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      ★ つゆなかび

 朝からかまびすしい椋鳥
(むくどり)の呼び声に
 春眠は破られた
 鳥たちよ
 ここからは見えない鳥たち
 その長い尾を曳くように
 音の紐をなびかせて
 細い糸をからませて
 告げ知らさね この蒼き穹窿
 告げ知らさね 碧き瑠璃鐘の臨在:
 いく日またいく日も
 くらく降り篭められたあとで
 きみたちのそらは
 雲ひとかけもなく晴れわたったのか

   ……目覚めよ
      すべて衣をぬぎすてて
      無垢の身体に日を浴びよ
      ユーラシアの子ら……

 このひろい Eurasien
(エウラージエン) のどこかでは
 きょうの日も隠されて
 この日も隠され
 しづく散り
 しづくは流れ
 きらびやかな山毛欅
(ぶな)の萌碧(ぼうへき)
 規則正しい葉脈の階梯
 きみたちは見る
 昨夜の雨に未だ濡れている
 堅き葉叢
(はむら)に照る陽の慄(おのの)きを。



 


1 年 前 ↓