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 韓国の日刊紙『中央日報』に掲載された記事と、ダイジェストをお届けします。


  1月20日(現地時間)バイデン米政権発足当日、エヴァン・メディロス元ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が、『中央日報』のオンライン・インタビューに応じた。

 メディロス氏は、オバマ政権時代に、ホワイトハウスでアジア政策を主導したブレインのひとり。NSCアジア上級部長として、オバマ政権の代表戦略「アジア太平洋再均衡戦略」を設計した。中国の浮上に対応し、アジア太平洋地域に米国の力量を大挙投入するという再均衡戦略は、その後トランプ政権でも継承され、バイデン政権にも続いている。オバマ政権で副大統領だったバイデン氏とも協働した。2013年11月バイデン副大統領訪韓のさいには、事前の議題調整などのため訪韓している。

 現在、米国ジョージタウン大学教授。

 

 

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韓国・現政権への好意と注文

 

 メディロス氏によれば、バイデン氏の外交安保チームは、北朝鮮と韓国の双方をよく知る「韓半島(朝鮮半島)のベテラン」。特に、北朝鮮については「経験が多く、幻想を持っていない」。「北朝鮮が非核化に関心があるということに、深い疑問を持っている。」

 

 バイデン政権は、「オバマ政権時代の(対朝)圧迫戦略に進むことも、対話しようと言ってトランプ政策に同調することもない」。

 

 バイデン・チームは、韓国の文在寅大統領も、彼のまわりの進歩派も、よく知っている。バイデン政権は、韓国の現政権と「持続可能な関係を作ることができるだろう」。しかし、文政権とのあいだで、「北朝鮮に対する見方を調整する(=文政権が考えを変える)必要がある」。
 

 

 

 

 

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https://japanese.joins.com/JArticle/274723

 



バイデンチームは北朝鮮と何周もした。2010年の「天安艦事件」〔韓国の哨戒艦「天安」が、北朝鮮の魚雷攻撃で撃沈された事件〕以来だ。北朝鮮がどのように動き、挑発を利用して譲歩を取り付け、興味を引くのか知っている。だから罠(trap)に落ちることはない。オバマ政権末期に、韓国政府と協力して強力な対朝圧迫政策を行なったのも彼らだ。

 しかし、今の北朝鮮の核問題は、別の位置に来ている。北朝鮮が直面している状況も変わった。人道的支援が正しいと判断すればするだろう。しかし、それを、対話に戻るサインと誤解してはならない。バイデンチームは、北朝鮮が非核化に関心があるということに、とても深く疑問を持っている(deeply,deeply doubtful that North Korea has any interest in denuclearization.)』

――韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、バイデン政権トランプ氏の対朝政策を継承することを望んでいるが。

バイデンチームには、北朝鮮問題に深い経験のある官僚が多い。彼らは韓米関係も熟知している。文大統領の見方とその周辺の進歩派もよく知っている。バイデンチームは、文在寅チームと持続可能な関係を改めて作ることができると考えている。』

――トランプ時代に南北米国間のメッセンジャーの役割をしていた鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府・国家安保室長が外相に指名された。

『実に興味深いドラマが繰り広げられるだろう。』

バイデン政権はカート・キャンベル、トニー・ブリンケン、ジェイク・サリバンなど経験的に、理論的に、実務的に韓米関係の重要性をよく知っている人々が布陣している。彼らはトランプとは違う。トランプは、一人だけのアジェンダで韓米同盟関係を殺し、韓半島から米軍を撤退させようとした。だから、北朝鮮の核の対話もした。防衛費分担に関する攻撃的な要求もした。バイデン政権では、このすべてが消える。

 ただ、韓米は北朝鮮に対する見方を調整する必要がある。十分解決できる問題だと思う。韓国が懸念しなければならないことはあまりない。』

――対中政策にどのような変化があるか。

ブリンケン国務長官内定者は、マイク・ポンペオではない。彼はけんか腰ではない。彼は対立的な人ではない。米国の価値を深く信じるが、理念的ではない。単純に、中国と対立するよりも真摯に競うと見ている。

 1つ目は外交・安全保障分野で、台湾・新疆・香港の問題と中国軍の近代化の問題がある。2つ目は経済だ。中国政府が自国の経済を運営する方式、米国・韓国などの外国企業を差別するやり方に関する問題だ。3つ目は技術だ。中国が違法な手段を使って、未来の核心技術を支配しようとすることと、米国が持つ技術的優位性を維持し、新しい技術で優位を占める問題だ。4つ目は価値の問題だ。ルールや規範、制度への信頼、政治的市民の自由と民主主義のような基本的価値をめぐり競うことになるだろう。』

『世界の多くの国が中国を最大の貿易相手国や主要貿易パートナーとしていることを十分に理解する。だから米中のどちらかを選択するように強要するのは話にならない。

 民主主義サミットは、中国やロシア叩きではない。ここに参加するからと言って、米中間で選択することにはならない。私たちが信じている価値観と原則を擁護することだ。繁栄と安全、法治主義と紛争の平和的解決、国際法の尊重のようなものだ。韓国がその成功の証だ。』

――バイデン大統領が就任演説で伝えようとした重要なメッセージは何だと考えるか。

『根本的に寛容と統合に関するメッセージだった。米国人7400万人が自分に投票しなかったが、それでも彼らを代表すると述べた。バイデン大統領の目標は、米国という国が建国された基本的な理想を具体化することだ。』

 

 

 

 

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Angelica KAUFFMAN

cupid and ganymede (1784)

 

 

 

 バイデン政権は、韓国の文政権が望むように、北朝鮮に対してトランプの路線を継承するだろうか? ――という『中央日報』の質問に対して、メディロス氏は、直接の言及を避ける言い方で、

 

 バイデン政権の外交安保チームは、「韓米関係を熟知している。文大統領とその周辺の進歩派もよく知っている。」「トランプは、一人だけのアジェンダで韓米同盟関係を殺し、韓半島から米軍を撤退させようとした。だから、北朝鮮の核の対話もした。防衛費分担に関する攻撃的な要求もした。バイデン政権では、このすべてが消える。」「韓米は北朝鮮に対する見方を調整する必要がある。十分解決できる問題だと思う。」と答えています。

 これは、質問の事項に対して、限りなく否定的な答えでしょう。

 バイデン政権は、韓国に対して、「米軍を引き揚げるぞ」と脅したり、法外な駐留費用の負担を押しつけたりはしない。その代り、北朝鮮には厳しく対処するし、かんたんに首脳会談に応じたりはしないから、韓国も、そのつもりで付いて来てほしい。《われわれは経験豊富なベテランなのだから、きみたちは今までとは見方を変えて、われわれといっしょに走りなさい》。われわれは、きみたちのことだって、よく分かっている。きみたちとの意見の違いは、「十分解決できる問題だ(きみたちが考えを変えるだろう)」――という自信を見せた発言というべきです。

 文在寅大統領は、バイデン政権の発足にぶつけるかのように、トランプ時代に南北米国間のメッセンジャーの役割をしていた鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長を、外交部長官に抜擢しました。チョン・ウィヨン氏は、平壌で金正恩委員長と面会して「非核化の意志がある」との発言を引き出し、これをワシントンのトランプのもとに持参して、《第1回米朝会談》の引き金となった立役者です。

 この韓国外相交替の効果について、メディロス氏は、「実に興味深いドラマが繰り広げられるだろう」という意味深長な言い方をしています。文大統領の思惑通りにはならないだろう。よほどの紆余曲折が予想される、ということでしょう。

 しかし、メディロス氏の言うように、バイデン政権文在寅政権のあいだに、民主主義、進歩派、人権尊重という共通の基盤があることは、まちがえありません。その点では、日本の(安倍右翼の息がかかった)菅政権などより、文政権のほうが、対米関係ではよほど有利な立場にあります。必要なのは、文政権と与党が、北朝鮮の体制に対する見方を改めることであり、とくに、北朝鮮住民の人権に目をつぶらないことです。

 この点では、金正恩独裁政権の機嫌を取るよりも、アメリカと足並みをそろえたほうが、日本の右翼政権や中国の習政権に対して独自の存在を主張でき、けっきょく東アジアの中で、東西いずれにも依存しない固有の立場を固めることができると思うのですが。。。

 

 

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