ここ2年ほど会っていない友人がいる。彼とは15年来の友人関係だ。


最後に電話で話したのも1年半以上前だったような気がする。


 そうしたら、先だって突然に電話がきた。



「金沢さん、ご無沙汰しています。一言いっていいですか? GKの嘘つき!」


「なんだよ、いきなり」


「だって、家に遊びに来るって約束してたじゃないですか(笑)」


「それって、2年前の話じゃないか? 分かった、今年中に行きますよ」


 そうだった。そんな会話をしたのが最後だったような記憶がある。彼は某所に自宅を構えている。


海岸線のそばで、海までほんの100mほどの距離。年中、サーファーたちが集まるサーフィンのメッカ。


 ある時期がくると、ウミガメが産卵にやってくるとも言っていた。


本当に彼らしい。いつも自然と一体となって暮らしているのだ。


「ああ、そういえば、金沢さん、震災のときは大丈夫でした?」


「うん。家のマンションはなんか免震構造になっているらしいから、そんなに揺れなかったんだよ。キミのところは海が近いし、けっこう余震も多かったから大変だったんじゃないの?」


「そうなんですよ。あの日、揺れ始めて、なかなか収まらないし、これはもしかしたらマズイんじゃないかって。足首を回してシューズを履いて屈伸運動してたら……町内放送ですか、あれが聞こえてきてね。『津波の危険があります。すぐに高台へ避難してください』って。走りましたよ、高台まで。でも幸い、家の周辺は津波がこなかったんです」


 それにしても、この2年弱、彼はどんな生活を送ってきたのだろうか? とてもサーフィンをやるタイプと
は思えない。地引網を引くなら最高に似合いそうだけど(笑)。


「忙しくしてるんですよ、朝から夜中まで。朝から芝刈り、草刈りで、昼間こんなことやってら熱中症になっちゃいますよ。この辺は雉がいたり、タヌキがいたり、あとキョンもいますね。イノシシにはまだ出会ったことはないんですけど」


「キョンって、あの”八丈島のキョン”で有名な小さい鹿みたいなやつ?」


「そうですそうです! あと近くに防風林とかあるせいか、ときどきスズメバチがやって来る。そんなの家に巣を作られたらたまったものじゃないじゃないですか! でっかい網もって、スズメバチを見かけたら退治しますよ、もう必死にね(笑)」


「へえー、キミとスズメバチの異種格闘技戦だったら観に行きたいもんだね。それ、お金取れるよ(笑)。だけど、スズメバチって黒に反応するから、黒いシャツとか人の頭とか眼とかを狙ってくるんだよね?」


「そうです。だけど、頭は大丈夫。どうも最近薄くなってきたみたいなんで、刈り上げてほぼスキンヘッドに近い状態ですから(笑)。ところで、金沢さんは元気なんですか?  相変わらず忙しい?」


「いやあ、それがねえ、ブログ始めたんだよ」


「えっ、ブログですか!? ブログって……金沢さん言ってたじゃないですか、昔から。『オレはブログだけは絶対やらない。もの書きがタダで文章を書くのは、レスラーがノーギャラで試合をやるのと一緒だ』って」


「しっかし、よく覚えてるねえ(苦笑)」


「覚えてますよ! ああ、さすがだなあって。やっぱり信念もってる人は違うなあって。ちゃんと覚えてますよ。あの信念はどこへ行っちゃったんですか(笑)」


「だから、そこのところを初回で書いたから読んでみてよ。オレは気がついたの、お金にこだわるものじゃないって。遊び、趣味でやっていれば辛いとかそんなものはなにもないんだって」


「本当ですか(笑)。たしかに、ボクも毎日楽しくやってますけど……生きることは遊びであり趣味だと。収入ないけど、楽しいですもん、アッハッハハハ!」


 ひさしぶりに聞く、彼の豪快な笑い声。せっかくだから、彼の近況を絵で見てみたいし、みなさんにも見


せてあげたい。ただし、彼は昔からプライベートを晒すことだけは極端に嫌がっていた。


「ちょっと、最近の写真とかあったらメールで携帯電話に送ってよ。ブログ開設祝いということで。ついでにブログに載せてもいい?」


「ああ、いいですよ。今から撮って送りますから。へぇー、楽しみだなあ。じゃ、送りますね!」


 あれよあれよ、という展開だ。独身時代からプライベートを晒すことを嫌がり、普通の写真撮影さえ渋々

応じていた男なのに。それから、ものの5分もしないうちに1枚の写真が送られたきた。

 

金沢克彦オフィシャルブログ「プロレス留年生 ときめいたら不整脈!?」Powered by Ameba

 おお、元気そうだ!


この天真爛漫な笑顔はまさに彼らしい。


それにオデコに引っ掻きキズがあるところを見ると、昨日あたりスパーリングでもしたのだろう。 


 たしかに髪は薄いけど、ずいぶん若返って見えるなあ。


いや、ちょっと若すぎるような気もしてきた。


というより、幼く見えてしまうのは私の気のせいだろうか?


だけど、間違いなく”彼”なんだよなあ……。


 読者のみなさん、どう思いますか?