昨日(22日)、4週間ぶりにサムライTV『Sアリーナ』に生出演した。

オファーをもらったのは18日、札幌駅から新千歳空港へ向かう途中だった。

そのときは、「ZERO1の『火祭り』 特集で、たぶんゲストはなしでいくと思います」という話だった。


 金曜『Sアリーナ』のMCは元井美貴さん (以下、愛称のモッキ―)。

彼女が昨年10月にMCデビューして以来、

何度も2人だけで番組を進行しているから、別に問題はない。


 いつも通り、午後9時ジャストにスカパー!のスタジオに入った。

ところが、自分(解説者)の控室前まできて、「アレ?」っと思った。

入口の貼紙に「金沢克彦様 澤田敦士様 」と書いてある。


「ああ、ゲストがいるんだな」という単純な驚きとともに、

「澤田敦士か? おもしろそうだなあ」という興味津々の気持ちも同時に沸いてきた。


 間もなく、モッキ―と澤田が楽屋に入ってきて、打ち合わせが始まった。

まずは初対面の挨拶。

それから前半の進行に関して、ディレクターとあれこれ確認作業をする。


 澤田はじっと台本に見入っていた。

後半のゲストコ―ナーの部分である。


 いろいろと質問事項が並んでいたが、特に打ち合わせはなし。

というのも、澤田が「素のままでいきますから」と一言いったから。

これが、しゃべりなれていないゲストの場合、「この質問にはどんな答えができるのか?」とか、

「これを聞いても大丈夫?」という確認作業をしておく必要がある。


 だが、ご存じのとおり、澤田は”暴言王”と名付けられているように口達者。

アドリブでいいというのだから、こちらも望むところ。

私もアドリブに関しては大いに自信ありだ。


 それになんといっても、私とは因縁浅からぬ小川直也の弟分というところにも興味をそそられる。

かといって、打ち合わせの段階で横柄な態度をとるわけでもないし、

彼は彼で自然体のままだった。


金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba


 番組の前半はスムーズに進行した。

つい数ヵ月前のことを考えると、モッキ―は本当にうまくなった。

多少の映像トラブルにもあわてることはないし、VTR中に冗談まで言えるようになった。


 Vあけの台本読みを一心不乱に練習していたモッキ―とは別人の様相。

「へえー、たのもしくなったなあ」と感心する。


 ところが、後半のゲストコーナーからガラリと空気が変わった。

今年の『火祭り』にNWAからの推薦枠で出場が決まった澤田。


 「崔とは決着がついている」


 「べつに優勝とか、大それたことは考えていない」


 「過去の実績がどうあれ、田中(将斗)なんか知らない」


 「大谷? 破壊王のあとを継いでやっている人間という感じ」


 「別ブロックでは知名度のある横綱(曙)だけには興味がある」


 「小川さんや破壊王がトップでやっていたころのゼロワンは凄かった。いまは興味がない」


 「自分はIGFのリングに集中している」


 と、まあ、こういった発言を繰り返す。

会話が成立しないし、噛み合わない。

質問もはぐらかされる。


 だんだん、イライラしてきた。

ただし、途中で爆発してしまうと、番組が最後まで成立しなくなる。


 おそらく、澤田もそれを分かっていて、こういう態度を決め込んでいたのだろう。

視聴者を怒らせ、私をイラつかせてこそ、自分の本領発揮と思っていたのではないか?

最初からそういう狙いがあったとしたら、この男は確信犯にしてかなりの知能犯である。


 もともと澤田は、本人の意図するところとは別にヒールを宿命付けられてしまった。

2008年の東スポ『プロレス大賞』の新人賞を受賞したことで、すでにヒール扱い。

新人賞獲得の一番の要因が「石井慧(2008北京五輪・柔道100kg超級金メダリスト)をIGFの会場に連れてきた功績」というのだから、それは周囲もヒートする。


 選考委員や他のマスコミの中にも「じゃあ、石井慧に新人賞をやればいい!」と憤る声が噴出した。

この件で澤田にはなんの罪もないのだが、もうこの時点でヒール。

 

 さらに、プロレス界においては、印象の悪いまま休業してしまった小川の弟分的存在ということで、小川のイメージを踏襲してしまった部分もあるし、周囲もそういう目で見てしまう。


 さて、このまま終わっていいものか?

番組のエンディングまで、残り2分となった。

ここでモッキ―が視聴者からのメッセージを2通読み上げた。


 どちらも、澤田に対する怒りに満ちたもの。

しかし、そんな声もまったく意に介さない澤田。


 台本上では、このあとゲストから視聴者へのメッセージでエンディングを迎える。

だが、このモヤモヤした空気のまま番組が終わったら、

なんのために私がこの場に座っているのか、まったく意味をなさないものとなってしまう。


 そう思った瞬間、プチンときた。


「いまの視聴者の声を聞いても、さっきから話を聞いていても、アンタ、プロレスを舐めてるよ!

ZERO1を舐めてる。(初戦で当たる)田中将斗にプロレスを教えてもらったほうがいい!」


「なんだと、テメー!」と立ち上がる澤田と睨み合いとなった。

不思議なことに、いい眼をしているなと思った。


 澤田は、私の左肩をバシッとド付いた。


「じぁあ、よく見てろよ!」


「ああ、しっかり実況してやるから。田中がアンタにプロレスを教えてくれるよ!」


 澤田が立ち去って、残り20秒でエンディング。

モッキ―もかなり驚いたと思うが、

「ゲストは澤田敦士選手でした、よい週末を!」と早口で強引にまとめた。

あくまで自分流でまとめてしまうモッキ―も、ある意味スゴイ(笑)。


 それにしても、おもしろい。

澤田敦士はいま日本マット界に現存する最大のヒールだと思う。

飯塚孝史のようにヒールキャラとして認められている存在とはまた次元が違って、

本当にファンから嫌われているのだ。


 厳しい見かたをするなら、プロレスに関してはまだまだ未熟な部分が多く目につく。

だからこそ、この嫌われっぷりを生かすも殺すも自分しだい。

「やっぱりこの程度か?」と思われるか、「こいつ、やるじゃないか!」と思わせるか、

澤田にとって今回の『火祭り』がその試金石となる。


 とにかく、澤田は私を怒らせた。

『火祭り』の放送席はより熱くなるだろうし、私の”楽しみ”がまたひとつ増えた。


 澤田敦士。しっかりとその名を頭にインプットさせてもらった!