★ 大地(おおち)峠※
山の端(は)に残る日が径(みち)の隈に照りつけて
残雪はいっそう硬くなる
草と梢が冷えこんでゆくしずかな擦(かす)れ
霜をまぶされた去年の立ち枯れが
水晶の粉(こ)を吹いて光る
蜘蛛はどこに隠れているのか
径は何処へ向っているのか
烈日は世界のすみずみを凍えさせ
形のない恐れが森をつつむ
姿なき者の遠い叫び
……二百年となにがしかのむかし、雪のなかで
ひとりの若者が倒れたと云う
悼みに沈んだ少年は手を合わせたまま石になり
石の前で豕(いのこ)がまろび
狼(おいの)は頂(いただき)で天を睨んだ……
やさしく象(かたど)った磨崖の観音
消えかけた衣のわきに寛政六年と彫られていた
※ 中央本線四方津駅の南方にある峠。山道のわきに2体の石仏が立つ。
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