小説・詩ランキング

 


アムステルダムのポルトガル・ユダヤ教会
 





↓こちらにレビューを書いてみました。


【必読書150】スピノザ『エティカ』(1)―――
―――思想とは自由の別名であり、
自らの生存を危険にさらすことである



「汎神論」というと、《自然》のただなかに没入し
《自然》から神秘的な霊感を受けるような人を
想像するかもしれない。
しかし、スピノザが「汎神論」に至った経緯は、
自然崇拝者のイメージとは、
まったく異なるものだった。


宗教改革市民革命戦争に明け暮れる
17世紀のヨーロッパ。スピノザは、
独立に揺れるオランダ共和国

亡命ユダヤ人の両親から生まれた。
ユダヤ人コミュニティーとともに
迫害のイベリア半島から逃れてきたのだ。
熱心なユダヤ教信徒の少年だったスピノザは、
24歳の時、ユダヤ教会から破門された。
ヘブライ語ができすぎて生意気だ、
一度お灸をすえてやれば改俊してくるだろう、

 そう思われたのかもしれない。
しかし、スピノザは敢然と反旗を翻して
教会を批判した。とたんに、
狂信者にナイフで襲われた。

その時から、スピノザは田舎に隠れ住み
レンズ研きで細々と生計を立てた。
ユダヤ教から追放されたユダヤ人には、
隠者となる以外に生きる道はなかったのだ。

そういうスピノザを見捨てずに援助した友人たちは、
共和派が多かった。共和派は、ピューリタン政権の英国
組んで、羽振りがよかった。ところが、英国が王政復古。
英王は、仏王ルイ14世と手を握ってオランダに攻め込んだ。
愛国貴族として名高いオラニエ公が返り咲き、共和派政権は
失脚した。共和派は“売国奴”とののしられ、民衆に囲まれ
虐殺された‥

スピノザは、民衆を言論で批判したが、顧みられなかった。
誰もが貴族政権のもとに結集し、祖国防衛に専念していたのだ。

こうして、
「善」とは、「悪」とは、何なのか?
「善」「悪」の絶対的な基準など、あるのだろうか?
「自由」とは、「隷属」とは、何か?
「自由」を求めて戦う民衆は、「隷属」に向っているのではないか?
これらの疑問が、スピノザをとらえた。
ユダヤ教、カトリック、プロテスタント、すべてに共通する 

根深い偏見が、無知が、問題の根本にあると、彼は考えた。
“超人”のような神、まるで人間のように感情と偏見に
とらわれかねない人格神を信じていることが、
いっさいの偏見と混乱の原因だと見るようになった。

「神」とは、この巨大な《自然》そのもののことである。
《自然》じたいが人間を超越しており、
《自然》の中には、誰々の神のような者は存在しない。
《自然》には「善」「悪」「美」「醜」もない。
それらは、人間が勝手に 思いこんでいるにすぎないのだ、と。