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   年とったさすらいびと

 あたたかい季節がやって来た
 見ればもうあっちでもこっちでも
 さすらいの男娼が街かどに立つ
 じっとしているのは俺だけだ。

 おおもしこの脚が元気だったなら――
 自分の分け前は救貧院に預けておいて
 野はらと小川を踏み越えて
 仲間のところへ行くのだが。

 この市門の上に夜中まで
 俺はすわって見張りする
 はだしの浮浪者が行き過ぎるとき
 悲しく、やあ!と呼びかける。





 あったかくなってくると、放浪の若者たちも、うきうきと浮かれ、もう町じゅうが二丁目状態?‥‥深読みが過ぎるかもしれませんねw

 しかし、ヘッセの頭の中では、青春の日々は男漁り(ん?)と切り離せないのでしょう。「男娼」なんて訳してる翻訳者は他にいないかもしれませんが、辞書を引くと、上の最初の連で使われているのは、娼婦ではなく男娼にしか使われない表現(そういう熟語がドイツ語にはあるんですねえ!!)。

 この詩を書いた時(1902年)、ヘッセは 25歳。“立ちんぼ”だって、まだできるでしょ?(え)

 ‥‥ともかく、春の詩だということは、わかっていただけるでしょう。野はらと小川を踏み越えて……♪

 声を聞いて驚かないように願います↓w


 

シューベルト「春の信仰」
ベンヤミン・ペリー・ヴェンツェルベルク/カウンターテナー
シン・カンミン/ギター
ニューヨーク,ジュリアード音楽院プレ・カレッジ

 


 カウンターテナーは、歌唱法でして、カストラート(去勢男性)とは違います。ゲイともトランスとも関係ありません。詳しくはこちらの記事を➡➡【ギトンの秘密部屋】声とはどんなものかしら?


    春の信仰    ウーラント作

 穏やかなそよ風が吹いて
 昼も夜も さらさらと音を立ててなびく
 至る所で吹いている
 ああ 新鮮な香り、ああ 新しい響き!
 さあ かわいそうな心よ、心配はいらない
 今すべてが、すべてが変わるに違いない

 世界は日々もっと美しくなり
 人にはわからない、これからどうなるのかは
 花が咲くことに終わりはなく
 遥か遠くにある最も深い谷にも花が咲く
 さあ かわいそうな心よ、苦しみを忘れろ!
 今すべてが、すべてが変わるに違いない

   MUSICA CLASSICA

 



 そういうわけで、今夜は「春」の特集といたしませう。「春」といえば、まずヴィヴァルディの『四季」なんですが、これ、ちょっと有名すぎて気が退けます。とりあえず、ロック・ヴァージョンで↓

 

ヴィヴァルディ『ヴァイオリン協奏曲 四季』から
「春」RV269 第1楽章(ロック・ヴァージョン)
ヴァーナジリス

 


 つづいて、↓緩楽章は、いちおうクラシックですが、このオジさん、ロックバンドともフィルハーモニーとも競演するという両刀使い。技術は、確かです。曲想の解釈のほうは‥ ん~ でも、とにかく肩ひじ張らずに聞いてられる、聞きやすい。オススメの演奏家です。

 

ヴィヴァルディ『ヴァイオリン協奏曲 四季』から
「春」RV269 第2楽章 ラルゴ
ダヴィット・ガレット/ヴァイオリン

 


 ここまで来たら、第3楽章も聞いておきたいですよねw おまけに↑上のビデオは、第3楽章に入ったとたんにブチッと切れてるんですから、これじゃあんまりです。というわけで、↓ちょっと演奏者がわかりませんが、ややクセのあるヴァイオリンで、第3楽章 アレグロ:
 

 

ヴィヴァルディ『四季』から
「春」第3楽章 アレグロ


 



 



 本格的なシンフォニーで「春」といえば、↓これなんか、どうでしょうね? ヴィヴァルディと違って、なかなか重厚な音を聞かせてくれますよ。

 

シューマン『交響曲 第1番 変ロ長調“春”』から
第3楽章 スケルツォ モルト・ヴィヴァーチェ
レオナード・バーンスタイン/指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 


 「春」のオーケストラに、↓ストラヴィンスキーは抜かせないでしょう。といっても、この手の現代音楽風は、好きな人にはいいんだけど、頭痛がするって人は、やっぱり頭痛がするw そこで、聞きやすい演奏を見つけました。

 ストラヴィンスキーは、ヘビメタの元祖‥‥なんだそうです、ドゥダメルによるとw そう言って、聴衆を笑わせています。

 現代音楽は、かしこまって聴いたりしたらいけませんw リラックス!リラックス!

 ドゥダメルが率いるユース・オーケストラ、昔から有名な、↓この「シモン・ボリバル」以外に、新しく高校生のオーケストラも編成したそうですが、楽団員全員の“人生を変えてしまう”と言われる型破りの音楽教育をしています。はじめに集めたのは、ベネズエラの貧民街の不良少年少女たち、‥‥かれらが、立派な演奏者に成長した姿をごらんくださいな。。。


 

ストラヴィンスキー『春の祭典』から
グスタボ・ドゥダメル/指揮
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ
ロンドン,ロイヤル・フェスティバル・ホール(公開リハーサル)

 


 さて、今夜のシメはどうしようかと悩んだんですが‥、このさい、思いきって現代的に締めましょう。これでっ!↓

 

BTS「スプリング・デイ(春の日)」
メロン・ミュージック・アウォード2017ライブ

 


 防弾少年団。「スマップに似てるな。」ぐらいにしか思ってなかったんですけどね←w

 ↑このライブとか、いろんなビデオ見て、人気の秘密が、わかりかけてきました(^^)ノ とにかく、鋭角的にキマってるんですよ。彼らの歌とパーフォーマンスはもちろんだけど、歌詞の内容にしても、ステージにしても、明かりの造り方にしても。ファンにおもねってないんですね。ファンに気に入られたらそれでおしまい…じゃなくて、いつも、オーディエンスの上を行こう上を行こうとしている。それでいて、ファン・サービスも欠かさない。そんな感じがしました。




      三月の太陽

 早すぎる白熱に酔っぱらって
 黄色い蝶がよろめいて飛ぶ。
 窓辺に憩うて座りこみ
 眠たそうに背を曲げた老人。

 春の若葉に唄いながら
 いつかこの人も歩き出した
 数えきれない道ばたの塵埃
(ほこり)
 髪の上を吹きすぎて行った。

 なるほど花咲く樹の枝も
 黄色い蝶らも見たところ
 としをとったようには見えぬ
 年年歳歳変わらぬ風情
(ふぜい)

 それでも色と匂いとは
 まえより薄く空
(から)になり
 光は寒く、空気は重く
 呼吸はつらくなり果てた。

 蜂のかぼそい羽音のように
 春が小唄をくちずさむ。
 天は白く真青
(まさお)くゆらぎ
 蝶は黄金
(きん)にひるがえる。



 

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