8月1日&2日、福岡国際センターでの『G1クライマックス』開幕2連戦が終わった。
中2日の休養日を挟んで、本日(5日)の後楽園ホール大会から、また仕切り直しといった感もある。
読者のみなさん、ご指摘の通り、じつは1日の開幕戦は、
博多っ子にとって年に一度のお楽しみである『西日本大濠花火大会』ともろにバッティングしていた。
私も勉強不足だったのだが、事前に関係者から、「開幕戦より2戦目のチケットのほうが前売りはいいんですよ」と聞かされて多少、不思議に思っていた。
カード的には、両日とも甲乙つけがたい。
そういう場合、普通は開幕戦のほうが売れるというのが一般的な考え方。
ところが、現地に行ってみて、ようやくその理由が呑み込めた。
結果的には、両日とも4500人(主催者発表)を動員している。
これがもし1日の興行であったら、会場はほぼ満員に膨れ上がっていたことだろう。
ただし、福岡のプロレスファンにとっては、なんとも嬉しい2連戦となったのではないか?
ここで、少しばかり両大会を振りかえってみたい。
初日の8・1に関しては、現地から携帯電話でのブログ更新ということで、
いつものように深く書き込むことができないため、G1公式戦に限って感想を書かせてもらった。
そこで、読者のコメントのなかに「途中まではIWGPジュニアヘビー級選手権(飯伏幸太vs田口隆祐)が一番だったかな……」というのを発見した。
これには同感。
飯伏vs田口戦は、メインの永田裕志vs棚橋弘至、セミのMVPvs中邑真輔にも劣ることのない内容。
16分10秒の攻防は中身が濃く、私的観点でいくと、6・10後楽園ホール大会での『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア』優勝決定戦の同一カードより中身は濃かったと思う。
この試合の立役者は田口。とにかく集中力が途切れることがない。
序盤に放ったプリンス・デヴィットばりのノータッチ・トぺコンヒ―ロは本当に鮮やか。
飯伏にクリーンヒットして、田口本人はノ―ダメージでキレイに着地している。
エプロンサイドから鉄柵までの距離を計算して飛んだ見事な飛行だった。
それ以降も田口の攻めはじつにシビア。
狙うは飯伏のボディー。そこへの一点集中攻撃。
本当に、理にかなった攻め方だった。
ただ飛ぶだけでない田口のクレバーさが光る。
一方の飯伏もさすがだった。
1発の空中技、腰がキレイに回ったキックの一撃でその流れをガラリと変えてしまうのだ。
結局、田口の攻めはすべて必殺のどどんスズスロウン(※正式名称=ミラノ作・どどんスズスロウン/オイラのブログ並に長い!)への布石だった。
しかし、それを凌いだ飯伏が右ハイキック、ライガーボム、フェニックス・スプラッシュと大技3連打で畳みかけて田口を沈め、見事に王座Ⅴ2に成功した。
この両選手は本当に手が合う……というか合い始めた。
飯伏といえば、デヴィットというぐらい、飯伏vsデヴィットの攻防は名勝負数え唄と呼ばれつつあるが、
正直、私の認識は少し違ってきた。
ここ最近はやるたびにテンションがほんの少しずつ下降しているように映るのだ。
両者はここ2年間で、6度のシングルマッチを行ない、戦績は3勝3敗の五分。
せっかく生まれたライバルストーリーなのだから、ここは少し温めて間隔をおいてはどうだろうか?
いま現在の闘いを見るかぎる、私は飯伏vs田口に魅力を感じるし、
王者の飯伏にはそれこそ他のさまざまな新日系ジュニア戦士の挑戦を受けてもらいたい。
スーパージュニアで飯伏に土をつけたKUSHIDAも候補にあがってきていいし、
そろそろ本気になったタイガーマスク、獣神サンダーライガーといったベテラン勢の奮起にも期待したいところ。
そういえば、2010年の1・4東京ドームでノアの丸藤正道がIWGPジュニア王座を奪取して以来、
半年間で5度の防衛に成功したことがある。
新日本ジュニアの精鋭陣がことごとく敗れ去っていったわけだが、
反対にあれによってIWGPジュニアは完全に生き返った。
つまり、王者に集客力があれば、ベルトは輝くし、当然試合内容もよくなる。
それを丸藤が証明した格好なのである。
ゴールデンボーイ・飯伏も確実に集客力を持つ選手。
彼がベルトを保持することで、ジュニア戦線が活気付くなら、それはそれでよし。
ガチガチの新日本ファンにとっては悔しい現実かもしれないが、飯伏がより強く、より輝けば輝くほどベルトの価値は上がるし、それを新日本サイドが奪還したとき、ファンの喜びも二倍三倍になって返ってくると思う。
やっぱり、長くなってしまった!(笑)。
さて、8・2福岡大会のG1公式戦の中でベストマッチをひとつ上げるとすれば、中邑真輔vs小島聡だろう。
過去、1勝1敗1分けで迎えた3度目のシングル戦。
2005年3月のIWGP選手権(王者は小島)では60分フルタイムのドロー。
昨年のG1公式戦(両国国技館)では中邑が勝ち、年末の12月、IWGP選手権(大阪府立体育会館)では小島がリベンジをして初防衛に成功している。
まったくタイプが違うようで、なぜか噛み合う両者の攻防。
前半、得意のグラウンド(マットレスリング)で小島を舐めたような攻撃を仕掛けていった中邑。
必死に小島も応戦していく。
そこで中邑はニヤリと笑った。
この笑いは、「オレと寝技でやり合う気か?」にも見えるし、「意外とできるじゃん!」にも見える。
この試合でも両者は相手の一点に狙いを絞っていった。
もちろん中邑は小島の右腕を殺しにいくし、
対する小島は中邑の首を壊しにいった。
そして最後は、予想通りの展開へ。
小島の豪腕vs中邑の膝蹴り。
どちらがどちらの肉を斬らせて骨を断つのか!?
中邑の蹴りと小島のラリアットが交錯したシーンはまさしく名場面だった。
だが、打ち勝ったのは中邑。
振り向きざまのナックルパンチから、コーナー2段目に上り、ダイビング式ボマイェ。
続けて、狙いを定めて左の正調ボマイェ。
これにて決着。
それにしても、中邑の試合内容は相変わらず抜群だ。
前日のMVP戦では、MVPというレスラーを覚醒させたし、小島戦は鉄板と呼ばれながらも、その内容に変化、進化が見られた。
この求道者のようにストイックな若者は、つねに一段上を目指しているように感じる。
いつも結果と内容の両方を追い求め続けている。
その答えが、近くて遠いG1初制覇につながると信じているのだろう。
その一方で、覚醒したと思われたMVPをほとんど子ども扱いしながらスリーパーで絞め落とした鈴木みのるの容赦のない、性格の悪さも際立っていた(笑)。
かつて新生UWFに参戦し”黒い藤原”の異名をとったノ―マン・スマイリ―のコーチを受け、新日本道場から巣立ちWWEで世界を制したクリス・ベノワをこよなくリスペクトするMVPをまったく問題にしない鈴木。
率直なところ、ほんの少し前まで全日本マットに上がっていた鈴木とは違うような気がする。
こう書くと彼は否定するだろうが、私には違ってみえる。
生まれ故郷である新日本の水が合うというか、新日本独特のムードが鈴木の本来持ちうる殺気立ったムードをより際立たせているように映るのだ。
初戦の小島戦には敗れたものの、大げさではなく、12分40秒の試合中、12分間は鈴木が攻めていたような感覚である。遊び心を捨ててきた鈴木に穴を見つけるのは難しい。
それだけに、最終戦の8・14両国大会のBブロック公式戦は大一番といえる。
中邑真輔vs鈴木みのる。
今大会、私のイチ押しカードである。
ところで、福岡2連戦の2日目は、『サムライTV』の放送だった。
レギュラーの”キヨアナ”こと清野茂樹アナウンサーと解説の柴田惣一さん(東京スポーツ)に加えて、
私がゲスト解説として特別参戦している。
じつは、よくよく考えてみると『サムライTV』での新日本プロレス中継の解説席に座るのは、
初めてのような気がする。
過去に、新日本の別動隊ともいうべき蝶野正洋プロデュース興行『PREMIUM』や長州力プロデュ―スの『LOCK UP』、さらに『レッスルランド』中継はレギュラーで解説を務めていた。
また、2年前の8・30後楽園ホール大会のテレビ解説を務めているが、この大会は『邪道&外道、デビュー20周年興行』と銘打たれていたので、厳密にいうと、純粋な新日本本隊の興行とは多少違うような感覚も抱いた。
特に、キヨアナとは『LOCK UP』でコンビを組んで以来の現場実況だから、約4年ぶりとなる。
周知のとおり、超・新日本マニアとして知られる人物だけに、マニアックなやりとりが楽しかった。
たとえば、ジャイアント・バーナードvs高橋裕二郎のAブロック公式戦。
序盤、裕二郎がバーナードをグラウンドに誘い、優位に試合を進めていた。
「金沢さん、この高橋裕二郎の戦法は有効でしょうか?」
「まさに、あのカール・ゴッチさんの名言通りの攻めですよ。大男も寝かせてしまえば、ただの○○○だ!というね」
「なるほど! ”Big Man is Big Shit”ですね!?]
「ああ、英語で言ってもらってありがとうございます! 日本語だと汚い言葉になって言えませんからね(笑)」
マニアのかたならご存知だろう。ゴッチさんの名セリフ……つまり、「大男も寝かせてしまえば、単なる大きなウ×コと変わらない」という意味。でかいやつと闘うときは、寝技で攻めろということだ。
2日目の福岡大会も3時間のロング興行。
全試合終了後、キヨアナから「久しぶりに金沢さんと実況ができて楽しかったです」と言われた。
もちろん、私も楽しかった。
最後に、おまけで、また読者のコメントにお答えします。
初日の福岡大会の模様を写真付きでアップしていますが、これは後半戦のみの写真。
当日、私の解説担当が、前半戦の第1試合~第5試合までだったので、
それ以降は本部席横のリポーター席のイスに座って取材していました。
そこで携帯カメラで撮影しつつ、バックステージの取材もできた……そういうわけです。
さすがに、私も解説をしながら写真は撮れませんので(笑)。
それにしても、今回こそは短文でビチっとまとめるつもりが、例によってまた書き込んでしまいました。
また帝王から「長い!」というクレームの書き込みがあるかもなあ……(笑)。