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Ernest Arthur Rowe 画


 



     灰色の冬の日

 灰色の冬の日だ、
 静寂そしてほとんど光のない、
 もう誰とも話したいとは思わない
 不機嫌な老人。

 彼は川の流れを聞く
 若く、情熱ほとばしる;
 それは生意気で無益に思われる、
 その短兵急な力は。

 彼は嘲るように眼を細め
 さらに光を出し惜しむ、
 音をしのばせて雪を降らせはじめ、
 顔の前に帳
(とばり)を掛ける。

 彼の老境の夢を邪魔するのは
 かん高い鴎
(かもめ)の叫び、
 葉の落ちたナナカマドの枝の
 絶え間ない鶫
(つぐみ)の囀(さえず)り。

 これらすべての空騒ぎが
 勿体ぶって彼に笑いかける;
 冬はいよいよ一心に降りしきる
 漆黒の闇に沈むまで。




 

ヴィヴァルディ『弦楽器と通奏低音のための協奏曲“四季”』から
第4曲「冬」ヘ短調 RV297
第1楽章 アレグロ・ノン・モルト
第2楽章 ラルゴ
第3楽章 アレグロ
エンリコ・オノフリ/ヴァイオリン
ジョヴァンニ・アントニーニ/指揮
イル・ジャルディーノ・アルモニコ

 


 ‥‥いやはや、『こーゆー記』の啄木の忙しさにまぎれて、ご無沙汰しておりました m(_ _)m

 今週は、ブラームスということで‥、特集にしては切れ端ばかり、脈絡のないごたまぜで、なんともはっきりしない冬の訪れのような。。。

 ブラームスも、いちど腰を据えて特集したいんですが、今回は、ほんの予告編としてお聞きいただければと...

 なんでも、クラシック・ファンには2種類あるとか‥ ワグナーが好きな人とブラームスが好きな人と。―――その当人たちも、同じ時代に、互いに張り合っていたようで、音楽性というか、曲の内容から言うと、ブラームスのほうがベートーヴェンの正統な継承者‥といってよいのは争われないと思います。しかし、じっさいにベートーヴェンの遺した楽譜を熱心に研究して、大編成オーケストラでの演奏を成功させて‥、今日ある“ベートーヴェン”を世に送り出したのは、ワグナーのほうなんですね。

 ワグナーは、作曲家である以上に、今でいえばプロデューサーか音楽監督の才覚も持ち合わせていた人で、言ってみりゃ興行師で、香具師で山師で、大衆に喝采されるすべを心得ていたようです。それだけに、押し出しがすごいわりには、突き詰めてゆくと、意外に浅はかな部分が露呈したりする。哲学者のニーチェなどには、ワグナーのそういうところが、がまんならなかったらしいのです…。二―チェも初めはワグナーを絶賛していたんですけれども、じっさいに新築のバイロイト歌劇場でワグナーの歌劇が大成功するのを見てからは、もう…くそみそに貶しています。

 逆に、ブラームスのほうは、ウィーンの音楽アカデミズムの最奥座敷に居すわって、…その音楽も、素敵とか楽しいとかいうより、どこか、のめりこんで行くようなところがありますよね? マニアックが好きな向きは、そういうのを聞くと、かえってスッキリして、晴れ晴れとした気分になったりするんですがww ←

 そういうわけで、ワグナーとブラームス。みなさんはどちらがお好みですかね? ギトンは、お察しのように、ブラームス派。このブログでも、ワグナーはめったに出ないでしょ?

 ↓まずは、古めかしいフルトヴェングラーの名演から、サワリを堪能していただきます:

 

 

ブラームス『交響曲 第3番 ハ短調』から
第3楽章 ポコ・アレグレット
フルトヴェングラー/指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


 



 



 ↓これも、ちょっと古い、1966年の演奏です。ブラームスはやっぱり、こういう躍動的なのが本領じゃないかと。日本のブラームス・ファンは、そうじゃない人が多いみたいなんですが。。。

 

ブラームス『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調』から
第3楽章 アレグロ・ジョコソ・マ・ノン・トロッポ・ヴィヴァーチェ
ダヴィート・オイストラフ/ヴァイオリン
ゲンナディー・ロジェストヴェンスキー/指揮
モスクワ放送交響楽団

 


 つづいて、↓こちらのゲヴァントハウスとブロムステットの組み合わせも、愚生の偏見で選んでおります。カラヤンのベルリン・フィルが金綺羅キンだとすれば、ゲヴァントハウスは、いぶし銀。聴き比べてみれば、弦の音色からして違うのがわかるでしょう。旧東ドイツの諸楽団は、“時代遅れ”の伝統的・保守的な演奏が持ち味なんですの。

 

ブラームス『交響曲 第1番 ハ短調』から
第4楽章(後半)フィナーレ: アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・ブリオ
ヘルベルト・ブロムステット/指揮
ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

 




      一枚のスケッチ

 冷たい秋の風が薄暗い葦をふるわせる、
 夕べの闇に沈んだ葦の原;
 鴉
(からす)の群れが陸奥(りくおく)へ羽ばたいてゆく。

 たったひとりで浜に憩う老いた人、
 髪に吹く風を感じ、夜と雪が近づくことを思う、
 影になった岸辺から明るいほうを望み見る、
 そこでは雲と湖水にはさまれてなおひとすじ
 いちばん遠くの岸が温かく照り返す:
 黄金の彼岸、詩と幻
(まぼろし)のように幸福に。

 その眩
(まばゆ)い像を老人は眼にしっかりと把(とら)え、
 故郷を想い、彼の良き日々を思い、
 金色
(こんじき)が褪(め)てゆくのを、消えるのを見、
 ふりかえって歩きはじめる
 ゆっくりと柳の樹から陸奥へ。 



 

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