11日午後、江東区のスカパー!東京メディアセンターで、

サムライTVの人気番組『Versus』の収録を行なった。


今回は大物同士、蝶野正洋vs曙という顔合わせ。

接点がありそうでなさそうという感じの両雄だが、

実際のところ、曙が新日本マットに常連として出場していた

2006年~2007年にかけて、何度か肌を合わせている。


また、昨年の全日本の台湾遠征でも一緒になっているという。

こういった経緯をすっかり忘れてしまっている蝶野に対し、

曙のほうはすべてシッカリと覚えていた。


というわけで、今回も約75分に及んだ収録で、

私は番組の構成と進行役を担当している。


もう、正直いって、2人の絡みは収録前から漫才のごとく展開していく。

スタジオ入りに際して、改めて曙の巨体を見上げた蝶野。


「やっぱりデカイなあ、横綱、背はいくつ?」


「ん? 背は一つですよ」


呆気にとられた後、蝶野が噴き出す。


「オレが日本語の使い方を間違っていると…」


その後、着席するが、やはり曙は大きいのでイスにお尻がハマってしまう。

一旦座ると、立つのが面倒になる。


「横綱は決断は早いけど、立つのは遅いよねえ」


「イスだけに居座ってしまうんですよ」


もう、対談開始前から、笑いが絶えない。

トークは主に、蝶野が興味津々で、

曙の少年時代やハワイでの生活ぶりなどについて斬り込んでいく。


業界の大先輩である蝶野を立てつつも、曙も切り返しでは負けていない。

このあたりの感性は、さすがに仕来たりには厳しい大相撲界で頂点に立ち、

プロレス界でもトップ戦線に食い込んできた男という感じがする。


おそらく初めて本人の口から語られた事実として、

横綱時代、怪我に苦しんで引退の危機と闘っていた

1998年~1999年にかけて、プロレス界の大物からスカウトの声が掛かったこと。


蝶野がしきりと突っ込んでいたが、そこはサラリと交わす。

だが、曙の本領はそこからで、2000年に執念の復活を遂げ、

2000年7月場所、11月場所で優勝し、通算11回の優勝記録を残し、

翌2001年に引退している。


「正直に言ってしまえば、横綱になるまでは簡単でしたよ。

でも、なってからが大変。自分しかいないんです。

どこにも手本がいない、誰も手本になってくれない。

『横綱はこうあるべき』という人はいっぱいいたけど、

その人は横綱になっていないんだから、横綱の気持ちなんか分からない」


最終的に引退を決めたのは、相撲界を背負うプレッシャーから解放されたかったからだという。

また、親方を辞めて、K-1のリング、総合格闘技を経験して、

初めてプロレス界からオファーがあった時は

んな心境だったのかを、蝶野が尋ねた。


「やっと来たか(笑)、もう待ってましたと。

自分も随分と回り道したなあと思いましたね」


そう言った曙は会心の笑みを浮かべた。


「なんせ子どものころからプロレスを観て育ちましたから。

だって日曜日の夕方5時になると、

ハワイ中の子どもたちが家に帰ってしまい外に子どもはいないんだから。

みんな、プロレス中継を観るためですよ。

あのザ・ロックのおじいちゃん、ピーター・マイヴィア(メイビア)がプロモーターで、

ジミー”ザ・スーパーフライ”スヌーカ、ブルザー・ブロディといっぱいスターがいましたよ」


曙のプオタぶりが大爆発し、蝶野もビックリという感じ。


「プロレス・デビュー戦がグレート・ムタだったけど、どうでした?

ムタはやりにくいよね、オレは好きなタイプの選手じゃないけど……」


「もう初めてだから、やりにくいも何も分からないですよ。

正直、ムタが入場してくるのを観たときに、小便ちびりそうになりました(笑)。

あとは、お客さんの声が厳しいなあってね」


また、デビュー戦がムタであり、その後、武藤敬司、蝶野、三沢光晴という

大物たちと絡んできた曙だが、唯一、橋本真也を知らない。

しかし、息子の大地とは、12月、ZERO1が開催する

タッグリーグ戦『風林火山』でタッグチームを結成することが決まっている。


「橋本真也は知らないけど、大地と今度タッグ組むんでしょう?」


「闘ってはいないけど、何度かお酒の席で一緒になって飲んだことがあるんですよ。

橋本さんは熱い人…ホントに自分が出会った人間の中でも3本の指に入るぐらい熱い人でしたね」


「大地のデビュー戦の相手は、オレが務めたけどまだ線が細いね?」


「でもね、ボクも一回タッグでやりましたけど、

張り手をかましても、グッと睨んで立ちあがってくる。

気持ちは太いですよ!」


「ああ、そこはオヤジ譲りでしょう?

大地はそういう目立ってやろうという精神があるし、見せ場を心得ている。

下手したら、横綱を食ってやろうと思って横に立ってるからねえ」


「じゃあ、充分気をつけます(笑)」


話が佳境に入ったところで、突然、蝶野の口調が変わった。


「実は、ここまで話してきた何十分はあんまり意味がなくて(笑)、

これからが本題なんですよね。

来年の1月9日に横浜で東日本大震災復興イベントの一環として、

プロレスフェスティバルをやるんですよ。

もう5団体の了解をもらっているんだけど、

そこにどうしても出場してほしいビッグネームがいて……

これがいい男なんですよ。

イスから立ち上がるのは遅いんだけど(笑)、決断は早いことでは有名な…」


「いいですよ、出させていただきましょう!」


というわけで、さすがに黒のカリスマ。

しっかりと用意周到に戦略(!?)を練ってきた。

これにて、トーク番組中に曙の参戦が電撃決定。


来年の1月9日、神奈川・パシフィコ横浜展示ホールで開催される

蝶野正洋プロデュースのプロレスフェスティバル『FIGHT&LOVE』には

5団体(全日本プロレス、ZERO1、みちのくプロレス、大阪プロレス、大日本プロレス)が参加。


会場に2つのリングを設置して、10~12試合程度の試合が組まれる他、

ミートフェスタ』というもう一つのコンセプトのもと肉を中心とした食の屋台が出店される。


もちろん、全日本、ZERO1などから自慢のちゃんこ料理が提供される予定だが、

蝶野もオリジナルちゃんこを出展すると聞いて、すかさず曙も参戦宣言。


「たぶん食のイベントには50品目以上の出展があると思うから、

投票形式でコンテストを開きたいんだよね。

オレは黒…黒ゴマなどをブレンドさせたカレー味の黒ちゃんこを考えているから」


これを聞いて、曙も闘志満々。

ちゃんこと聞いて、元横綱が負けるわけにはいかない。


「じゃあ、ハワイアンちゃんこで優勝を狙いますよ。色はオレンジ!」


「オレンジって、それ大丈夫なの?」


「オレンジジュースは入らないから(笑)。メッチャおいしいですよ。

オレが厨房に入りますよ。

女性に優しいコラーゲンたっぷり、栄養たっぷりちゃんこです。

ボクの名付け親でもある、ちゃんこ屋さんの萩原さんが作ってくれたことがある。

それ以上は企業秘密…これから曙ちゃんこダイニングでも作ろうかな、

『ちゃんこダイニングあけ』とか(笑)」


「じゃあ、オレはもうブラックカレー味だね。

横綱が女性向けなら、オレはお父さんが翌日、元気になるような黒系で」


なぜか収録後は、ちゃんこ談議で火花を散らす両者。

どうやらリング外でのガチンコちゃんこ対決が実現することになりそうだ。

金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


◎蝶野正洋プロデュース

プロレスフェスティバル『FIGHT&LOVE』


〔日時〕2012年1月9日(月・祝)

〔会場〕パシフィコ横浜 展示ホール

    開場:11時30分予定 開演:12時00分予定


〔入場料〕 

特別入場券 観戦席付(ワントレイバイキング付)=9000円

特別入場券 観戦席付子供(ワントレイバイキング付)=3500円

特別入場券(ワントレイバイキング付)=7500円

特別入場券子供(ワントレイバイキング付)=2000円

※すべて税込、子供は小学生・中学生が対象になります。


 ◎番組放送は、サムライTV『Versus♯55 蝶野正洋vs曙』

  11月14日(月)、23:00~24:00、リピートあり。