『G1クライマックスⅩⅩⅠ』3戦目となった8・5後楽園ホール大会。
またも中邑真輔がやってのけた。
開幕戦の8・1福岡大会ではMVPのポテンシャルをこれでもか!と引き出し、
翌2日の同大会では小島聡を相手に肉を斬らせて骨を断つ戦法で当日のベストマッチを披露している。
そして、今度は天山広吉戦。
試合中、天山の十八番をすべて食らった中邑。
モンゴリアン・チョップ、マウンテンボム、ダイビング・ヘッドバット、大剛式バックドロップ、さらにアナコンダバイス…。
ところが、天山がアナコンダバイスで揺さぶりを掛け絞め上げるタイミングを利用して、
腕十字に切り返す中邑。
これで決まっても見どころ十分な試合。
だが、そこから天山は中邑の顔面へ、左肩へと頭突きを打ちこんだ。
もうホールはお祭り騒ぎ。
この後、天山の頭突きをナックルパンチで迎撃した中邑は、ダイビング・ボマイェから左の正調ボマイェ。
ドキドキハラハラものの試合を締めくくった。
終始、後楽園ホールは天山コール一色に染まっていた。
試合後も、敗れた天山に凄まじいばかりのコールが降り注ぐ。
見事な猛牛の復活ぶりを目の当たりに、泣いているファンの姿も目に付いた。
案の定、涙もろい”あべちゃん”(あべ由紀子さん=サムライTVキャスター)も涙ぐんでいた。
その気持ちは分かる。
私も初戦(vs後藤)で天山の復活ぶりを放送席から見ていて、涙がこぼれそうになった。
2000年代の前半、IWGP王座をめぐって、またG1公式戦でも激しい世代闘争を展開した両者。
ただし、あの当時はすべて天山が試合をリードしていた感があるし、
中邑はプロレスラーとしてまだ自分の型を持っていなかった。
ところが、今は中邑が試合をリードしている。
かつての井上亘戦といい、MVP戦といい、この天山戦といい、まさに中邑”再生”工場の趣である。
そういえば、昨年末の名古屋大会で、プロレスの職人・外道がこう言っていた。
「いま、ウチで一番いい試合をするのは真輔ですよ。その真ちゃんに(プロレス大賞で)なんの賞もないことが不思議だし、オレは悔しいんだよね!」
改めて、外道の言葉が頭をよぎった。
もうひとつ、明るい材料は試合後も天山の息が上がっていなかったこと。
それにプラスして素直なコメントが出てきたことも嬉しい。
私は天山に向かって、二つの質問をぶつけてみた。
「G1出場にあたって不安はなかったのか?」
「最終戦の小島戦のことは頭にあるのか?」
口下手な男だが、きっちりと返答をくれた。
「自分でもメチャクチャ不安やったしね。でも去年出られなかった悔しさと今年出られた喜びでいっぱいだし、お客さんの声援で目に見えない自分の持ってる以上のものが出せたし。リングに上がる以上は命を賭けて、このG1は突っ走って行きたいと思っています」
「言われんでも、小島はオレにとったら、人がなんと言おうと、あいつのことは頭に入ってる。最終戦ではどんな形であろうと、あいつとリング上で闘って、オレのすべてを叩きつけて呑み込んでやろうと思ってます」
天山の目はギラギラしていた。中邑”再生”工場は猛牛の心に熱い真っ赤な火を灯したようだ。
そんな天山とは裏腹に、いまだに片目がパッチリと開かないのが内藤哲也。
いったい、どうしてしまったのか?
ファン、マスコミからの異常な期待感に押しつぶされてしまったのか?
いやいや、内藤はそんなヤワなタマではないはずだ。
ひょうひょうとしながらも負けず嫌いで怖いもの知らずなところが、内藤の長所ではないか!
だが、この日も真壁刀義に完敗。
3試合の公式戦で一度もスターダスト・プレスを披露していないし、
予告した新技(レボルシオン?)も未公開。
唯一、真壁を担ぎあげたときに新技の予感がしたものの、結局かわされている。
悩み、葛藤するかのような内藤はノ―コメント
さあ、明日(6日)は内藤が絶大な人気を誇る名古屋での公式戦(vs矢野通)。
昨年、棚橋弘至と3度対戦し、1勝1敗1分けの戦績を残した愛知県体育館での試合。
内藤哲也、覚醒の地で、大きく片目を開けることができるだろうか?
他にも、おもしろい試合があった。
まず、鈴木みのるvsカール・アンダーソン。
マスコミ注目のアンダーソンは、鈴木を相手に大健闘。
鈴木のスリーパーが決まるか、アンダーソンのガンスタンが決まるか?
それをめぐっての虚々実々の駆け引きの末、鈴木がスリーパーからゴッチ式パイルドライバーで決めた。
ところで、文句なく今大会のベストマッチである中邑vs天山はセミ前の第7試合に組まれていた。
観客が大爆発したあとだけに、あとの選手はじつにやりずらい。
そこで、メインイベントを務めたのが、後藤洋央紀vs小島聡。
昨年のG1公式戦(最終戦)、年末の12・12名古屋大会と小島に2連敗を喫している後藤。
この試合は終盤で爆発した。
ラリアット合戦から、小島がトドメとばかり右の豪腕を振るったが後藤がかわす。
すかさず、裏・昇天から昇天・改を完璧に決めて3カウント。
勝者の後藤も、敗れた小島も見事にメインに相応しい闘いを披露したといっていいだろう。
2000人、超満員の観衆で埋まった後楽園ホール大会。
この日は、サムライTVのニアライブ中継が行なわれたが、
テレビ朝日『ワ―ルドプロレスリング』実況軍団も取材で勢ぞろい。
「俺プロ」実況三銃士はもちろんのこと、
いちばん若い2009年入社の三上大樹アナウンサーも会場に来ていた。
三上アナは毎週月曜日~金曜日の『ワイド!スクランブル』担当のため、
『ワープロ』担当から異動となっても不思議ではなかったのだが、本人の強い要望により『ワープロ』に残った。
いま現在の『ワールドプロレスリング』実況陣は、私が見てきた中でも過去最高に”プロレス愛”にあふれたメンバーだと思う。
というわけで、大会終了後、観客の引いたホールのベンチ席に腰かけ
何やら話し込んでいた古澤琢アナと吉野真治アナを発見。
なんとなく、微笑ましい光景だったので、カメラを向けてみた。
充実した大会を取材した直後だけにお二人とも、いい顔をしている。
◎追伸
明日(8月7日)、午後6時30分より後楽園ホールにて、ZERO1『火祭り』優勝決定戦を開催。
もうひとつの真夏の祭典、ぜひとも会場に足を運んでください!