ナスィーロル・モルク・モスク。イラン、ファールス州、シーラーズ市内。
Nasir al-Mulk Mosque. ©decorate-my-trip.com
前篇:
田中浩一郎氏は、高橋和夫氏と同じく外語大学のペルシャ語学科卒業生で、在イラン日本大使館などに勤務した後、現在は慶応義塾大学教授です。今年のイラン戦争勃発以来のニュース解説番組で、アメリカ追随・トランプ抱き着きの売国評論家たちとは一味違う論調が注目されています。重要なのは前篇↑のほうなので、要約は出しませんが、ぜひリンク先で聴いていただきたいと思います。結論は、このブログ記事のタイトルに尽きます。
後編:
後編↑の一部をメモしました↓が、正確ではありません。私の主観も入っています:
〇 いまや、「ソ連封じ込め」「共産中国封じ込め」どころではない。それを推進したいと願うのであれ、逆に批判の槍玉に挙げるのであれ、そんな理論に拘っていると遅れてしまう。
「ヨーロッパはロシアが支配すればよい。東アジアは中国が支配すればよい。中東からだけはアメリカは手を引かない」――が、トランプのドンロー主義。
《私見》 西半球の帝王でありつつ、東半球の(エネルギーの)カナメである中東を抑えることによって世界支配をつづけようという世界戦略か? とすると、高市が焦るのも無理はない。抱き着いてでも、トランプを自分の側に残したい。石破は「アジア版NATO」によって(日本が準盟主として)中国を包囲し牽制したいと、古いことを考えていた。インドのモディが反発したのは、アジアの「準覇権」をめぐる思わく。トランプのドンロー主義によって、日本はそれどころでなくなったが、高市は(おそらく自民党もみな)なお「中国包囲牽制」の枠組みにしがみついている。それが破綻した時に日本がどう出るかを、中ロは(とくに習近平は、なぜか極度に)警戒しているから、「新型軍国主義」批判を始めた。確かにその恐れも無くはない。中にいると見えないことが、外からは見えやすいこともある。歪められて見えている面があるとしても、外からの見方は貴重だ。
〇 トランプは、非イスラムであるインドとイスラエルで中東を両極から押さえ、アラブの中央にUAEを置くことによって中東を抑えるアウトソーシング戦略を考えている。インドとイスラエルの近さ、インドとUAEの近さは IMEC に集約されている 36:50。「IMEC」とは、オバマ政権が提唱した「indo,middle-east,europe - corridor」の略称。南アジア~ヨーロッパ大回廊。そこには、アラビア半島を縦断する陸路を含む。ホルムズ海峡でも紅海(バブエルマンデブ~スエズ)でもない物資輸送路を確保しようというアメリカ中心の世界戦略。∴イスラエルは乗り気。なぜなら、アラビア半島・産油諸国からのパイプラインをイスラエルに集めて、中東原油をイスラエルが支配することになるから。また、この構想の結節点にいるのが UAE(アラブ首長国連邦)。UAE は、アラブではあっても宗教色が無く、王権が権益を優先してイスラエルに附いている(「イスラム革命」以前のイランのパフレヴィー王権がアメリカに追随していたのと似ている)。UAEは、トルコ(現政権はイスラム復古政策に傾いている)に比べても、パレスチナ(ガザ、西岸)には無関心。アメリカは、イスラエル,UAE など非イスラム勢力で中東を支配する構想を持っており、それは、オバマ→トランプ第1次→バイデン→トランプ第2次政権をつらぬいている。
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《私見》 いま日本では、ホルムズ海峡閉鎖に起因する「石油危機」「ナフサ危機」にかんする議論が盛んですが、目先の事態の報知とその解決策をめぐる議論にとどまっています。(もちろん、それは当然のことだし必要でもあるのですが)
長期的に見れば、「危機」が日本に大きな影響を及ぼしている(これから及ぼす、と言うべきか)原因の一つは、日本の産業が、1970年代「第1次石油危機」以来の半世紀間に中東原油への依存を強めてしまった、中東原油の供給に依存する産業構造を造ってしまったことにあります。
たとえば、現在、もっとも先んじて危機を顕在化させているのは、シンナー,ペイント溶剤などの不足で、これらは、ナフサのなかでも、トルエン,キシレン等「重量ナフサ」から製造されます。不足しているナフサのなかでも、ごく少量(10%とも20%とも)しか採れない「重量ナフサ」なのです。しかも、政府が追加輸入に努めているアメリカ,ペルーなどのナフサは、「重量ナフサ」をほとんど含まない軽質品種です。
「オレフィン」「芳香族」といった基本的な化学用語を知らないニュース解説者が多いのには驚いています。昔の有機化学の初等教科書(おそらく今でも)には書いてあったことですが、ごくおおざっぱに言って、石油から採れるのは「パラフィン系」炭化水素と「オレフィン系」炭化水素で、石炭から採れるのは「芳香族」系炭化水素です。
「パラフィン系」炭化水素とは、こういうものです:
「オレフィン系」炭化水素とは、こういうものです↓。各種プラスチック容器の原料である「軽量ナフサ」は、「オレフィン系」炭化水素から誘導されます。例えば、エチレン⇒ポリエチレン,プロピレン⇒ポリプロピレン,ブタジエン⇒合成ゴム。原油の大部分は「パラフィン系」炭化水素ですが、「パラフィン系」炭化水素を「オレフィン系」炭化水素に変える技術を「クラッキング」といいます。日本の石油化学工業は、「クラッキング」技術と設備がすぐれているといわれます:
「芳香族」炭化水素とは、こういうものです↓。シンナーなどの主成分であるキシレン,トルエン等「重量ナフサ」は、こちらの仲間です。「パラフィン」「オレフィン」と比べて非常に複雑な特有の構造であることがお分かりでしょうか? この特有の「カメノコ」構造が電子を活性化するので、殺菌,爆発,発色,溶解など、さまざまなハデな作用を発揮します:
ところで、むかしの有機化学の教科書(高校・短大レベル)には、石油から採れるのは「パラフィン系」炭化水素と「オレフィン系」炭化水素で、石炭から採れるのは「芳香族」系炭化水素だと書いてありました。いま Wiki など見ると、原油を分留して後に残る重量成分には「芳香族」系炭化水素が多く含まれている、とあります。つまり、シンナーや有機溶剤の主成分であるトルエン,キシレン等「芳香族」は、むかしは石炭(乾留して都市ガスを放出した後に残るコールタール,ガス液)から造っていたが、今は、石油から作っている。この半世紀に石炭から石油への原料転換が行われて、極端な石油依存となった結果なのです。この発展が世界で最も進んだ国が日本だったのでしょう。(なお、「芳香族」系炭化水素からは、医薬品など多方面の重要な物質が合成されます)
以上を、ごくおおざっぱに図示すると、↓こうなるでしょう:
この石油危機が、進みすぎてしまった日本の産業構造の石油依存・中東依存を見直す機会になればと思っています。原料を石炭に戻すことも考えてよい。石炭と石灰岩からアセチレンを経て「オレフィン系」に変えることも実験室的にはできます(商業ベースに見合うかは解りませんが)。ただし、生産方法を変えるには多大の研究開発投資と設備投資を要しますから、当然に製品価格を押し上げます。企業が自然に進んでいくような方向ではない。政府が政策を立てて誘導しなければ無理でしょう。長期的な政策どころか、目先のナフサ不足さえ「目詰まりだ」「買占めだ」などと有りもしない話をでっちあげて隠ぺいする現政権では、およそ縁遠い話なのかもしれませんが。








