喜びも悲しみも幾歳月…なんていう古い名作映画、そのヒットした主題歌がある。

実は下の写真の目覚まし時計、私とはもっとも古い付き合いとなる。

18歳の春、大学に入学するため上京し、近所の時計屋さんで購入したのが、この時計。


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少しばかり詳細に説明すると…1980年3月末、北海道帯広市から上京した私は

大学生生活を送るにあたり、まずアパート探しから始めた。


当時、たまたま姉が渋谷区にある同じ大学に通っていて(2学年先輩)、

川崎市の高津にアパートを借りていた。

そこで、その近辺でアパート探しをして見つけたのが、

世田谷区上野毛3丁目にある古いアパート。


家賃3万2000円。

6畳+3畳と台所。

自分用のトイレは外に面した渡り廊下を歩いての一番奥。

もちろん、風呂なしだった。


ただ、二子玉川園駅(現・二子玉川駅)まで徒歩10分、

上野毛駅まで徒歩5分、

年代もののボロアパートながら、高級住宅街のど真ん中にあり、

静かで環境がいいところが気にいったのだ。


そこで暮らし始めてから気が付いたのだが、一軒おいた左隣の家が

俳優の山崎努さんの自宅だった。


さらに、その先を50メートルほど行って左に曲がった角には、

小説家の吉行淳之介さん(故人)、女優の宮城まり子さんが同居する豪邸があった。


もう一つおまけに、真向かいのマンションには、

『大都会』を大ヒットさせたばかりのミリオンセラーグループ、

クリスタルキングのメンバーが住んでいた。


まあ、そんな話はともかくとして、高校を卒業し、

北海道の田舎町から上京して初めてのひとり暮らし。

見るもの、聞くもの、すべて新鮮に感じていた私が、

いの一番に購入したのが、目覚まし時計だった。


とにかく昔から寝起きが悪く、小学生から高校生まで、

朝はいつも母親の怒鳴り声で起こされていた私。


もう、誰も起こしてくれる人はいないのだから、目覚まし時計だけが頼りである。

そこで、上野毛駅の真向かいにある街の時計屋さんに入った。

グルリと眺めて、すぐに目が止まった。


下地がゴールドで、文字盤はブルー。

音の出る部分はネコをかたどっていてブルー。

しかも、目覚まし音は3種類の音色を使い分けることができる。


当時とすれば、なんとも画期的!?

なんせ、3つの目覚まし音を選べるのだから(笑)。


チャイムの音、ブザーの音、そして子守唄のような曲。

この3番目の音は、また眠くなってしまうので

あまり使うことがなかったけれど……(笑)。


とにかくこれが自慢で、高校時代の友人に電話をかけては、

「どうだ? 3種類の音が出るんだぞ! 聞かせてやろうか?」

と、相手の迷惑もかえりみず自慢した覚えがある。


話のついでにいうなら、私は北海道育ちなので、ゴキブリというものを

それまで一度も見たことがなかった。

とりあえず、ゴキブリホイホイを買ってきて、仕掛けておいた3日目のこと。


ついに、そこに引っ掛かったゴキブリを発見!

そのときの興奮度ときたら、ミヤマクワガタとかオニヤンマとか、

カブト虫を捕まえたとき以上の高ぶりがあった。


「これがゴキブリというものなのか!?」


まじまじと見つめつつ、このときも地元の友人に電話を掛けまくった。

まあ、当然のごとく、ゴキブリに喜んでいたのはその頃だけの話。


しかし、冒頭の目覚まし時計は、その後も活躍し続けた。

それ以降、三度の引っ越しをしても一緒。

この数年は、さらに寝起きが悪くなったため、

あと2個の目覚まし時計を追加して、3個体制をとっていた。


そこで”彼”はといえば、すっかり金メッキも剥げ落ちて、

まるっきり豹柄模様のようになってしまった。

それでも彼は故障することもなく、ずっと活躍してくれた。


たまに針が止まってしまったときなどは、

多少ヒヤヒヤしながら単三電池を2本交換する。

その後、再び動きだすと、ひと安心。


ところが、昨日起きてみたところ、午前3時8分を指したところで止まっていた。

いつものことだなと思い、単三電池を取り換えてみたのだが、動かない。

軽く叩いてみても、やっぱり動かない。


どうやら彼にも寿命がきたようだ。

枕元で一緒に暮らすこと、31年と7ヵ月。

嫁さんよりも、両親よりも、他の誰よりも、彼と一緒にいた時間は長い。


ところで、ウチの嫁さんは、「形あるものはいつか壊れるんだから」という主義の人で、

長年親しんできた家財道具や衣服でも、

使えなくなれば割り切って処分してしまうタイプ。


「そうしないと、古いものばかりたまって家が片付かないでしょ?」


そう言うのが常である。

やっぱり、この時計も「『不燃ゴミの日』に捨てたら」と言われるのかなと思いきや、

嫁さんの口から意外な言葉が出てきた。


「その時計はよく働いてくれたから殿堂入りだね!」


我が家で、初の殿堂入りが決定(笑)。

その名は、SEIKOのMerodia!


毎朝、本当に世話になったなあ、お疲れさん。

そして、殿堂入りおめでとう!