晩秋の旅人
葉の落ちた森の小枝の網をふるわせて
暗い空から初雪が沈んでくる白
沈む、沈む。どうしてこうも世界は沈黙してしまったことか!
さわぐ葉一枚なく、枝に鳥一羽なく、
ただ白く、暗く、静けさ、静けさ。
みどりの、いろとりどりの月を琴掻き鳴らし
歌いめぐってきた旅人も
押し黙っている、喜びに疲れて、
旅に疲労し、歌に厭(あ)きて、
悪寒(おかん)を覚える、つめたい灰色の高みから
眠気が襲ってくる、しずかに沈んでくる
沈んでくる雪……
遠く過ぎ去った春の日々から
枯れ堕ちた夏の幸せから思い出が
吹き消されて色のない画像とともに囁く:
桜吹雪が青空を埋めつくし
きれいな明るいその青色――
はねをやさしくふるわせながら
褐金の若い蝶が麦稈にとまる――
うすぐらく蒸さ苦しい夏の森の夜から
なつかしく尾を曳いてくる鳥のうた……
旅人はそれらの愛(いと)しい場面に向ってうなづく:
なんと美しかったのだろう!そしてまだたくさんの情景が
それらの時からよみがえってくる、ひらめき、また消える:
愛らしい眼の暗く甘いまなざし――
見知らぬ家の夕べの窓がら流れるフルートの調べ――
夜明けの森に鋭くひびくカケスの声……
沈む、沈んでくる雪。旅人は
鳥の声と笛の音(ね)に耳澄ます、
かつて鳴り響き、心動かされたそれらに:
おお美しき世界よ、なんと押し黙ってしまったのか!
足音もなく彼は柔らかい真白のなかを進んでゆく
故郷(ふるさと)へ、ずっと忘れていた地へ、
いまそれは甘い衝動となって呼んでいる、
その谷間へと、榛(はん)の小川へと、
市場(いちば)と古い父の家、
蔦の壁、そのむこうに亡き母と
父と先祖らが眠る。
さわぐ葉一枚なく、枝に鳥一羽なく……
バッハ、いいぞ! やれ! オリンピック史上最低のばかなやつらから開催権を奪い取れ !! (⇒:バッハ会長頑張れ!)……と、そのトーマス・バッハ会長のご先祖様―――ではないらしいけど、このさいバッハにあやかって特集したいと思いますw
というわけで、バロックばっかり5本並べましたが、それでも、親しみやすい曲を選んだつもり。演奏は、趣味の独断ですが、古楽器中心に、しめやかに。
↓これはご存知の方が多いでしょう。ブランデンブルクのなかでも、いちばん有名な「第5番」。
バロック・オーケストラではいつも“裏方”に徹しているチェンバロ。「通奏低音」という名の伴奏の音は、ほかの楽器に隠れてほとんど聴き取れないくらい控えめ。しかし、この楽章の後半では、珍しくチェンバロが前面に躍り出て、ソロを披露します。
チェンバロの“見せ場”は、 6:30-
バッハ『ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調』BWV1050 から
第1楽章 アレグロ
シギスヴァルト・クイケン/バロック・ヴァイオリン
バルトルト・クイケン/フラウト・トラヴェルソ
バンジャマン・アラール/チェンバロ
ラ・プティット・バンド
↓2台のリコーダーが競演する愛らしい一曲。いつもは“がちゃがちゃ”のイル・ジャルディーノも、ここでは、優雅に、しめやかに演奏しています。。。
バッハ『ブランデンブルク協奏曲 第4番 ト長調』BWV1049 から
第1楽章 アレグロ
ジョヴァンニ・アントニーニ/リコーダー
エンリコ・オノフリ/ヴァイオリン
イル・ジャルディーノ・アルモニコ
↓ブランデンブルク大公の“狩り”のファンファーレ。
トランペットとクラリネットの競演から、フルートとストリングスに、またトランペットに、と息つく暇もなく‥
こういうのは、たしかに現代楽器のほうが生きるかも。
バッハ『ブランデンブルク協奏曲 第2番 ヘ長調』BWV1047 から
第3楽章 アレグロ
モーリス・アンドレ/トランペット
ブダペスト・スプリング・フェスティヴァル(1989)
バッハの頃にはまだ音楽標語も単純で、速い楽章はみな「アレグロ」、緩楽章はみな「ラルゴ」。しかし、ブランデンブルクでいちばん速い楽章は、たぶん、↓これでしょう。
バッハ『ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調』BWV1048 から
第3楽章 アレグロ
トレヴァー・ピノック/指揮
ユーロピアン・ブランデンブルク・アンサンブル
バッハもけっこうだけど、どうも気ぜわしくて... せせこましくて... と感じられたら、あなたは耳がいい。それ、バッハの“真芯”に当たっているのかもw
しかし、もうすこしゆったりしたのを聞いてみたい―――という向きには、↓こんなのは、どうでせう?
コレッリ『12の合奏協奏曲 第1番 ニ長調』
第1楽章 ラルゴ‐アレグロ
第2楽章 ラルゴ‐アレグロ
第3楽章 ラルゴ
第4楽章 アレグロ
第5楽章 アレグロ
ボーダン・ヴァルハル/指揮
スロヴァキア室内管弦楽団
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