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山梨県北杜市、明野・浄居寺

 



       目覚めて

 しずかな時が大儀そうに忍んで来た、
 嵐はみな深くしずまっていた、
 どんな痛みもすっかり色あせて
 わが魂は眠りこんでいた。

 然し今夜わたしは目覚めてしまった
 漆黒の闇の奥底で、
 暗い夜に囲まれて。
 永い麻痺しきった休息のなかから
 いきなり引き揚げられて
 わたしの心臓は不安におびえて脈打った、
 もうとっくに癒えたはずの古傷から
 過ぎ去った情念が輝かしく
 あらたに解き放たれて燃えあがる。
 魂よ、目覚めてしまったのか?
 眠りと憩いはもう終りか?
 見よ、わが魂は新たな苦悩と
 新たな暴風を望んで確乎と立つ
 魂は震え、そして哄笑する
 夜空のすべての星々、
 己れの幸せな仲間たちに。




 

アルヴォ・ペルト『ヌンク・ディミティス』
ノエル・エディソン/指揮
エローラ・フェスティヴァル・シンガーズ

 


 こんばぬわ(∋.∈)っ

 しばらくごぶさたしておりました‥‥ とにかく暑くて、しんどくて...

 というわけで、気分だけでも爽やかな高原の涼気を:↓


 

アルヴォ・ペルト『My Heart's in the Highlands(わが心は高原に)』
Robert Burns (1759-1796)/詞

 



「My Heart's in the Highlands" is a 1789 poem by the Scottish poet Robert Burns (1759 - 1796).


    My Heart's in the Highlands

 My heart's in the Highlands, my heart is not here,
 My heart's in the Highlands a-chasing the deer -
 A-chasing the wild deer, and following the roe;
 My heart's in the Highlands, wherever I go.
 Farewell to the Highlands, farewell to the North
 The birth place of Valour, the country of Worth;
 Wherever I wander, wherever I rove,
 The hills of the Highlands for ever I love.

 Farewell to the mountains high cover'd with snow;
 Farewell to the straths and green valleys below;
 Farewell to the forrests and wild-hanging woods;
 Farwell to the torrents and loud-pouring floods.
 My heart's in the Highlands, my heart is not here,
 My heart's in the Highlands a-chasing the deer
 Chasing the wild deer, and following the roe;
 My heart's in the Highlands, whereever I go.


     わが心は高原に

 わが心は高原に、遠く去り、
 わが心は高原に、鹿を狩り――
 野鹿狩り、麕鹿
(のろじか)を追いかけて;
 わが心は高原に、わが身いづくへ去ろうとも。
 さらば高原よ、さらば北の国、
 かけがえなきわがふるさとの国;
 地の果てまでさまよい行くとも、
 永遠
(とわ)に愛す、たたなづくその丘々。

 さらば聳ゆる冠雪の山々、
 さらば幅広き緑の河谷;
 さらば険しき山裾の森よ;
 さらば音立てて溢るる激流。
 わが心は高原に、遠く去り、
 わが心は高原に、鹿を狩り――
 野鹿狩り、麕鹿を追いかけて;
 わが心は高原に、わが身いづくへ去ろうとも。」

youtube credit;拙訳
 



 歌詞だけ見てると、諏訪とか、美ヶ原とか、‥‥長野県の高原と平野に似ているような。だいぶちがうのかな? スコットランド。もっと起伏が大きくて、雄大なんでしょうね。

 

 



 



 アルヴォ・ペルトをつづけましょう。この手のコーラスでは、ペルトの盟友ポール・ヒリアーの解釈が、いちばん定評ですね。そして、エストニアン・ヴォイス。この純なソウルは、ほかの国では真似できないようです。

 

アルヴォ・ペルト『マニフィカート』
ポール・ヒリアー/指揮
エストニア・フィルハーモニー室内合唱団

 


 おつぎは、ペルトと並ぶ“現代叙情派”のスティーヴ・ライヒ。

 ↓ヒグラシみたいだ?

 そうかもしれない。。。 来日して聞いた蝉の声にヒントを得たのかもしれないです。

 「アメリカ人にとっては、蝉の声は騒音でしかない」と書いてるブロガーさんがいましたが、‥‥いやどうしてどうして、アメリカにだっていろんな人がいます。

 日本人以上の日本通、東洋人以上の東洋通、……めずらしくないのでは? 「オリエンタリズム」なんて言って揶揄ってると、時代遅れになりますよ!←


 

スティーヴ・ライヒ『ニューヨーク・カウンター・ポイント』
ペーテル・シューチ/クラリネット

 



      夜 に

 ぼくがときどき目を覚ましてしまうのは、
 いま一隻の船が冷たい夜をつらぬいて
 海をさまよい岸辺を指してはしるとき、
 その渚
(なぎさ)への熱い憧れがぼくを焼きつくすとき。
 それはいま、船乗りとて知らぬ地に
 紅い極光が人知れず燃えるとき。
 いま美しき未知の女の腕が
 愛を求めて白く暖かいクッションを抱きしめるとき。
 それは、ぼくの親友となる定めのひとりの男が
 いま遠くの海で暗い最期を遂げるとき。
 そして、かつてぼくには会ったことのない母が
 いま夢の中でぼくの名を呼んでいる、そうした考えが浮かぶときなのだ。



 

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