「切通し入口」をあとにして、小川に沿う舗装道路を下る。
まず、小川に筧 かけひ から水が出ている。水質の良い名水らしいが、「大刀洗い水」という名前が付いている。小川の名前も「大刀 たち 洗い川」。『鎌倉殿の 13人』を見ていた人には懐かしいのだそうだが、見ていないから、凄惨な暗殺のイメージしかない。
ともかく、この山は涌き水が豊富だ。近くに滝もあったが、撮り忘れた。
道からはずれた処に「やぐら」がある、との情報を見て寄ってみる↓。住宅地の駐車場の崖。
たしかに、崖いちめん、ものすごい数の「やぐら」が掘られているが、落石防止ネットがかかっていてよく見えない。おまけに、ネットに蔓草がからんでいるから、まもなく見えない史跡になってしまうだろう。
ここは、大字 おおあざ「十二所 じゅうにそ」、字 あざ「鑪 たたら ヶ谷」。「十二所」は、「鎌倉の秘境」とも言われた地域で、ホントか創作かわからないが、人身御供の風習があったという漫画も描かれている。
「十二所神社」↓。ここで休憩。見ていると、ときどき参拝者があるが、ただの観光客ではない。きちんと柏手を打っている。今も地元で尊崇を集めている社とわかる。
江戸時代の『相模風土記稿』によると、「十二所神社」は、同じ十二所にある時宗「光触寺」境内にあった熊野十二所権現社を移転して「村の鎮守とす」とある。「十二所」という地名の起こりは、この神社なのだろう。「光触寺」は、もとは真言宗の寺で比企ヶ谷〔鎌倉駅の東500m〕にあったが、1278年に十二所に移転し、その後、一遍に帰依したという。
『十二所権現社再建記』という古文書によると、「十二所神社」が「光触寺」境内から移転したのは、江戸時代の天保年間で、1838年に「明王院」〔十二所にある鎌倉将軍御願寺〕別所〔別当の意?〕が現在地に再建したという。明治6年に村社に列格されている。
「光触寺」と「明王院」も、寄ってみる価値のある古刹のようだ。今回気づかなかったのは残念だ。次の機会を期すとしよう。
奥には「やぐら」もある。↓左の境内社は「山の神」。右の「やぐら」内には2柱が祀られている。
「やぐら」内の2社は、「宇佐八幡」と「疱瘡神」だそうだ↓。この「やぐら」は、十二所神社がここに再建された天保時代のものだろうか? とすると、江戸時代(も後期)の「やぐら」だということになる。たしかに、山稜にある鎌倉時代の「やぐら」とは造りが違う(より精巧)。こういうのは「やぐら」とは言わないのかもしれない。
神社を出て、西の山陵へ向かう。稜線上の「天園ハイキングコース」に合流したい。
ホトトギス。
ノコンギクのようだ。
山に近づくと、また「やぐら」群が出現する。
イヌタデ。たまたまいっしょに写った雑草〔下の写真。濃い緑の葉〕は、カラムシのようだ。
サルノコシカケ。
この路は荒れている。あまり人が来ないのだろう。かなり古い木が路をふさいでいる。
尾根上に達した!「天園ハイキングコース」に合流。「十二所神社」から、YAMAP のコースタイムでは 10分だが、ずいぶん時間がかかってしまった。
コースを、画面の奥へまっすぐに行くと瑞泉寺だが、ここまでに時間をとりすぎた。瑞泉寺はまたの機会として、うしろ方向へ「天園」をめざそう。
稜線にも「やぐら」は多い。↓この「やぐら」は中に五輪塔がある。
なかば土砂で埋まってしまった「やぐら」も多い。説明も何もないから、たいていの人は気づかずに通り過ぎるだろう。
とにかく「やぐら」のオンパレードだ。墓碑も石塔も無いが、名だたる人の遺骸が埋められていたのはまちがいがない。被葬者の名が伝わっているのは、武士よりも遊行者や高級な芸人が多いようだ。大部分の武士は、名も功績も忘れられて、これらの穴の中に、ただ眠っているのだ。
「天台山」のピークに近づくころ、「貝吹き地蔵」という標示が眼に入った。標示に従ってコース脇の高まりに登ってみると、壊れて修復された跡のある石仏が1体:
現地には説明がないので、何の地蔵か判らない。帰ってから調べてみると、1333年の新田義貞の鎌倉攻めと北条得宗家滅亡に関係する地蔵と判明。くわしくは、こちらを。自害した北条高時らの首を持って逃げ回っていた家来に、地蔵菩薩が現れて法螺貝を吹き、埋葬場所の「やぐら」へ導いたという伝説の地蔵。その、北条一門を葬った「北条首やぐら」も、この近くにあるとのこと。
なんとも迂闊なことに、私は「北条首やぐら」に気づかず通り過ぎていた。これでは、人のことは言えない。
タイムレコード 20251028 [無印は気圧高度]
(1)から - 1015「朝夷奈切通し」入口(鎌倉側)[43mGPS]1022 - 1034「やぐら」(鑪ヶ谷)[120mGPS]1042 - 1055「十二所神社」[40mGPS]1122 - 1155「瑞泉寺」分岐[93mGPS]1201 - 1225「貝吹き地蔵」[129mGPS]1230 - 1235「天台山」肩を通過[131m] - (3)へつづく 。




































