ウクライナ“国民総動員”の徹底抗戦に
ロシア軍苦戦。
首都陥落しても“戦争は終わらない”…
『軍事ジャーナリスト 井上和彦さん:
24日の開戦時には、ロシアが一方的に弾道ミサイルや巡航ミサイルなどで攻撃をかけてきた。それにより、ロシアが優勢な立場に立ったというふうに思われましたが、当然ながら14~15万におよぶウクライナ軍の地上軍は温存されているわけで、これを全部なしにするというのは不可能です。
そんな中で、地上戦に引き込まれるロシア軍ですが、頼みとしている戦車部隊を大々的に展開できないんです。 しかも、ウクライナ軍は当然ながらどの地域にどういう川があって、どういう土地になっているかというのを全部わかっています。
地図を見ながら作戦を進めるロシア軍と、地図を見なくても頭の中に入っているウクライナ軍とでは当然ながら戦い方が違います。生まれ故郷と生まれ故郷でない異郷の地である戦いとでは、大きく変わってきます。
ウクライナ軍は、ロシア軍がどのような形で入ってくるのかということを予想して、特に首都キエフというのは国境から90キロぐらいのところですから、どれぐらいのスピードで来るのかというのは予想していた。
ロシアにとっては一番の障害であったドニエプル川というのが真ん中に流れていますけど、東側から入っても、ドニエプル川を越えることができない。だからロシア軍は、北から入って首都キエフを包囲する。要するに、兵糧攻めのような形で首都キエフを包囲して戦いに臨もうとしている。しかし、市街戦というのは地上の大平原での戦いとは違います。〔都市には、隠れる建物や塀がたくさんあるし、住民は知り尽くしている。侵入した敵は、どこから撃たれるかわからない。何重にも防護のある日本の城に攻め込むのと変らないわけです。――ギトン註〕
けさ新しい情報が入りまして、難民もポーランドの国境へ向かっているんですが、ポーランド在住のウクライナ人もポーランドの国境を越えて志願兵としてウクライナに入っている。徹底抗戦で自分たちも戦うという意志の共鳴で入っている。 さらに、銃をもらうために住民が列をなしている。 こういった状況でウクライナ人が「どんなことがあっても国を占領されない」意志があります。 さらには、ロシアがチェチェン共和国で対策に当たっていた対テロ特殊部隊をどうやらウクライナに投入していると。 つまり、それだけロシアが苦戦しているという現れです。〔プーチンの「核使用発言」も同じく、単なる焦りの現われ。実際には、ロシアの核体勢は、アメリカの衛星偵察によれば、まったく動いていません。――ギトン註〕
キエフという首都が陥落する、ロシア軍に占領される、ということが例え起こったとしても、これは象徴的な意味でしかないです。
例えば、東西に分かれて大規模な世界戦争のような形になって首都が落ちるというのは、確かに象徴的な部分はありますが、結論から申し上げてゼレンスキー大統領がウクライナの降伏を宣言しないかぎり、戦いは終わらない。 ウクライナ人の方々の祖国を守るという決意が残り続けるかぎり、ウクライナは降伏をしない。つまり、この戦いは終わらないと。
しかもそのバックには、NATO諸国がウクライナを支援している。 もっと言えば、世界中を味方につけたウクライナの戦い方というのは、できるだけ早く終息させたいロシアとは、かなり精神的にも違ってくる〔孤立無援のロシアと違って、格段に余裕がある。――ギトン註〕と思います。』
イヴァン・アイヴァゾフスキー 「ドニエプル河の流氷」
3/1付(英時間)最新の情勢です。↓
『ロシア軍は3月1日午後、首都キーウ(キエフ)のテレビ塔を砲撃した。ウクライナの緊急事態当局が確認した。ロシア軍は同日、首都キーウ(キエフ)に向けて長さ60キロ以上の装甲車や戦車の車列を進めている。
これに先立ちロシア軍は同日朝には、第二都市ハルキウ(ハリコフ)の中心部を巡航ミサイルで攻撃した。地方政府の行政庁舎やオペラハウスなどが破壊されたという。
国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官は、ロシアの侵攻について捜査に着手したい考えを示した。
ウクライナ当局によると、1日午後にロシア軍の爆撃でキーウのテレビ塔が砲撃され、5人の死者が確認されている。テレビ塔は民間運営。この攻撃で複数の放送が中断されたほか、近くにあるホロコースト慰霊地が破壊された。
ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相は、ロシアによる「心理攻撃」の危険を警告。国防相はフェイスブックで、ロシアがまず通信を妨げた後、「ウクライナの政治・軍事幹部が降伏に合意したなど、フェイクニュースをとてつもなく大量に拡散する」だろうと述べた。
「そのフェイクニュースの裏付けとして、ロシアは署名文書やねつ造ビデオを公表するだろう。これはすべて、うそだ」
と、国防相は書いた。
ロシア軍は同日午前8時(日本時間午後3時)ごろ、ウクライナ北東部の主要都市ハルキウの自由広場に撃ち込んだという。市当局によると、子供1人を含む少なくとも20人が負傷した。少なくとも1人が死亡したもようで、当局は事態を確認中という。ウクライナ国家緊急事態サービスが公表した監視カメラ映像では、ミサイルが地方行政庁舎を直撃し、巨大な火の玉が上がる様子が見える。
国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は28日夜、ウクライナで戦争犯罪あるいは人道に対する罪が行われたと考える「合理的根拠」があると判断していると述べ、ロシアの侵攻について捜査に着手したい考えを示した。
ハルキウは2月28日にも人口密集地が標的になった。現地当局によると、子供3人を含む9人の民間人が死亡した。ソーシャルメディアに投稿された動画から、一部の防衛アナリストは、市街地に対する典型的なクラスター爆弾攻撃だと指摘している。
ゼレンスキー大統領は同日夜の演説で、「ハルキウには軍事施設はない」として、ハルキウへのロシアの攻撃は「明らかに戦争犯罪だ」と非難した。
「これは偶発的に単発のミサイルが落ちたわけではなく、市民を意図的に攻撃し破壊したのだと、数十人の目撃者証言が証明している。どこに向かって撃っているか、ロシア側は承知していた」
と、ゼレンスキー氏は述べた。
ロシアはこれまで、攻撃対象は軍事施設のみで、住宅地は攻撃していないと主張している。
ウクライナ北部のチェルニヒウでは、ショッピングセンターが破壊され、黒煙が上がっている様子が撮影された。
最新の衛星写真によると、1日には長さ64キロに至るロシア軍の装甲車や戦車の車列が首都キーウに向けて向かっている。ただし、英国防省によると、この車列は過去24時間でほとんど前進していない。【追記】その後のニュースでは、ウクライナ人による抵抗のほかに、①凍土の雪融けで道路が泥沼化して前進できなくなっている(侵入前から予想されていた)。②ロシア軍部隊にサボタージュ(燃料タンクに穴をあける、その他故障を言い訳にして停止する等)が広がっている。との見方が伝えられています。
スイス・ジュネーヴで1日に開かれた国連軍縮会議では、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相が、アメリカは欧州に配備している核兵器をすべて撤収すべき時だと述べた。外相はさらに、旧ソヴィエト連邦の地域で、西側が軍事施設を作ってはならないとも述べた。
西側がラヴロフ外相の渡航を禁止したため、外相は事前録画のメッセージを提出した。外相の発言が始まると、ウクライナに始まり、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、カナダ、欧州連合(EU)などの大使が次々と退席した。』
聖ソフィア修道院からキエフ市街の眺望
それでは、私たちは、何をすればよいのか?
高見に立って、シロウト臭い「論評」を果てしなく書いてみたり、
「朝から晩までテレビがウクライナだらけだ」とブータレてみたり、
日本はもっと軍備を増やせ、核兵器を持てと粋がってみたり、……
そんなことをしているヒマがあったら、日本のインターネット・ブロガーにはぜひやってもらいたいことがある。中国版ツイッター「微博(ウェイポー)」に参入して、ウクライナ国民の抵抗のありさまを、写真と、漢字の多い日本語で訴えるのだ。いま中国の首脳部は慎重を決め込んでいるし、共産党系のメディアはプーチンの味方をしているが、一般の人々は圧倒的にウクライナの味方に傾いている。それもそのはず、彼らは小さい時から、「反侵略」教育を受けてきたのだから、……。
14億の中国人民を「反戦」側に引き込むことができれば、今度東アジアで何か起きた時には、どれだけ力になるかわからない。憲法を改正するより米軍を増強するより、ずっとずっと日本の防衛に資するにちがいない。
もちろん、アメリカ人も同じことを考えるだろう。現に、米英政府・大使館は、「微博」で “宣伝戦” をくりひろげている。大使館の情報拡散力には限りがあるし、残念ながら一般の欧米人ブロガーは、漢字を書くことができない。韓国でも最近は漢字を使わなくなった。英語のわかる中国人は、「14億」の一割もいるだろうか? しかし、日本人は漢字が書けるのだ。世界で、日本人だけが、自国語で中国の一般の人に呼びかけることができる。
これは、日本人だけが果たせる使命だ!
『27日に在中国ウクライナ大使館が、中国版ツイッターのウェイボー公式アカウントで、ウクライナの抗戦意志を誇示して反戦世論を訴えた。中国のネットユーザーは「ゼレンスキー(ウクライナ大統領)立派だ、ウクライナがんばれ」などのコメントで支持を示した。投稿から24時間で「いいね」2万7000件、コメント4900件、シェア210件を記録した。
ウクライナが中国SNSでロシアの侵攻に対抗して行う反戦運動が熱い。これに先立ちウクライナは16日の「団結の日」を迎え在中大使館で行った国旗掲揚式の動画を公式ウェイボーに上げた。ゼレンスキー大統領がSNSで国民の抗戦意識を鼓舞するように、在中大使館も連日反戦声明を出している。22日にはウェイボーでハッシュタグ「#ウクライナウェイボー声明発表」が検索1位になったほどだ。25日には「ウクライナの独立主権と領土保全に向け戦う武装部隊を支持してほしい」として元、ドル、ポンド、ユーロでの募金口座を公示した。中国国内の良心勢力に向けた感性外交だ。
北京に駐在する欧州連合(EU)加盟国も足並みを合わせた。在中EU代表団は25日、「中国を含む国際社会はロシアにすぐ独立主権国であるウクライナでの違法覇権的な軍事侵略を即時中止することを要求する」としてウクライナ国旗を持つ団体写真を公式ウェイボーに上げた。ウクライナ国旗に照明を当てた代表所の写真も「#StandWithUkraine」というハッシュタグとともに投稿した。
米国はさらに踏み込んだ。ウェイボー代表写真を「#UNITED WITH UKRAINE」というハッシュタグを付けたウクライナ国旗に変えた。国連安保理でロシア糾弾決議案採択がロシアの拒否権で失敗に終わった26日には、トーマスグリーンフィールド駐国連大使の発言を中国語に翻訳し投稿した。「ロシアは決議を拒否できるが私たちの声、真相、私たちの原則、ウクライナ人民、国連憲章、責任を拒否できない」として国際社会の声を中国のネットユーザーに知らせた。
このように「ウェイボー世論戦」が激しい。ロシアと北大西洋条約機構(NATO)の両是両非論を取る中国当局の立場を迂回して14億人の中国人に直接アプローチする方法だ。
政治指導者も先頭に立った。25日に英国のジョンソン首相はウェイボーアカウントに中国語で「ウクライナは数十年間自由と民主を享有した自らの運命を選択する権利を持つ国。私たちと全世界はこのような自由が圧殺されるよう手をこまねかない」と投稿した。
中国のネットユーザーは新しい現象に反応した。ジョンソン首相の15日の投稿にはこれまで「プーチン大統領はウェイボーアカウントがなくこの投稿を見られず、中国語もわからない」など7万件以上のコメントがつけられ大きな関心が寄せられた。
国連はウェイボー公式アカウントに6万件以上の投稿を上げ活発なウェイボー外交を繰り広げている。ウクライナ情勢が悪化した18日からだけで30件余りの関連消息を上げた。
中国当局は西欧の「ウェイボー外交戦」をハイブリッド戦争の一環だと規定した。中国芸術研究院の孫佳山副院長は「現代公共外交は『認知戦』と結びついた。それ自体が現代の戦争の新しいスタイル。ウクライナ情勢ですでにリアルに現れた」と28日付環球時報のコラムで主張した。在中ウクライナ大使館がウェイボーにあげた反戦声明も「認知戦」の一環だと主張した形だ。孫副院長は「彼らが中国で急進的感情と理念を扇動し、国際的には中国のイメージ失墜を試みる。このような新しいイデオロギー戦略がすでに効果を上げている。警戒すべきだ」と主張した。』
そうは言っても、中国政府と党機関は、削除、閲覧制限などの措置には出ていない。おそらく今後も出られないだろう。プーチンのウクライナ侵略は、中国政府が人々に教えてきた「侵略者の反人民的行動」そのものなのだから。
なお、2月25日段階で中国の王毅外相は、「各国の主権・領土の保全を尊重・保障」するよう求める中国の立場はウクライナにも適用される、とする一方で、「NATOが5度にわたって東方に拡大している状況下で、ロシアの安全保障に関する正当な要求を重視」すべきだと、ロシアの立場を支持。「ウクライナ問題の推移には複雑な歴史的経緯がある。ウクライナは東西交流の架け橋で、大国間の対立の前線にしてはならない。」との「基本的立場」を表明しました。3/1の電話協議で、ウクライナの外相が、中国の停戦仲介を期待すると述べたのに対しても、王毅外相は、「地域の安全は軍事を拡大して実現してはならない」と答えました。【追記】これは、ロシアのみならず、NATO加入を求めるウクライナをも批判するニュアンスに聞こえます。
共産党指導部の一部では、「(ウクライナ東部を独立させた)ロシアは、『偽満州国』をつくったかつての日本と同じだ。」とロシアを批判する声も上がっており、【追記】↑上の電話協議でも、王毅外相は、「中国はウクライナとロシアの衝突勃発を痛惜(deeply grieved)する」「民間人が負傷したことをたいへん遺憾(highly concerned)に思う」と述べています。中国政府としては、ウクライナへの部分的同情は表明しつつも(民間人にだけ同情するが、死者が出ていることは認めない)、どちらの肩も持たない態度を持していると見られます。〔日本人と同じで、中国人も「ケンカ両成敗」が好きだね~www〕
【追記】中国の仲介的役割に期待するあまり、中国が仲介を承諾した(しそうだ)とか、ロシアに停戦圧力をかけている(かけるだろう)といったマスコミ記事が出始めましたが、内容をよく分析してみると、そんなことはない。先走ったフライング記事と思われます。
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