『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972)より
全裸で協力者たちを迎える
聖フランチェスコ(Graham Faulkner)
アッシジのフランチェスコ
太陽の歌
古イタリア語より ヘルマン・ヘッセ独訳
至高の神、全能なる、慈悲深き主よ、
賞讃と名誉と栄光とすべての祝福はあなたのもの、
あなたにのみ相応(ふさわ)しい、至高の主よ、
何人(なんぴと)もあなたの名を呼ぶには価(あたい)せぬ。
あなたは讃えられている、主よ、
あなたのすべての被造物とともに、
とりわけわれらの主なる兄弟、
日輪の星とともに、
それは昼をもたらしわれらを照らす
麗(うるわ)しきもの、大いなる輝きを放つ
あなたの似姿である、至高の主よ。
あなたは讃えられている、主よ、
姉妹なる月と星々、
あなたが天に造られた明るく貴く美しきそれらとともに。
あなたは讃えられている、主よ、
われらの兄弟たる風をもって、
空気、雲、好天、またあらゆる気象をもって、
それらによりあなたは被造物に保護を与える。
あなたは讃えられている、主よ、
われらの姉妹である水をもって、
それはまことに有用、謙虚にしてかけがえなく、純潔なもの。
あなたは讃えられている、主よ、
われらの兄弟である火をもって、
あなたは火により夜を明るくする、
それは美しきもの、喜びを授けてくれる強大なるもの。
あなたは讃えられている、主よ、
われらの姉妹にして母なる大地をもって、
それはわれらを維持し統べるもの
さまざまの果実、色とりどりの草花をもたらす。
あなたは讃えられている、主よ、
あなたの愛がために赦しを行なう者のゆえに、
無念の陰鬱に堪え、
平和のうちにやすらう者に幸いあれ、なぜなら
彼らは至高者たるあなたに王位を授けられたのだから。
あなたは讃えられている、主よ、
肉体の死、われらの兄弟のゆえに、
生ける何人(なんびと)も死を避けえない、
主への大罪のうちに死する者に禍いあれ、
主のご意思のままに死する者には幸いあれ、なぜならこの
二番目の死は何の苦しみも与えることがない。
主を誉め主を讃え主に感謝せよ、
大いなる謙虚さをもって主に仕えよ!
『ブラザー・サン シスター・ムーン』(1972)より
アッシジへの帰還
グレアム・フォークナー/フランチェスコ
ドノヴァン/作詞・作曲
フランコ・ゼフェレッリ/監督
「【あらすじ】 イタリアのアッシジに住む商人の一人息子として生まれたフランチェスコは、陽気でいたずらだった。18歳のとき、戦争が起こり、フランチェスコは戦場におもむいた。だが、凄惨な戦いに敗れ、熱病に冒されて帰ってくると何週間もベッドに横たわり、生死の間をさまよった。
ある朝、窓辺の小鳥の声に眼を覚ました。無心に手をさしのべながら近づき、屋根の上にでた彼は、小鳥の後について手をはばたかせた。まるで大空へ飛びたつかのようだった。その向こうには、野や山が開けていた。フランチェスコに自分でも気づかないほどの大きな変化が起きていた。ある日、果樹園で休んでいた彼に、美しい娘クレアが近づいてきた。『あなたは気が変という噂よ。小鳥のように歌い、蝶を追い花を見ているから。でも私には、狂っていたのは戦争にいく前だと思えるわ』
彼は自然の中で生きものの素晴らしさを悟った。次第に彼の眼は自分の周りの人間を見つめだした。働く者、老いた者、病いに苦しむ者……教会の中には富める人々が、外には貧しいながら懸命に祈る人々がいた。あまりにも大きなへだたり、神はこれを許すのだろうか。彼は『NO!』と叫ばずにはいられなかった。家に帰ったフランチェスコは店にある高価な布を窓から投げだした。激怒した父親は彼をひきずり、領事の裁きを乞うたが、何もならず、フランチェスコは着ている服を脱ぎ、両親に返した。『もうあなたの息子ではない。人間に大切なのは富ではなく心です。これからはキリストのように乞食になります』
裸になり城門を出た彼は、太陽に向かって両腕を広げながら野に向かった。雪が降り、真っ白におおわれた野に一人、フランチェスコはサン・ダミアノ教会建設をめざしていた。十字軍の英雄として帰ってきた幼友達ベルナルドは、その勇気ある姿に強く打たれ、彼に協力を申し出た。また昔の親友たちも次々と加わっていった。髪を切ったクレアも参加し、貧しいが素朴な人々が集まるようになった。
だが司教の陰謀によってサン・ダミアノ教会は焼かれ、仲間の一人が殺されるに及んで、フランチェスコは自ら問うのだった。私のしたことが間違いだったのか? 彼は仲間たちとローマ法廷に請願に行くことにした。やっとのことでローマ法王に謁見が許され、キリスト教の腐敗を説いた。法王はいたく心を動かされ、彼に跪いた。貧しい人々から聖人と呼ばれたフランチェスコは、故郷に帰った。彼にはやはりここが一番よかった。鳥が歌い、小川がささやいていた。彼は兄なる太陽や姉なる月のように安らかで鳥やけだもののように幸せだった。」
……というわけで、鳴り物のほうも、“太陽の歌”特集をしてみたいと思います。しかし、“太陽”でいちばん有名な「オー・ソレ・ミオ」は、前にヴェネチアのゴンドラのところで出してしまったんですよね。残念。。。 その次に定評のあるのは、↓これでしょうかね?
『Here Comes The Sun』
ビートルズ
from the album Abbey Road
↓有名ではないけど、わかりやすくていい歌曲ですよ。なんだ、くだらない、単純な曲だ。。。 と思うかもしれませんが、スカルラッティが 19歳の時に作曲したオペラで、しかもこれが2作目のオペラだというんですから、ばかにできません。
アレッサンドロ・スカルラッティ『オペラ 愛の誠』より
アリア「陽はすでにガンジスから」
野々村彩乃/ソプラノ
締めは、このさい中国の旧国歌『東方紅』:東方紅 太陽昇 中国出了箇 毛沢東―――で。。。 という趣向もあったんですが、前回に続いて毎度のように毛主席を讃えるのもなんですから、ここはシューベルトの合唱曲でしめやかに‥‥
シューベルト『太陽のうた(An die Sonne)』D439
J.P.ウーツ/作詩
ピエール・ファビアン=ルバティ/指揮
シュール・アルシス
「 太陽に寄せて
おお太陽、世界の女王、
我らの暗き生を照らす
おお太陽、世界の女王、
我らの暗き地球を照らし
明るい尊厳で満たす;
ひとつの御手の崇高な奇跡、
かの天の穹窿を張り
星々を蒔いた御手の!
こんにちなお私は汝の輝きを見る、
こんにちなお自然はその花冠の中から
私に笑いかける。
色とりどりの羽もつ鳥たちの群れは
明日になれば私に歌わなくなる
森の中でも野原でも。
私はもうすぐ死ぬのがわかる、
私の命は草のように枯れてゆく、
やつれきった木の葉のように。
誰が知ろう、もうまもなく突如として
至高の神の言葉が私に響いて来ることを:
『塵に還れ!』と。」
ギトン訳
11月
いますべてのものが身を被い色を失おうとする、
霧深い日々が不安と心配ごとを孵化させている、
嵐にすさむ夜が過ぎて朝の氷が軋る、
別離が泣く、世界は死に満たされている。
御身(おんみ)もまた死ぬことを習え、身を委ねることを、
死ぬことができる、それは聖なる智恵。
死に備えよ――さすれば御身は攫(さら)われるように
一段高き生に歩み入るであろう。
よかったらギトンのブログへ⇒:
ギトンのあ~いえばこーゆー記
こちらは自撮り写真帖⇒:
ギトンの Galerie de Tableau