本日(21日)発売の『燃えろ!新日本プロレス』vol.19は、私のイチ押し!


『新時代のダイナミズム、若き闘魂三銃士!』

と銘打って、全試合ノ―カット収録DVD(98分)には、

歴史的な一戦が5試合収録されている。


まさに、平成プロレスの夜明けといっていい、

新時代の鼓動、躍動をぜひ見届けてほしい。

DVDメニューは次の通り。


①黄金コンビを圧倒、闘魂が成長を認めた!

アントニオ猪木&坂口征二vs橋本真也&蝶野正洋

(1990年2月10日、東京ドーム)


②”天才”緊迫の凱旋でIWGPタッグ奪取!

マサ斎藤&橋本真也vs武藤敬司&蝶野正洋

(1990年4月27日、東京ベイNKホール)


③魂の破壊王、涙の世代交代達成!

長州力vs橋本真也

(1990年5月28日、大阪府立体育会館)


④新日初参戦、”暴走戦士”が逆ギレ大暴走!

武藤敬司&蝶野正洋vsザ・ロード・ウォリアーズ

(1990年7月22日、札幌・月寒グリーンドーム)


⑤平成維新、90年代プロレス新時代開幕!

武藤敬司&蝶野正洋vs馳浩&佐々木健介

(1990年11月1日、日本武道館)

金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


こうメニューを並べただけで、武者震いしそうなラインナップ。

しかも、すべての試合が1990年(平成2年)に

開催されているところに意味があるような気がする。


ちなみに、この5試合すべてを、

私はライブでリアルタイムで取材している。


①は講釈無用だろう。

「時は来た!」(橋本)と

「闘う前に負けることを考えるやつがどこにいる!?」(猪木)の

名セリフが試合前のインタビューで飛びだした、

あの世代闘争マッチ。


前年7月、参議院議員選挙に当選した猪木は

リング上の第一線から離れ、引退説も囁かれていた。

この試合を最後に引退表明という噂も流れていただけに、

猪木の周囲は凄まじいまでの緊張感に包まれていた。


それが試合前のインタビューで爆発し、

テレ朝のアナウンサーを張り飛ばすという行為にまでつながった。

一方の三銃士サイド、特に橋本は本気で猪木に引導を渡す覚悟。

橋本のローキックの雨アラレを食った猪木は途中から足を引きずる。


試合後、坂口社長が

「お前、よく猪木さんをあれだけ蹴れたもんだな!」

と怒りの形相で橋本に迫ったほどだ。


蝶野も見事なまでにプロレスセンスを発揮して、

猪木の後継者は自分であることをテクニックで証明する。


「強い者が勝つ!」


猪木が創った新日本の掟を、元付人の蝶野、

猪木信者の橋本が忠実に守った結果の壮絶マッチ。


猪木は引退表明こそしなかったものの、

目を腫らし鼻血を流しながら、2人に言葉をかける。


「もう、オマエたちの時代だよ」


猪木自身が命名し、後継者としての期待を賭けた

闘魂三銃士は本物だったことを満天下に示した死闘である。


②はグレート・ムタとして米国WCWで大ブレークした武藤の凱旋マッチ。

しかも、凱旋マッチが蝶野とタッグを結成してのIWGPタッグ挑戦だった。


当時の王者チーム、マサ斎藤&橋本はとにかく強かった。

2人が組めば外国人チームにもまったくパワー負けしない。

ところが、周囲の期待通り、いや期待以上に、

この一戦は武藤のひとり舞台となった。


スピーディに動き回る武藤の一挙手一投足に観客は釘付け状態。

とにかく速い、そしてダイナミック。


そして、この試合のイチバンの見どころは、

武藤オリジナルのドライビング(フラッシュニング)エルボーでも、

鮮やかなフィニッシュのムーンサルトプレスでもない。


超高角度のギロチンドロップ(レッグドロップ)なのである。

類まれな跳躍力を生かした武藤は、今まで誰も見せたことがないほどの

高さからギロチンドロップを投下していく。


会場は、驚きの溜め息と、歓声に終始包まれていた。

ところが、この凱旋マッチで膝を負傷した武藤は、

この試合を最後にギロチンドロップを封印することになる。


このギロチンを見るだけでも価値アリ!

まさに武藤敬司のスーパースター伝説の幕開けと言える。


③過去、1勝1敗で迎えた長州vs橋本の一騎打ち。

しかも、この試合にはさまざまなドラマが渦巻いていた。


当時、藤波は腰痛のため長期欠場中。

台頭する三銃士との世代闘争の矢面に立っていたのが長州だった。


そこで企画されたのが、長州vs三銃士のシングル三番勝負。

第1戦=武藤、第2戦=蝶野を勝利で突破した長州が、

最後に迎えた相手が因縁の橋本。


リキラリアットvs重爆キックの真っ向勝負。

最後に勝負を制したのは破壊王の二―ルキック。

初めて橋本が長州から完全勝利を奪った闘いでもある。


興味深いのは、その11日後、全日本の日本武道館大会で、

素顔になった三沢光晴がジャンボ鶴田から初勝利をあげたこと。

当時、新日本と全日本の世代闘争はどこかでリンクしていた。

鶴田vs三沢戦と合わせて観ると、余計に感動的だろう。


④これも三銃士の隠れ名勝負、インパクト満点の一戦。

ロード・ウォリアーズがWCWを離脱してWWF入りする直前に、

新日本マットに初登場。


特別出場の最後の相手が、武藤&蝶野のIWGPタッグ王者コンビ。

もちろん、政治的背景を考慮してノンタイトル戦で激突した。


驚くべきは、武藤&蝶野がウォリアーズを相手に試合を成立させていること。

当時、まだ全盛期にあったウォリアーズの持ち味は、

やはり一方的な叩き潰しファイト。


だが、武藤&蝶野の底力、卓越した技量が、

暴走戦士との試合を白熱した一戦へと導いた。

最後は武藤のムーンサルトが決まりながら、

イスを持ちだしたウォリアーズの反則負け。


考えてみると、キャリア6年弱だった武藤&蝶野が

世界のウォリアーズをコントロールしているように

映ったのだから、それだけでも驚異なのである。


試合後、長州現場監督も2人に向かって一言。


「お前らが舐められたわけじゃない!

アイツらが逃げたんだ。

もう一度やるなら交渉してやるから」


これは、長州からの褒め言葉だろう。

ちなみに、試合後も荒れ狂うウォリアーズの

元祖ダブルインパクトの餌食となったのは、

デビューしたばかりの小原道由だった。


⑤新日本プロレス史に名を残す名タッグチーム

”馳腱”こと馳浩&佐々木健介が遂に表舞台に立ち、

大仕事をやってのけた記念すべきタッグ名勝負。


武藤と同時帰国しながら、まったく注目されることのなかった健介と、

5ヵ月前の福岡大会で後藤達俊のバックドロップを食らって、

心肺停止状態に陥り、死地からカムバックしてきた馳。


努力一筋、トレーニングと根性だけで這い上がってきた

馳腱コンビの挑戦をファンは熱烈に後押しした。

その期待に2人は見事に応える。


一進一退の攻防は、最後の最後まで勝負の行方が見えない。

カウント2.99が続く息つく暇もない展開に武道館は大爆発。

結局、勝負を決めたのは馳の完璧なノーザンライト・スープレックス。

のちに、名勝負数え唄を作り上げる武藤からピンフォールを奪ってみせた。


遂に”馳腱”がIWGPタッグ王座、初戴冠!

エンディングは、4人がノーサイドで手を取り合い、

四方のコーナーに上がって、猛アピール。


「新・俺たちの時代だ!」


そう叫んでいるような名シーン。

現代プロレスの先駆け的な名勝負だった。

なお、この一戦は当時『週刊ゴング』の

”90年度タッグ部門・ベストバウト賞”に選出されている。


また、冊子のほうでは、全5試合の見どころを私が語り、

実録!新日本プロレス事件簿・第19回『アントニオ猪木の政界進出』も

私が寄稿しているので、ぜひ読んでいただきたい!


燃えろ!新日本プロレスvol.19

『新時代のダイナミズム、若き闘魂三銃士!』

6月21日(木)、本日発売

発行元=集英社

定価=1680円


さあ、本日は木曜日……時は来たー!!