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軌跡2 (仏岩から大畠山まで)


 

 

 「仏岩」の烽火(のろし)台から、「四尾連道(しびれみち)」は断崖の山腹を、昇りぎみにトラバースしてゆく。涸れ沢に橋がかかっている。

 

 


四尾連峠側から振り返って撮影

 

 

 橋の手前に、光背のついた石仏がおかれている。ひしゃげた顔つきの観音菩薩だが、明治期のものらしい。「廃仏毀釈」時代の建立か? 安丸良夫『神々の明治維新』,岩波新書 によると、この甲斐南部から身延山にかけては、明治政府の「廃仏令」と「文明開化」政策にもかかわらず、集団オルギーのような俗信的な仏教集会が民衆のあいだで盛行していた。政府の神祇官・文部官僚が憤激している。

 

 献金者として名を連ねた村人たちは、新たな支配者に対抗するなかで、信仰の対象を見いだしていったのだろうか。

 

 


左は「観世音菩薩」に氏名・金額が並ぶ。

右は、観音像の左右に「明治□三年/

十二?月七日/施?主 山…」と読める
 

 

 その次の涸れ沢は、橋と取り付きの路が崩壊している。下部を大きく巻いて行かなければならないが、迂回路はよく整備されていて問題ない。

 

 

 

 

 「四尾連(しびれ)」は、ショートカットして近道を行く。

 

 ここは、崩壊を迂回するために高巻き路が作られているのだが、高巻きの頂点から、その上の尾根路まで、ほんの 20メートル程度なのだ。ここからまた崩壊の向う側に下って、四尾連峠まで行って来る気にはならない。往き帰りともに、ショートカットを利用してしまった。

 

 



 あっというまに、上の路に出てしまう。

 

 


 

 

 「大畠山」1117.6m に到着。頂上にマイクロウェーブの中継所がある。このへんから、カラマツが増える。

 

 

 

 

 三角点標石もある。最近、標示板が大きく入れ替わったようだ。リピーター諸氏が話していた。

 

 急に行きかう人が増えた。四尾連(しびれ)にマイカーを駐めて、蛾ヶ岳釈迦ヶ岳方面をめざすハイカーが主流なのだろう。

 

 

 

 

 「大畠山」から先は、1050mと1100mのあいだを上がり下がりする平坦な路だ。カラマツ林の中の爽快なハイキング。

 

 

 

 

 ダンコウバイ。明るいから、きれいに写る。

 

 

 

 

 木の間から四尾連湖」が見える↓。

 

 

 

 

 “蟻の戸渡り”のような痩せ尾根。ピークとピークのあいだを、尾根がつないでくれるだけありがたい。しかし、こんな路を、馬は恐がらなかったろうか? 昔はもっと幅があったのかもしれない。雨雪で両側が侵食して狭くなってしまったのだろう。

 

 

 

 

 また「四尾連湖」が見える。さっきより遠くなっている。

 

 

 

 

 (ひる)ヶ岳」が、行く手に見えてきた 

 

 

 

 

 

【つづく】   


 

  

 

 

タイムレコード 20210327
 (2)から  - 1200崩壊 - 1211ショートカット1216 - 1235大畠山・西登り口 - 1240大畠山1256 - 1258東登り口 - 1351西肩峠1353 - (4)に続く。