今回は私の働くガールズバーの絶対エース、Aちゃんについて語りたい。
私は水商売の経験がなく、今のお店を未経験からスタートした。キャバやラウンジといったお店の経験は勿論ない。
だから他のお店がどうなのかは知らないが、Aちゃんはとにかく凄い。
Aちゃんは、一般人にしてはとても可愛らしい顔立ちをしていて、アイドルなんかにいそうな感じ。
歌も上手いし、話しも面白く、聞き上手なのでお酒好きな人は一緒に飲んでいたら楽しめそう。
多少の下ネタにも付き合ってくれるし、勉強熱心な彼女は、知っている歌のジャンルが広い。おじぃちゃん世代のお客さんとのデュエットも出来るし、お父さん世代、おじさんの少年時代の歌も広く網羅している。
自分が可愛いことを自覚していて、
更に自分が可愛いことを自覚している事が周りに伝わってしまっている所(“私可愛いです”というオーラがでてしまっている女が私は嫌いだ。可愛いけど"私なんて…”と消極的な方が私の目には可愛らしく映るが、Aちゃんに関しては最早そのままでもいいと思っている。)以外は非の打ち所がない女の子だ。
今のお店がオープンしてからかなりの月日が経ったのちに私は入店した。なのでそれまでのお店の雰囲気を私は知らない。
…私が入店して以降数ヶ月は、指名と場内の制度があるにも関わらず、機能していない普通のガールズバーだった。
その頃のAちゃんは、他の女の子と同じ様にお客さんとお話をして、週2〜3日いるかいないか。
お小遣いを稼ぐ学生の感覚でガールズバーに勤める女の子は多いが、彼女もそのうちの一人だった。
しかし何処で火がついたのか、彼女は突然変わり始めた。最近話題の有名キャバ嬢に影響を受けたのか、出勤日数は週6日に増え、着々と指名客を増やしていったのだ。
それまで指名制度があまり動いていないお店だったので、未経験の私は「ガールズバーでも指名って取れるんだ。キャバクラだけの話ではないのか。」と驚くばかり。
彼女の凄い所はここからだ。
なんと3ヶ月連続、毎日指名を3〜4本取り続けたのである。
時はちょうど飲食店が暇になる1、2、3月。
Aちゃんのおかげで毎日誰かしらがお店に足を運んでくれ、売上も成り立っていた。
お店は、あまり水商売のお店は流行らないと言われている街に位置するのだが、それ以降は常連さんもかなり増えた。
「せっかく来てくれたなら、楽しんで帰ってもらおう。」という彼女のサービス精神はプロさながらだ(だからと言ってもしもAちゃんがキャバクラに行ってしまう事があったら私は寂しい)。
ガールズバーで働く女の子としては中々珍しいタイプな気がする。
こんなに意識の高い女の子は非常に尊敬するが、凄すぎてわたしには到底真似できない。
彼女の凄い所はこれだけではない。
気遣いが人一倍できるのだ。
例をいくつか挙げよう。
ガールズバーに来るお客さんの中には、女の子に格好をつける人が多い。
お酒に対しても例外ではなく、そこまでお酒が強くなくても、ウイスキーをロック、しかもチェイサーなしで頼み、“俺、酒強いだろ、凄いだろ”感をアピールしてくる人もいる。
顔色が赤くなったり、呂律が回らなくなって来たりして、こちら側が「お水、いりますか?」と声を掛ける。
しかし変なプライドが邪魔をして、「お水ください」と弱々しく聞こえる返答は出来ない。
こんな時、"きっとお水が欲しいって言えないんだろうな”と誰よりも早く反応し、対応するのがAちゃんである。
今はこうして欲しいんだろうな、
今はこれをしてはいけないな、
こうしてあげたら喜ぶかな、
…と些細な気遣いが出来る頭の回転の速さと対応力にいつも驚かされるが、なんとAちゃんは働くスタッフ、キャスト陣に対しても優しい。
「〇〇ちゃん、歌が上手いんですよ!」とあまり積極的に話せない女の子に話を振って盛り上げたり、
「私、みんなの(女の子複数で接客中)ドリンク作って来ますよ」と言ってくれたりする。
…Aちゃんを褒めすぎてないか?
と、この文章を書いている途中で思い出した彼女の欠点があったので書いておこう。
それは、Aちゃんは優しすぎるということ。
そして、サービス精神が旺盛過ぎること。
これが彼女の長所であるが、時に裏目に出るときもあるのだ。
先に言っておくと、私の営業スタイルとAちゃんの営業スタイルは全く違う。
私の場合は、ここ(ガールズバーというある程度お金を使う所)に来ている以上1000円、2000円でグチグチ言うケチな人ではないだろうから、気前の良さそうなお客さんの時には沢山ドリンクやショットドリンクを頂く(ガールズバーには時給+インセンティブがあり、これらがそれに当たるので沢山頂けた方が働いている側としては嬉しい)。
勿論、“この人のタイプは私じゃないな”と言った場合はやらないし、逆に“この方なら大丈夫そう”と思ってドリンクを頂いた暁には全力で盛り上げる。
ガールズバーで働いている目的はやはり時給が良いからだし、稼げるなら沢山稼ぎたい。
これが私の営業スタイル。
しかしAちゃんはこうだ。
優しさが勝つあまり、お酒を煽れない(表現は悪いが他に見当たらないのでこう表現する)。
“申し訳ない”と思ってしまうらしい。
沢山煽ったらもう来てくれなくなるかな…
そんな事が頭をよぎってしまう。
「いや、大丈夫だろ。Aちゃんの可愛さと面白さならお客さんはまた来てくれるでしょ。」と私は思ってしまうのだが。
そしてサービス精神が旺盛過ぎるあまり、全てを会話でどうにかしてしまおうとする。
どういうことかと言うと、
私の場合、“しょっちゅう会ってるし、話すことないな”、“中々会話盛り上がらないな”と思ったら、カラオケや、ボードゲームなどに逃げて、一旦会話する事をやめる。
しかしAちゃんには「逃げる」発想がなく(カラオケやボードゲームをしたからといって、必ずしも逃げに走っている訳ではない。あくまで私のやり方のひとつだ。)、頑張って「会話」という手段で盛り上げようとするのだ。
それでも話が出来るからやはりAちゃんは凄いな、と関心するのだが。
会話に詰まっていそうな場面を見て、“そんなに頑張り過ぎてないでも…、たまにはカラオケやゲームでもして息抜きしたら?”と思っていた私は、最近カラオケやボードゲームしているAちゃんを見て、ほっとしたのは言うまでもない。
ここまでAちゃんについて長々と綴ってきたが、
Aちゃんの目の前に座るとついつい見てしまうし、目が合うと恥ずかしくて晒してしまう。
お店の従業員の打ち上げで飲んだ時、私の真正面にAちゃんが座り、私の口からは「可愛い」しか出てこなくなった話はまた別のお話し。
Aちゃんが真正面に立つと「可愛い」しか言えなくなるお客さんの気持ちが痛いほどわかる私は、このお店(今私が働いているガールズバー)のお客さんが全員Aちゃんのお客さんで埋まってしまえばいいのに、と思う今日この頃である。