一億総懺悔。1945年8月15日、皇居前広場 ©産経新聞。

 

 

8月16日、皇居前広場 ©昭和館デジタルアーカイブ。

 

by ChatGPT

 

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 アメリカとイランが「14項目の停戦合意」に署名し、19日にはイスラエルとレバノンのヒズボラとのあいだでも「停戦合意」が成立、20日現在、戦闘は止んでいるようです。まず、「14項目」について、高橋和夫氏の解説をご覧いただきましょう:

 

 

 

 

 高橋氏は、ホルムズ海峡に関する「第5項」を除いて全面的にイランの主張が通っており、一方的なイランの勝利だとしています。これは世界の大方の評価でしょう。そのホルムズ海峡にかんしても、米軍側の封鎖の即時解除、講和協議期間「60日間」以後におけるイランによる通過料徴収を否定しない、など大幅にイラン寄りの内容です。

 

 「14項目」について、アメリカ国内では当然に不満噴出。イランでは逆に、「これ、ホントなのか?」と疑う不満が出ているそうです。思うに、アメリカで不満が出るのは、トランプが「勝った!勝った!」と言っているから。「負けた負けた降伏だ」と認めたうえで、「忍ビ難キヲ忍ビ、堪ヘ難キヲ堪ヘ」と国民の労をねぎらい、それでも、イラン革命防衛隊がワシントンに進駐してくるのは阻止したぞ、イスラム革命憲法を押しつけられないですんだぞ、と言えば、アメリカ人はホワイトハウスの前にひれ伏して総懺悔するでしょう。

 

 高橋氏の解説のなかで注目されるのは、今回の戦争を通じて「ペルシャ湾岸諸国」に生じた変化です。湾岸諸国のなかで「アラブ首長国連邦(UAE)」だけは当初、アメリカ・イスラエルと共同歩調をとっていましたが、イランの「イスラム革命体制」が倒れないと見るや、サウジアラビアなど中立的態度の諸国に同調するようになりました。「ペルシャ湾岸諸国」は、①国内に米軍基地があるから安全だ、②米軍基地があるから攻撃されやすく危険だ、という2つの考えの間で動揺しています。もとは ① を信じる人が多かったのが、この戦争を通じて ② が有力になり、①② が拮抗している現状です。じっさいに戦争が始まってみると、イスラエルもアメリカも、基地を利用するだけで、便益を提供している湾岸諸国を守ってはくれなかった、という経験が大きなインパクトを与えているのです。いま湾岸諸国が向かおうとしているのは、イランとの友好関係を深める、パキスタン・トルコなどの中立的諸国との結束を作っていく、という方向です。

 

 しかし、同じことは、日本や韓国についても言えるはずです。日本と韓国は、中東を先例と見て、このさい ① を疑ってみる必要があるのではないか?

 

 

 

 

 米・イランの「合意項目」↑のなかでは、「第6項」「第10項」でイランに莫大な資金が入って来ることが注目されます。しかし、資金の使い道は多くて、イラン軍はミサイル基地を立て直さなくてはならない、ヒズボラにも復興資金を渡さなければならない、…などなどあって、イラン国民にまで恩恵がおよぶのかと疑う向きもあります。が、高橋氏の見立てでは、資金の行方とは別に、イランの通貨レートが改善されるのはまちがえないので、イラン国内のインフレが終息して国民生活は楽になるだろう。資金凍結の解除(第10項)も、国内企業・個人に直接恩恵をもたらす、と見ています。

 

 「14項目」は、ホルムズ海峡の「第5項」以外はみな、これから話し合うための原則の合意に過ぎないので、はたして最終合意に至るだろうか、〈合意外〉にいるイスラエルの動き次第では、戦闘停止さえ危ういのではないかと危惧する意見はたいへんに多いです(たとえば、↓下の動画での斎藤幸平氏)。しかし、高橋氏は、今回の合意でトランプ政権が舵を切って、親イスラエルから方向を変え始めた点にむしろ注目しています。和平の成立見通しについては、かなり楽観的、‥それでも、ホルムズ海峡の通行正常化までにはなお時間がかかると見ています。(6月21日、高橋氏の講演を聴きに行きましたが、和平成立・終戦の見通しに変わりはなく、すでに戦後の国際関係とイラン国内の動向に注意を集中しておられるようでした。)

 

 「第8項」の「核」については、「オバマ合意」〔2015年締結。2018年、トランプが一方的に破棄〕に戻るだけ、と見ています。トランプは、「濃縮ウランをアメリカに引き渡せ」という要求を引っ込めて、「オバマ合意」の線に戻る、ということです。そこが、この戦争をトランプの決定的「敗北」と見なす根拠になっています。

 

 しかし、《私見》では、これはむしろ、「非核」を求める世界世論から見れば巨きな前進と思われます。北朝鮮は「核」開発をやめない、合法的「核」保有国群の「核」軍拡はとどまることを知らない、イランも「核」保有に近づく、という八方ふさがりの状況から、たとえピンポイントでも風穴があいたことを意味するからです。現状維持だろうと、旧状復帰だろうと、イランが「とどまった」という事実は、私たちに希望を与えるものです。「被団協」など日本の反核諸団体は、どう評価しているでしょうか?

 

 ここでやや視点を変えて、あのトランプ政権が、いったいなぜこの「合意」に踏み切ったのか、という疑問に、今回は踏み込んでみたいと思います:

 

 

 

 

 「数分ごとに意見を変える」(麻生太郎)とまで言われる気まぐれ人間トランプですが、斎藤幸平氏に言わせると、彼は「乗り物」にすぎない。周りにいるいろいろな人間が、トランプという「からっぽな乗り物」を利用して自分の意見を言わせているだけだ、というわけです。

 

 その・トランプの「乗り手」のなかで、今回注目されるのは、イランとの交渉を総括しているバンス副大統領の役割です。バンスはもともとこの戦争に反対だった。アメリカ国内でもガソリン価格が上がり、戦争への不満を抑えるのも限界に達したので、トランプとしてもバンスのまとめた「合意」を容れざるをえなくなった、という見立てです。

 

 バンスは、トランプとは違って、それなりに自分の考えを持っている「ふつうの政治家」だと思われます。そこで、バンスの政策的・思想的背景を、「MEGA派」などという表層的な見方よりも、さらに掘り下げてみたい。すると現れるのは、①コミュニタリアン(共同体志向,伝統回帰)、②テック右派(テクノ・リバタリアン,新君主政)、という現在のアメリカ保守思想の2大潮流です。

 

 つまり、トランプ政権を、「気まぐれだ」「めちゃくちゃだ」「陰謀論だ」と決めつけるだけでは、予想も対策も打てないことになる。が、一見ただの「気まぐれ」に見えるトランプ政権にも、それなりの思想的バックボーンがある。それがどんなに奇怪なものであっても、そこから見て行かなければ、われわれは何もできない。ただ無力な非難を浴びせて終わるか、無原則な追随を続けることになってしまう。ということです。

 

 以下は、要約メモですが、文字起こしのように正確ではありません。私の主観も入っています。ので、読者各自で放送を聞いていただきたいと思います。以下は理解のための目安です:

 

 

 米国の3世界観。バンスの背景にある 【Ⅰ】共同体志向・反グローバリズム。【Ⅱ】テック右派・新君主制。

 【Ⅰ】【Ⅱ】に対抗する 【Ⅲ】民主社会主義。


 

 【Ⅰ】【Ⅱ】いずれも、第2次大戦後のアメリカで支配的だった「古典的自由主義(リベラリズム)」(新自由主義を含む)は欺瞞だったとして、アメリカ民主主義を牛耳る既成の権威的エリート層を攻撃し、アメリカ型議会民主主義の廃棄を主張する。

 

 

【Ⅰ】 共同体志向、リベラリズム批判。パトリック・デニーンオレン・キャス

 

 

パトリック・デニーン・ノートルダム大学教授 ©朝日

 

 

〇 パトリック・デニーン〔Patrick Deneen, 1964-〕バンスのブレイン)

 

 伝統的共同体(家族、地域、教会)への回帰を主張するコミュニタリアン。自由放任の「市場原理主義」を批判し、環境主義(エコロジー)を擁護し、地域内での生産・消費を勧奨する。

 

 デニーンによれば、第2次大戦後のアメリカでは、《冷戦》による共産主義への対抗から〈個人の自由の制限は共産主義への一歩だ〉と見なされ、過剰なリベラリズムに向かった。そこに、ベトナム反戦や公民権運動、アイデンティティ・マイノリティ(同性愛者など)の要求が重なって、1960年代以後のアメリカは、リベラル至上のイデオロギーが蔓延した。

 

 レーガン政権の市場原理主義(民営化など)すなわち「新自由主義」も、その根底には、個人を至上とするリベラリズムがある。その後、クリントンの民主党に政権交代したが、民主党は勿論リベラリズム。その後は、共和党と民主党が互いに分断しながら、実は、どちらもリベラリズム

 

 リベラリズムとは、それを担うのはエリートであり、結局のところ、エリートの支配にほかならない。共和党の経済的リベラリズム → 一部の人の権益のみを増進 → グローバリズム → 産業空洞化(ラストベルトの惨状)をもたらした。/ 民主党の文化的リベラリズム → グローバリズムと多様性(マイノリティ、移民:一部の人のための正しさ)→ 共同体と伝統的価値観を破壊、(マイノリティでも移民でもない)一般の人の生活は悪化した。

 

 そこで、デニーンは、これらのリベラリズムを「ぶち壊す」反エリート主義のトランプに期待する。


 デニーンは、「グローバリズム」に反対する。デニーンの保守主義から見れば、新自由主義も共産主義もグローバリズム。彼らは、人工的に国を作ったり変えたりする、個人を合理的理論で定義しようとする。これに対して保守主義は、経験を重んじ、理論的計画を嫌う。

 

 《冷戦》とリベラリズム偏重がはじまった 1955年当時、デニーンらの共同体志向は、「共産主義だ」と言われて排撃されたが、伝統的共同体(コミュニティ)の尊重こそ、共産主義にもっともよく対抗しうるものだ、と。

〇 共同体回帰論者には、他に、トランプに関税強化を提言したオレン・キャス
〔Oren M. Cass, 1983-〕がいる。関税強化は、経済効率を阻害し経済的合理性に反するが、そもそも人間は合理的なものではないとする。効率よりも、近隣とのつきあい、共同体的な絆、といった地域の伝統的価値を重んじるので、外国市場の影響は有害だと考える。

 

 

 しかし、デニーンらの考え方は、問題意識の部分では、〈環境主義の擁護〉〈地域経済の重視〉など、斎藤幸平氏らのコミュニズム(柄谷行人氏らも)と部分的に重なり合う。ただ、コミュニズムでは、帰るべきコミュニティは伝統的共同体である必要はない、むしろ自立した個人が自由に結び合う「アソシエーション」であるべきだと考える。


 斎藤:  デニーンが批判する「リベラリズム」とは、私に言わせれば、市場原理主義とそれに伴う資本主義のグローバル化。⇒ 格差拡大、先進国の産業空洞化、伝統的関係性(近所付き合い etc.)の崩壊。


      「リベラリズム」は、個人の自由を増進すれば、民主主義、科学、経済、すべてが発展し、多様性が開花し、伝統から解放されて皆が共存できるようになる、…というバラ色の進歩史観に立つ。資本主義のもとで、そのようなバラ色の世界が実現するという楽観論。民主党も共和党も、この考えを基本にしてきたが、いまや、資本主義そのものが行き詰ってきたので、楽観論ではどうにもならなくなった。
 

 

【Ⅱ】 テック右派 = 技術至上主義の自由カーティス・ヤーヴィンイーロン・マスクピーター・ティール

 

 

「暗黒啓蒙」思想家でソフトウェア技術者カーティス・ヤーヴィン

 

 

〇 カーティス・ヤーヴィン〔Curtis Guy Yarvin, 1973-〕 テック右派。「新君主制」を唱える:民主主義を否定し、一人のリーダーが CEO のように、国家を企業のようにトップダウンで運営すべきだとする。企業というものは CEO(君主)の一元化された権限によって、組織全体を一色に動機付けすることが可能になる → それが、効率性を生む。ところが国家は、民主主義のせいで非効率的になっている。∴ 国家も、企業のように非民主化して「君主制」に改めれば、効率的に運営されるようになる。ヤーヴィンは、現状のアメリカのような民主主義国家は、著しく非能率化している、として厳しく批判する。そして、政治的対立から切り離された取締役会のような組織が君主をチェックし、説明責任を果たすべき、とする。


  ヤーヴィンが推奨する「君主制」は世襲制を必須とする。現代の技術発展により、人工授精技術で君主の子を100人規模で増やすことができる。彼らから IQテストで、次の君主を選抜する。これにより、古い「君主制」の欠点は克服できる。


  少数エリートによる現在の国家官僚機構と・官僚的な「大聖堂」(メディア,大学,etc.)を除去して、効率的な「君主制」の組織で置き換えるべき。「大聖堂」を攻撃するバンスを、高く評価。


  このままでは未来は悪くなる一方だ、今の民主主義と官僚制は効率が悪いからやめるべき、トップダウンで一挙に改革すべき、という考え方。


 斎藤:  資本主義は、じつは全然民主的ではない、という真実を暴露している点は興味深い。「暗黒の啓蒙(ニック・ランド)」にも通ずる現状批判の部分は首肯できる。が、〈現状の民主主義はまやかしだから、本当の民主主義を!〉と言うのではなく、〈まやかしだから、民主主義そのものをやめてしまえ!〉という飛躍は、とんでもない誤り。民主主義体制では、少数エリートが未来を悪くしていく。だから君主制に変えよう、という飛躍。
 

 

パランティア社・ピーター・ティール会長の訪問を受けて喜ぶ

高市早苗首相、2026年3月5日、首相官邸。 ©朝日新聞。

 

 

〇 ピーター・ティール〔Peter Andreas Thiel, 1967-〕: 〈人間は他人の欲望を模倣する存在である。その究極が、競争だ。〉と言う。

 

  テクノ・リバタリアンであり、パランティア社の会長。トランプ,バンスに多額の献金をしている。西洋文明の根幹である理性的人間像や民主主義は偽善だと一蹴する。グレタ・トゥンベリ斎藤幸平のような環境活動家、また AI 反対派は、アンチ・キリスト〔「最後の審判」の前に現れて神に亡ぼされる悪の権化〕であり、除かなければならない、なぜなら彼らは、技術の進歩を最終局面で邪魔する。ティールのような・神に選ばれた選民が、ノアの方舟で火星に脱出しようとしているのを、邪魔するからだ、と。


  ティールのパランティア社は、AI を米軍に提供し、それが米軍を根底から変貌させ、イランの女子小学校爆撃などを引き起こしている。技術の世界は自分が主人で、競争はない。したがって、技術を企業主として支配する者は、究極の自由を享受する。

 

 つまり、ティールの考え方は「新君主制」と同じ。究極の自由を求めるがゆえに、数人の技術界の天才が世界を支配しようとする。選挙で選ばれてリーダーになるのではなく、最初から自分たちが支配者である。そして、「コミュニタリアン」の過去志向とは逆に、未来志向。


 ティールは、「自由と民主主義は両立しない。」として民主主義を否定し、自分たちの自由を最大限にしようとする。


 ヨーロッパでは、「選民ファシスト」として排撃され、ドイツでは、パランティアの技術を導入する州の計画に、違憲判決が出ている。


 ところが、日本の高市政権は、ティールを呼んで、パランティアの技術で「国家情報会議」をやろうとしている。


 斎藤:   資本主義が行き詰まっているからと言って、選民思想を持つ少数の人に改革を任せてしまうのは危険。結局は、彼らだけが自由になって、その他の人びとは切り捨てられることになる。


 「テクノ・リバタリアン」とは、究極の個人主義。一切の関係性から脱却しようとする。
 

 

◯ 【Ⅰ】【Ⅱ】の人びとから攻撃の的にされている「古典的自由主義」の陣営からの反論: フランシス・フクヤマ『リベラリズムへの不満』参照。

 

 

 

ゾーラン・マムダニ・ニューヨーク市長。©Wikimedia

 

 

【Ⅲ】 民主党の民主社会主義:マムダニ〔Zohran Kwame Mamdani, 1991-〕、サンダース、オカシオコルテス


 「テック右派」が、政治を、企業のように非民主的にしようとしているとすれば、社会主義は逆に、経済を民主化しようとする。

 

 斎藤:  マルクス主義も社会主義も、リベラリズムの枠には収まらない。〈個人は、孤立して生きることはできない〉、という考え方が根本にあるからだ。ただし、個人と個人のあいだの関係性は、「コミュニタリアン」の伝統的共同体である必要はない。「アソシエーション」であってよい。


 斎藤幸平氏は、「参政党」が自治体の水道事業などの民営化に反対している点を評価する。デニーンら「コミュニタリアン」のアメリカでの台頭にも注目している。(斎藤氏の愛読者である私は、首をかしげているのだが…)。なお、↓近著参照。

 

 

 

 

 

 

 最後に、表題の「停戦合意」に戻りますと:

 

〇 「14項目合意」とは、言い換えれば「無条件降伏」だとトランプは言っていますが、まさにしかり。アメリカの「無条件降伏」です。それにしても、なぜ〈負けた〉のか? ↑上の「報道1930」の時点では、バンスが賢かったからだ、とも思われましたが、実は物理的劣勢になって負けた。〈物量〉の劣勢で継戦できなくなった。という驚愕すべき事実が明らかになりつつあります。たとえば:

 

 

 

 

 6月21日高橋氏の講演でも、米・イスの迎撃ミサイル「弾切れ」を強調しておられました。イランに大きく譲歩してでも停戦に持ち込んだ理由が、「弾切れ」だとすれば、少なくとも米・イス側から全面戦争を再開することはありえない、と言えます。

 

 

 

 

 

 

ギトンの秘密部屋
 

 

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