもDDTが表紙かい!?

DDTは大したものだなあ、

週プロも芸がないなあ…

いやいや、勇気があるなあ!

そう思った。


なぜ、またもサイドストーリーから入っていったかというと、

私自身、DDTの8・18日本武道館大会、

「武道館ピーターパン~DDTの15周年、ド~ンと見せます

超豪華4時間SP!」の取材(観戦)に行っているから。


あれから、もう1週間も過ぎてしまってこの話を書くのは、

少し気恥ずかしいので、こういう切り口から入ったとさ(笑)。


そう、ちゃんと現場に行ってきた。

自慢ではないが、09年、00年、01年と、

DDTの両国大会は3年連続でフル観戦してきた。

ならば、今年も行かねばなるまい。


ただし、今回、年に一度のビッグマッチに向かう際の

モチベーションは過去3年とは明らかに違っていた。

過去3年は、DDTという団体の一見ハチャメチャにして、

じつはしっかり練り上げられている世界観を体感し、

単純に楽しむためだった。


実際に、2010年の両国大会では、

たまたまボックス席で一緒になった小島聡と並んで観戦した。

全日本を退団した小島が右肘の手術を終えて、

ちょうど新日本のG1クライマックスへ出場表明をした直後だった。


小島も私も、完全にお客さん状態であり、ファン気分だった。

小学生レスラー、ミスター6号のパフォーマンスには、

ゲラゲラと笑いっぱなし。


マスコミだから、しかめっ面をしていなければいけない、

レスラーだからプロレスを笑って見てはいけない――

そんな決まりごとはどこにもない。


あまりにオモシロイからケタケタ笑うし、

そこがDDTの会場だから許されるというか、

それでOKという空気が充満しているのだ。


もちろん、爆笑する一方で、

「あんな小さな子が会場中の視線を釘づけにして、

そのうえ一体化させてしまうのはスゴイですよね」

と小島は感心もしていた。


また話がそれかけた。

つまり過去3年の両国大会はDDTが提供する、

1年の集大成たるリングを見るために訪れたという感覚。


今回は少し違った。


今の私自身はそれほど”笑い”という要素を求めてはいない。

先の『G1クライマックス』や、その直前のZERO1『火祭り』を取材して、

「これぞ!プロレス」が目に焼き付いてしまったから。

G1が見せたプロレスの進化と原点回帰。

火祭りが見せたプロレスラーの限界タフネスぶり。


この夏、「これでもか!」とそれを目の当たりにしたから、

プロレスに笑いやギミックは必要なし―‐

そういう感覚で視点が固まりかけていたのかもしれない。


無論その考えをDDTに当てはめたり、

押しつけたりすることは、

何の意味もない。

嫌なら見に行かなければいいだけの話。


奇抜なルールを採用したり、

さまざまなプラスαのファクターを加えることにより、

従来ルールのプロレスとは一味違う

スリルや興奮、笑い、感動を呼ぶのがDDTのDDTたる所以だろう。


「これぞ、プロレス!」ではなくても、

「これも、プロレス!」を目いっぱい披露してくれるのが

DDTのリングである。


それに今大会は全試合に手法を凝らしていた。

おまけに選手のノリがいい。

レスラー自身が存分に試合を楽しんでいるのが伝わってくる。

リング上のレスラーが楽しんでいるのだから、

観ている人間が楽しくないわけはないだろう。


しかも、藤波辰爾、藤原喜明、真壁刀義という

メジャーどころが試合後には笑顔全開だったのが印象的。


藤波のパートナーを務めたMIKAMIは藤波に憧れてプロレスラーになった。

その憧れのスーパーヒーローと大舞台でタッグベルトを奪取。

これほどの喜びはそうそうないだろう。


じつは、ちょうど10年前、MIKAMIは

新日本の日本武道館大会に出場したことがある。

2002年の6・2日本武道館。

当日のメインは永田裕志vs佐々木健介のIWGPヘビー級選手権。

結果は永田がバックドロップ・ホールドで2度目の防衛に成功。

こう書くだけで時代を感じさせる。


この時、他団体提供試合のDDT代表としてタッグマッチに出場し、

ラダーのテッペンからスワントーンボムを決めて勝利を飾っている。

今回はホームの武道館で、

しかも藤波がリングに押し入れたラダーのテッペンから舞った。


もう感無量だろう。

ラダーを使ったニ―ドロップ、

ラダーを使ったドラゴン・スクリューと

藤波も観客の想像を超えたパフォーマンスを披露。

これがDDTマジックなのだろうか?


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見てよ!このドラゴンの笑顔。

私のデジカメに向かって、こんな表情でポーズを決めてくれた。


真壁に至っては、コメントのほうでも、

絶対に書けない下ネタ全開で上機嫌。

学プロの後輩であり、パートナーのHARASHIMAを褒め、

ついでに対戦相手の伊東竜二、石川修司のことも絶賛した。


あとで、個人的に話してみたときも、

真壁は伊東、石川を大いに評価していた。


「体張ってるよね、大したもんだよな。

あいつらイス並べて、オレを雪崩式で投げようとしたとき、

おいおいっ、おめえーら、オレを本気で壊す気かよ!って(苦笑)。

タフだし、根性あるし、あいつらプロレスラーだよ」



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5年後に開催予告をした東京ドーム大会でも

高木三四郎との一騎打ちを迫られた鈴木みのるだって、

おそらくゲップが出るほど試合を満喫したのではないか?


なんせ、三四郎のアドバンテージであるウェポンの中身が、

メカマミー3点セット、ゆずポン、マッスル坂井、藤原組長と、

ゆずポン以外は、鈴木のプロレスラー人生において、

じつはかなり重要なポジションを占めている人(モノ)たちばかりなのだ。


つねに相手をオモチャにしている世界一性格の悪い男が、

ことDDTにおいてはオモチャにされている感じ。

というより、鈴木自身が楽しんでオモチャになっているようでもある。

これが大社長マジックか!?(笑)。


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ただ、先ほどチラッと触れた過去3大会(両国)との違いは

メインイベントに切札を持ってきたことだろう。

その時点での切札(KOーD無差別級選手権)ではなく、


ここ数年のDDTマットを振り返ってみたときに、

「これしかない!」という

誰もが納得する切札カードである。

だから極論するとDDT武道館大会で私が見たかったもの、

確認したかったものは、メインイベントに集約される


4年ぶりに実現するゴールデン☆ラヴァ―ズのパートナー対決。

飯伏幸太vsケニー・オメガのKOーD無差別級選手権。

4年前にケニーが初来日したとき、

両者は一度だけシングルマッチを行なっているという。


その場所が、新木場1st.RING。

それをキッカケに意気投合してタッグを結成し、

タッグチームとしても、シングルプレイヤーとしても、

日本マット界が世界に誇るジュニア戦士に昇り詰めた2人。


あれから4年の歳月を経て、

場所は日本武道館のメインイベント。

もう、余計な講釈はいらない。


2人だけの世界、2人で育んできた歴史、

2人のプロレス観、2人の覚悟…

本来なら公開する必要のない飯伏とケニーだけの世界。


それをDDT最高峰の闘いとして、

大観衆に披露しなければいけない。


なにより闘うと決めた時点で、

”K点”超えを宿命づけられている。

本人たちもそれを目標とせざるを得ないし、

周囲もそれを期待してしまうのだ。


(↓以下、続きを28日深夜から書き始めたのだ)

ところで、セミファイナルに組まれたのは、

男色ディーノvs透明人間という異色マッチ。

「ホウキ相手にもプロレスができる」とは、

リック・フレアー、アントニオ猪木、武藤敬司といった

プロレスの達人たちを表現する言葉であるが、

実際に、この人たちがホウキを相手にプロレスをするわけがない。


それを実際にやってしまおうというのが、

この試合の試み。


果たして、どうなのだろう?

私なんかは、透明人間との試合よりも、

ヨシヒコとの試合のほうが難題だと思うのだが、

”間”が持つかどうかという怖さを考えたら、

透明人間のほうが強敵なのかもしれない。


それに最近のヨシヒコは完全にレスラーとして市民権(?)を

獲得してしまった感もあるので、

ヨシヒコ自体にも不思議と”我”を感じてしまう。


そういえば、思い出した。

私が日本武道館のバックステージに到着して、

最初に会ったレスラーはヨシヒコ。


通路の向こうから悠然とやってきたヨシヒコに

自然と会釈してしまったのだが(笑)、

ヨシヒコにはシカトされた。


「おお、随分と上から目線になったものだなあ」と思っていると、

そのすぐ後ろにアントン(アント―二オ本多)が寄り添っていて、

「お疲れさまでーす!」と笑顔で挨拶を返してくれた。


なんてこった!?

今やアントンはヨシヒコの付人なのか、子分なのか?

それじゃまるでアンタ、ヨシヒコの操り人形じゃないの!

スマン、これは書いてみたかっただけ。


そう、ヨシヒコではなく、ディーノvs透明人間だった。

セミの試合中、試合後の語り部分は、

明らかにメインへの煽りⅤとなっていた。


最初は、DDT設立の歴史からⅤがスタートしたので、

透明人間は旗揚げメンバーであるNOSAWA論外なのかなと思っていた。

実際は、DDTの歴史そのものというのが答え。

途中でもうそれが分かったから、バックステージのトイレへ行った。


関係者用トイレのある通路のドアを開けると、

ケニーがコスチューム姿で立っていた。

このスペースが入場花道への待機場所となる。

表情が固い。

軽く会釈を交わしてから、トイレに入ると今度は飯伏に会った。


飯伏の表情も固いから、こちらも会釈を交わす程度。

とても話し掛ける雰囲気ではなかった。


トイレを出た飯伏とケニーの距離は、5メートルほど。

もちろん、会話などないし、目を合わせることもない。

対戦相手が近くにいながら、まったく視界に入っていない様子。

2人とも自分の世界に入り込んでいるように見えた。


やっぱり、スゲェ―試合をしてしまうんだろうなあ。

2人の表情を見ただけで、想像ができてしまう。


実際に、試合はとんでもなかった。

開始20分までは、合せ鏡の素晴らしいプロレス。

2人のスピード、技のタイミングがピタッピタッと合う。


打ち合いも交わし合いも、切り返しまでもピタッと合う。

ここまでお互いを知り尽くしているのだから、驚きだ。


これがシングルで対戦するのは2度目。

毎日闘っている選手同士でも、

ここまでタイミングは合わないだろう。

ましてや、そのスピードが半端ではないのだ。


20分過ぎから、試合は別次元に入った。

巨大ビジョンを支える鉄塔を上った飯伏が、

1階スタンド席にぴょんと飛び移った。

5メートルはあろうかという場所から見事なケブラ―ダ。


じつは、1階席に戦場を移したり、そこから飛び降りることは、

日本武道館の規則で禁止事項とされているらしい。


「子どもが真似をすると大変な事故につながるから」

というのが理由と聞いた。

いやいや、どんなヤンチャな子どもでも

これは真似しないって!


だから、上の人間が飯伏には何度も念を押したという。

「絶対に1階席に行ったり、そこから飛んだりしないように!」

そう何度も念を押すように言われたら、飛びたくなるのが飯伏だろう。

むしろ、「飛ぶな!」を「飛んでみろ!」と

受け取ってしまうのが飯伏の感性のような気がする。


ケブラ―ダで舞ってから立ち上がった飯伏は笑っていた。

普通なら薄ら笑いを浮かべると表現するところだが、

イケメンの飯伏だから微笑んでいるように映った。


この笑みが一線を超えた瞬間を意味していたように思う。

そこからリングに戻ると、

再び始まった攻防はもうプロレスとは映らなかった。


圧巻は、飯伏がケニーを場外へ放り投げた

雪崩式フランケンシュタイナー。


「ケニー、ごめんなさい。

でも、やるしかなかったです。

アレは(やった選手は)いないですよね」


飯伏がそう振り返ったように、

覚悟のK点超え。

アクシデントでもないのに、自ら仕掛けた技を

「ごめんなさい」と言っているのだから、

これはもうプロレスではないのだ。


実に37分を超えた勝負タイム。

終盤、また笑みを浮かべた飯伏が、

拳を固めてストレートパンチを打っていく。


飯伏はキックボクシングの経験者だから、

蹴りもパンチも本物。

ストレートを放ったかと思えば、

この時間帯で強烈なソバットまで見舞う。


ケニーは場外フランケンを食ってから、

ずっと脇腹を押えて苦悶の表情を浮かべている。

よくぞ最後まで闘ったと思う。


エンディングは、フェニックス・スプラッシュ。

別次元の闘いも、最後はちゃんとプロレスに帰ってきた。


「こういう激しい試合は、もういいかなあと思います。

エスカレートしていくだけです。

違った形でもっとスゴイ試合、次はしますよ。

もうこの形はMAXまできた。

次は死にますよ、ホントに」


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飯伏本人の言葉がすべてだろう。

K点を超えてMAXまで見せたし、

自分でもMAXを感じた。


その先は、もうない――。


こういった闘いは封印。

ケニーとの勝負も封印。

それが分かっているから、

飯伏はやっぱりプロレスラーなのだ。


KOーD無差別級王者であると同時に、

IWGPジュニアヘビー級王者であることも自覚している。


8・18日本武道館のメインイベント。

飯伏幸太vsケニー・オメガはワンナイトドリーム。

我々は一夜限りの夢を見させてもらったのだから、

もうそれを掘り起こしてはいけない。