「イギリス総選挙の投票が12日午後10時(日本時間13日午前7時)に投票が締め切られ、与党・保守党が下院(定数650)で過半数議席を獲得した。欧州連合(EU)離脱を控えるイギリスは、今後どう動くのだろうか。
現在のブレグジット(イギリスのEU離脱)期日は、2020年1月31日。ボリス・ジョンソン首相はブレグジットを最大の公約に掲げ、離脱期限までに議会で協定を可決するため、過半数獲得を目指していた。
現時点では、離脱協定は承認されていないため、このままでは合意のないままEUを離脱することになる。
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今回の総選挙で過半数議席を獲得したことで、ジョンソン首相の離脱協定案は比較的、容易に可決されるはずだ。首相官邸は……法案を可決し、協定を承認することで、1月31日にブレグジットを実現させたい考えだ。
しかしブレグジットそのものは、より複雑な手続きの最初の段階にすぎない。
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イギリスが2020年1月31日にEUを離脱した場合、その後には非常に複雑な手続きが待っている。最優先事項は、EUとの通商交渉だろう。……通商協定は6月末までに合意に至る必要がある。……EUやその他の国々が、これほどの短期間で、これほど大規模で複雑な通商協定を結んだ例はない。……
解決が必要なのは、通商協定だけではない。安全保障や司法の面でも、EUとどう協力するのか決めなくてはならない。……その他の領域でも、協力関係を結ぶにはさまざまな合意が必要だ。」
【BBCニュース解説】 与党が過半数議席獲得 ブレグジットはどうなる?
ブレグジットについては、今年3月頃から興味をもって、週1回以上はBBCやロイターをチェックしていました。とくに、“合意なき離脱”をめぐる攻防が激しくなった9月頃は、ほぼ毎日ニュースを探して読んでいました。
なぜかというと、英国は“議会政治の先進国”ということで、議会が紛糾したときに、いったい、どんなふうにして、そこを乗り越えてゆくのだろう‥‥ということに関心があったのです。
“多数が押し切れば安定する” “小党乱立では安定しない” と日本人は思っている。だから、強行採決が許されてしまう。野党は「少数なのに反対する」と言って非難される。しかし、完全小選挙区制の英国だって、紛糾するときは紛糾するのです。ただ、彼らはそこから脱する出口を知っている。
たとえば、首相の解散権を、下院(衆議院)の3分の2の同意を要するとして制限する法律――というのが、たいへん興味深いと思いました。これを、日本に取り入れられないだろうか? 憲法改正ではなく、憲法を解釈する法律として…?
ジョンソン首相は、個人としては、若いころの、つまり頭が硬化症をおこす前の安倍に似た性格の人だと思う。そんな奴に好きなようにさせたら、日本の安倍政権のようにめちゃくちゃになってしまうが、保守党議員も野党議員も、首相をしっかりと丸め込んで勝手なことをさせなかった。「離脱延期」を首相に命ずる法律を作ってしまう。また、最高裁に訴えて、首相の決定を無効にする‥など、あらゆる手段が駆使されていた。とくに、保守党議員のなかに、職を賭して造反した人がおおぜいいた(彼らは、その結果、党を除名され、この総選挙で引退を余儀なくされた)。‥‥日本の国会議員は、学ぶべきだと思う。
結果的に合意なき離脱は回避されたし、ジョンソンの下で官僚が作った離脱協定案は、再交渉を拒否していたEUも、軟化するほどの出来栄えだった。保守党を支持するわけではないが、結果的には、これでよかったと思う。
労働党の党首コービンは、離脱に関しては、いつも態度がはっきりしなかった。面倒で複雑なことばかり言っていた。混乱させているようにしか見えない。党利党略で動いているのが見え見えだった。離脱がどうかよりも、自党(‥いや、自分)の支持が増えるか減るかに関心があるようだった。おかげさまで党は惨敗、自分だけ圧勝w
ジョンソンとEUのあいだで離脱協定案が合意に達したとき、コービンが「メイ案のほうがよかった」と言うのを聞いて、こいつはもうだめだと思った。それならなぜ、メイ首相が労働党に共闘を申し入れた時に断ったのか?
今回の選挙で、(事前に)ジョンソン保守党が、極右ブレグジット党を押さえ込んだのもよかった。 コービンは反ユダヤ主義だと保守党から攻撃されるふしぎな展開‥
しかし、離脱は、単に英国がEUに気兼ねなく進路を決められるようになるというだけだ。どんな方向をとるかは、その後の問題なのだ。すべての対立と選択は、離脱以後に本格化する。
EUの傘から出たとたんに、アメリカの傘に引き込まれてしまうかもしれない。ジョンソン保守党はそうなるおそれがある。逆に、労働党が主張してきたような政策が可能になるかもしれない。今回労働党から鞍替えした人たちは、それを望んでいるはずだ。あるいは、残留派も、敗北したわけではないかもしれない。離脱したうえで、EUと同じ政策を、英国が自分で決めて執ることだって可能なのだ。
英国にとって、ほんどうの選択は、離脱日(1月31日)以後にある。
【追記】 “ブレグジット効果”が、もう現れていますね。英国と取引の多いドイツ銀行が破綻寸前。金融は敏感ですね。トランプ-プーチン-イスラエルコネクションが連動? 日本への影響は、三菱東京への飛び火という観測が出ています。くわしくはこちらで⇒:狂躁亭覚書・ 『ドイツ銀行』だけ?1912151200
【追記】 スコットランドで独立を求める動きが活発になっています。ブレグジットの発端となった2年前の国民投票でも、スコットランドは圧倒的に残留票が優勢でした。イングランドがEUから離れるなら、俺たちは独立してEUに残る、そういうスコットランド住民の声に押されて、今回の総選挙でもスコットランドの8割の選挙区でスコットランド国民党が勝利。
また、来年実現するジョンソン保守党のブレグジット協定も、北アイルランド国境問題では、かなりEU・アイルランドに譲歩しています。国境検問をなくして、かわりに、ブリテン島と北アイルランドの間で税関検査をする構想。これでは、北アイルランドをEUに割譲するようなもの、とのウルトラ・ナショナリストの批判を押さえ込んだジョンソン保守党の勝利だったと言えます。
これらの動きは、「英国(The United Kingdom)」の分裂を予想させるものでしょうか? そう見ることも出来るが、国家あるいは国境というものの新しい形を生みだす可能性を見ることもできる。かつて世界の近代史を切り拓いた英知の再来を期待して…、今後も英国からは目が離せません。
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