苦戦は予想されたものの、やはり観客動員が振るわなかった
全日本プロレスの10・23『2011 プロレスLOVE in 両国 Vol.13』。
このところ、リング外のゴタゴタが尾を引いたのか、
負のスパイラルに陥ってしまった感もある全日本だが、
大会そのものは充分に満喫できたし、試合内容も充実していたように思う。
結果的に、一番のサプライズは全日本マットの4大王座…
三冠ヘビー、世界タッグ、世界ジュニア、アジアタッグがすべて移動してしまったこと。
しかも、すべて他団体、海外(AAA)へ流失してしまったのだ。
過去、こんなケースは記憶にないから、やはり事件であり、サプライズである。
ただし、ある意味、ここから全日本を立て直すために、
ゼロからの再スタートという見方もできる。
そこはポジティブに捉えて、私たちも全日本プロレスを応援していこうではないか!
まず、第5試合で組まれたアジアタッグ選手権は、
ご存知の通り”鉄板”カード。
真田聖也&征矢学vs関本大介&岡林裕二の顔合わせは、
世界中のどこに出しても、大受け間違いなしだろう。
結果的に、大日本コンビが二度目の王座奪取。
同時に、関本は年末の『世界最強タッグ決定リーグ戦』への出場をアピールした。
その一方で、このコンビはホームの大日本で開催中の
『最侠タッグリーグ』にもエントリーしているから、
ベルトを巻いたその足で後楽園ホールへ直行。
こちらの公式戦でも、勝利をあげている。
また、個人的に嬉しかったのは、今年8月、ZERO1の『火祭り』リーグ戦で
悲願の初優勝を達成した関本が、その勲章である”火祭り刀”を携えて、
全日本のリングに登場してきたこと。
団体交流、対抗戦が頻繁に行なわれている昨今にあって、
あれはあれ、これはこれという感覚で、
他団体での実績や勲章をなかったことにするケースも多い。
そういうプライドも大切だと思うが、狭い日本のプロレス界である。
他団体であげた実績を見て見ぬ振りというのは、逆に無理があると思う。
それを思うと、しっかりと火祭り刀を携えてきた関本、
それを容認したZERO1、
その実績を煽りⅤで紹介した全日本の姿勢には好感が持てる。
第6試合の世界ジュニアヘビー級選手権(KAIvsケニー・オメガ)は、
20分43秒、クロイツ・ラスを決めたケニーが新王者となった。
開始から15分は、素晴らしい攻防だった。
周知の通り、ケニーは驚異の身体能力を持つし、パワーはヘビー級クラス。
一方、ヘビー級と肌を合わせる機会の多いKAIも、まったくパワー負けしていない。
ところが、KAIが必勝パターンに入ったあたりから、私の中で「?」が浮かんできた。
正直、それ以降の攻防は私的観点でいくと、NGとなる。
一言で表するなら、事故が起きてからでは手遅れだということ。
プロレスの見方は人それぞれだろうから、それ以上はあえて書かない。
無論、ケニーもKAIも日本のジュニアを代表する素晴らしい選手。
特に、今のジュニアの風潮に流されることなく、
レスリング重視で試合を組み立てるKAIへの期待は大きい。
期待が大きいからこそ、後半5分にNGを出しておく。
セミファイナルに組まれた世界タッグ選手権
(グレート・ムタ&KENSOvsダーク・オズ&ダーク・クエルボ)は、
予想以上に荒れた。
試合前に、ももいろクローバーZが”グレートクローバーZ”として登場。
ペイントを施して熱唱する、ももクロ改め、グレクロZファンから大歓声。
いったい、このファンの人たちはどこに潜んでいたの?という熱狂ぶり。
その間、KENSOはといえば、ご覧の通り、
アイドル登場にも浮かれることなく迷走…いや、瞑想中。
長い瞑想が終わると、私の姿を見つけて「ビチッと!」ポーズを決めてくれた。
では、ここからKENSO劇場、KENSO写真館の始まり始まり。
誤爆でムタの怒りを買い、毒霧、火炎攻撃、シャイニング・ウィザードまで食らい、
最後はオズドライバーに大の字となったKENSO。
グレクロZに介抱されるが、「お前たちのせいだ!」と逆ギレの八つ当たり。
再びムタの怒りを買いグリーンミストを浴びる。
またもやKENSOは孤独に大の字。
引き揚げてきたKENSOは、まず反省の弁。
「ボクはいま自己反省という孤独な作業をしようと思います」
一転して、ビチッ!と情熱が大爆発。
「必ず最強タッグでこの失敗を取り戻す! 以上!
全日本のためにも頑張りたい! 以上!」
だが、なかなか以上では終わらない。
カメラに向かって、深々と頭を下げる。
「すいませんでした…。最強タッグ、勝つぞ」
というわけで、ムタワールドさえ飲み込む、
KENSOワールドの恐ろしさ(おもしろさ?)を、まざまざと見せつけられた。
メインイベントの三冠ヘビー級選手権(諏訪魔vs秋山準)は凄まじい闘いとなった。
諏訪魔が求め続けるのは、かつて全盛期を誇った頃の全日本スタイル。
つまり、四天王プロレスである。
それを知っているからこそ、秋山は全身全霊で応えていく。
キャリア7年の王者を見下すこともなければ、スカすこともしない。
攻撃も受けも真正面から。
諏訪魔のラストライドにも音をあげない。
隙を見つけたら、とにかく痛烈な二―、十八番のエクスプロイダ―を連発。
二―パッドをずらして顔面に打ち込んだ二―には鬼気迫るものさえ感じた。
最後はタフネスで鳴らす諏訪魔を奥の手であるスターネスダストαで仕留めた。
30分を超える激闘、死闘である。
諏訪魔が敗れたことにより、全日本の至宝がすべて流失。
「すべてはオレの責任だ、申しわけない」と反省の弁を繰り返す諏訪魔。
だが、ベルトは失っても、諏訪魔は大切なものを手に入れたのではないか?
諏訪魔が理想とする、全日本スタイルを肌で感じ取ることができたのだ。
奇しくも、タッグで初めて秋山と肌を合わせたとき、中邑真輔はこう言っていた。
「組んだ瞬間、三沢さんを思い出しましたね。
あの人(秋山)は全日本スタイルをやれる最後の人でしょうね」
諏訪魔は、今年に入って、新日本の象徴的存在である永田裕志を二度体感した。
今度は、かつての全日本スタイルの象徴である秋山を体感した。
この二つに勝る体験、キャリアはなかなかないだろう。
発展途上の王者であった諏訪魔は、これからもっと強くなる。
次に、三冠を巻いたときには無敵の王者になっているかもしれない。
一方、全日本時代の忘れものである三冠のベルトを初めて手にした秋山。
試合後の秋山のコメントの中で、もっとも印象に残っているのが、この言葉。
「ボクらと同じ(ノアの)下の子よりも、ボクらと同じ匂いがするのはなんでだろうかなって
思いながらやっていました」
すなわち秋山が諏訪魔の姿勢、プロレス観を認めている証拠でもある。
中邑の言った最後の全日本スタイル…
それを純血な現・全日本の諏訪魔に継承していってもらいたい。
それにしても、永田同様に、諏訪魔を相手に30分以上も闘い抜いて
ピンピンしている秋山はやはりスゴイ男。
この2~3年で、いま一番コンディションがいいのではないか?
試合後、共同インタビューを終えた秋山に、
各社のカメラマンがベルトを持ったポーズ写真をリクエスト。
「こちら、お願いしまーす!」
こう言って目線をもらい、みんなシャッターを切るのだ。
さすがにデジカメなので、私はサイドからワンショット撮っただけで後ろに下がった。
すると、背中を向けていた私に新王者から一声。
「金沢さん、ブログ用に撮らなくていいんですか!?」
こりゃ、マイッタ!
三冠王者に名指しで言われたら、こんな光栄な話もないだろう(笑)。
急いでカメラを向けると、秋山はいい笑顔でポーズをとってくれた。
「まあ、頭のあたりは修正しておいてください」
そう言って、笑いながら引き揚げていった秋山。
みんな笑えない、洒落にならない。
でも、私は笑った。
たとえ、多少×××なろうとも、やっぱり秋山準は抜群にカッコイイ!
秋山準、42歳。
ここにもう一人、アンチエイジングを身を持って示した強い男がいる。
プロレス界の40代はバリバリに元気だ。
※追伸
メインを控えて、もの凄い数の報道陣がインタビュールームに集っていた。
そこに並んでいたのは、ももいろクローバーZ……
もとい、グレートクローバーZの5人娘。
おそらく素顔はとても可愛いのだろうから、もったいない話。
これでは、キョンシ―(※古すぎる!?)か、呪怨みたい(※すまない!)。
この時点で、この子たちのことをよく知らなかったのだが、 みんなが撮影しているので、私もシャッターを押してみた。
そのとき、マスコミ関係のMさんが、語りかけてきた。
「金沢さん、誰だか分かっているんですか?」
「え、知らない。だれ?」
「モーニング娘。ですよ(笑)」
「へぇー、じゃあ、中澤裕子・38歳もいるわけ?」
「それって、ムッチャ詳しいじゃないですか!」
おあとが、よろしいようで…。