南の島から雨脚がやってくる
軒を濡らし、ごうごうとこの家の壁を
ふるわせる:あの碧い天末に
夢のように並んでいた雲の峰々は
とほうもなく巨きなしづくとなって
この街をたしかに濡らす
あなたの雫、あなたの涙滴、大とかげらの獣脚は
そらを厚く厚くおおってしまった
夜がどんなに明るいかを人は知らないように
海の底のかがやきを
人は知ろうとしない
昼がどんなに暗くともわずらわされることなく
人ははたらき、愛し合い、傷つけ合い
そらを顫わす巨いなる軸の軋り
われらの舳(へさき)はどこへ向かっているのか?
誰かはじっと見つめているのだろうか?