ARIANNE

「Komm, Susser Tod

甘き死よ、来たれ」

 

 

 

 

 

(シンジ)

誰も分かってくれないんだ。

(レイ)

何も分かっていなかったのね。

 

(シンジ)

嫌な事は何もない、

揺らぎの無い世界だと思っていたのに。

 

(レイ)

他人も、自分と同じだと

一人で思い込んでいたのね。

 

(シンジ)

裏切ったな。

僕の気持ちを裏切ったんだ!

 

(レイ)

初めから自分の勘違い。

勝手な思い込みにすぎないのに。

 

(シンジ)

みんな、僕をいらないんだ…

だから、みんな死んじゃえ。

 

(レイ)

では、その手は何の為にあるの?

 

(シンジ)

僕がいてもいなくても

誰も同じなんだ。変わらない…

だから、みんな死んじゃえ。

 

(レイ)

では、その心は何の為にあるの?

 

(シンジ)

むしろ、いない方がいいんだ…

だから、僕も死んじゃえ。

 

(レイ)

では、なぜここにいるの?

 

(シンジ)

ここにいても、いいの?

 

 

 

 

 

【無言】

 

 

 

 

 

 

- 中略 -

 

 

 

(ゲンドウ)

この時を、ただひたすら待ち続けていた。

ようやく会えたな、ユイ。

 

俺がそばにいると、

シンジを傷付けるだけだ。

 

だから、何もしない方が良い。

 

(ユイ)

シンジが怖かったのね。

 

(ゲンドウ)

自分が愛されているとは

信じられない。

私に、そんな資格はない。

 

(カヲル)

ただ、逃げているだけなんだ。

自分が傷つく前に

世界を拒絶している。

 

(ユイ)

人の間にある

形もなく、目にも見えないものが怖くて

心を閉じるしかなかったのね。

 

(ゲンドウ)

その報いが、この有様か。

すまなかったな、シンジ。

 

 

 

 

新世紀エヴァンゲリオン劇場版

Air / まごころを、君に

 

 

 

 

(ユイ)

幸せではないのね。

 

(シンジ)

その前に欲しいんだ。

僕に価値が欲しいんだ。

 

誰も僕を捨てない、

大事にしてくれるだけの。

 

 

【価値が欲しい】

 

 

(ユイ)

それは、あなた自身で

認めるしかないのよ。

自分の価値を。

 

 

【だから、エヴァに乗っている】

 

 

(シンジ)

僕には価値がない。

 

(アスカ)

生きていくだけの価値がない。

 

(レイ)

では、あなたは何?

 

(シンジ)

じゃあ、僕って何?

僕って何なんだ!

 

 

 

- 中略 -

 

 

 

(シンジ)

誰も僕の事なんか

分かってくれないんだ!

 

(アスカ)

あんたバカァ?

そんなの、当ったり前じゃん!

誰もあんたの事なんて、

分かんないわよ。

 

(ミサト)

あなたの事を労り、理解できるのは

あなた自身しかいないのよ。

 

(シンジ)

そんなこと言ったって、

自分が無いんだ。

 

分からないんだ!

大事にできる訳ないよ!

 

 

【不安なのよ】

 

 

(レイ)

やはり、不安なのよ。

 

(ミサト)

今のあなた。

 

(アスカ)

今のあなたの周りの人々。

 

(レイ)

今のあなたを取り巻く環境。

 

(ミサト)

どれも、ずっと永遠に

続くものではないわ。

 

(アスカ)

あなたの時間は、常に流れ

 

(レイ)

あなたの世界は、

変化の連続で、できている。

 

何よりも、あなたの心次第で

いつでも変わるものなのよ。

 

 

 

- 中略 -

 

 

 

(冬月)

君自身も、変わる事ができる。

 

(ゲンドウ)

お前をかたどっているのは、

おまえ自身の心と、

その周りの世界だからな。

 

(リツコ)

だって、これはあなたの世界ですもの。

 

(ミサト)

あなたが捉えている、現実の形なのよ。

 

 

 

【それが、現実】

 

 

 

 

 

(シンジ)

これは…何もない空間。

何もない世界。

僕のほかには、何もない世界。

 

僕が、よく分からなくなっていく…。

 

 

【何故】

 

 

(ユイ)

ここには、あなたしかいないからよ。

 

(シンジ)

僕しかいない、から?

 

(ユイ)

自分以外の存在が無いと

あなたは、自分の形が分からないから。

 

(シンジ)

自分の形…。

 

 

【自分のイメージ?】

 

 

(ミサト)

そう。他の人の形を見る事で

自分の形を知っている。

 

(アスカ)

他の人との壁を見る事で

自分の形をイメージしている。

 

(レイ)

あなたは、他の人がいないと

自分が見えないの。

 

(シンジ)

他の人がいるから、

自分がいられるんじゃないか。

 

一人は、どこまで行っても

一人じゃないか…

世界はみんな、僕だけだ。

 

(ミサト)

他人との違いを認識する事で

自分をかたどっているのね。

 

(レイ)

一番最初の他人は、母親。

 

(アスカ)

母親は、あなたとは違う人間なのよ。

 

(シンジ)

そう、僕は僕だ。

 

ただ、他の人たちが

僕の心の形を作っているのも

確かなんだ!

 

(ミサト)

そうよ、碇シンジ君。

 

(アスカ)

やっと分かったの?

 

バカシンジ!!

 

 

 

 

新世紀エヴァンゲリオン

第弐拾陸話:Bパート