しらかば(Die Birke)
詩人のこころのからくさ紋様とて
これほどこまやかに枝分かれしてはいないかもしれない
これほどかろやかに風に撓(しな)りはしないかもしれない
これほどけだかく天に立ちあがってはいないかもしれない
やさしく、かぼそく、みずみずしく
おまえの垂らす白い長い枝は
高鳴る鼓動を抑えつつ
ひといきごとに顫えている
しずかにゆらゆら揺れている
おまえの微(ほの)かなおののきは
やさしく純な少年の
恋の似姿に思われるのだ
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黒い瞳
わたしの郷愁とわたしの愛は
きょう、この真夏の暑い夜に
異国の花のように芳(かぐわ)しく甘く
熱した生命(いのち)となってひらいた。
わたしの郷愁とわたしの愛
わたしの幸福と不運のすべては
おまえの暗い御伽話の眼に
無言のうたのように書きこまれている
わたしの郷愁とわたしの愛は
世のあらゆる喧騒を逃れ来て
おまえの暗い瞳のうちに
秘密の玉座を据えたのだ
しなやかな肢体と黒い瞳―――洋の東西を問わず、また男女の区別なく、恋の場面で人を惹きつける形には定番があるようですねw ヨーロッパで東洋の女性がもてるのは、黒っぽい瞳のせいだと聞いたことがあります。
「しらかば」と訳しましたが、原語はビルケ(オウシュウシラカンバ)。ヘンゲ・ビルケ(しだれ白樺)とも言い、日本のシラカバのほか、ダケカンバと近縁だそうです。
真白で剥がれやすい樹皮は、日本のシラカバと同じ。しかし、枝が細くてこまかいのが特徴で、遠くから見ると、大ぶりの枝垂れ柳のように見えます。樹高は高くて、30mほどになります。葉っぱは、白樺やダケカンバよりも切れこみが深くて、ふわっとした感じの葉むらを風になびかせています。
山地に生える日本のシラカバと違って、平地に多く、並木としても植えられています。⇒:オウシュウシラカンバ(Wikipedia-deutsch:写真参照)
じつは、ギトンの町の公園に数本植えられているのですが、ここに引っ越してきて最初に見た時は、白樺だとは思いませんでした。公園にあるほかの木―――椎の木や桜―――よりも抜きん出て背が高くて、ふわあっと空にまい上がるような枝ぶりに驚嘆したものです。すらっとした明るい長い髪の男性を見るような、すがすがしい印象がありました。
ちなみに、ビルケのような痩せ型のオトコは、見ていても話していても気分がいいし、ノンケなら最高の友達にできます。崇拝してもいいくらいですw でも…、ゲイとしてつきあう対象ではないんですね。からだを触れて愛しあいたいと思うのは、もっとべつのタイプです。
なので、‥たぶんヘッセが「少年の恋の似姿」と言っているのも、そういう友愛的なさわやかな印象のことではないでしょうか...
ぼくはおまえを愛しているから
ぼくはおまえを愛しているから、夜のあいだに
野獣のように、ささやくように、おまえのもとにやって来た、
そして、おまえがわたしを忘れることのないように
おまえの魂を奪い取って行ったのだ。
いまやおまえの魂は、ぼくのそば
良きにつけ悪しきにつけ、ぼくのものなのだ;
ぼくの野獣のような燃え立つ愛の束縛から
どんな天使もおまえを解き放つことはできないのだ。
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