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   追っても追っても追いつかない
  ふりかえってもふりかえっても
  きみはつねにすでにそこを去っている
  ふりかえりかけもどりきみの残り香をさがす

  生けるいま と死んだいま
  「わたし」は死んだいまをあるく
  落日が長い永いかげをひき筒鳥は
  どこか後ろで青い糸を巻く

  死んだいま と生けるいま
  生けるいまが駆け去ってゆく
  径喪って荊棘
(いばら)にふみこめば
  愕きはばたく姿なき鳥

  流れるわたしと立ちどまるわたし
  不在のねぐらにはきみの刻印
  流れは決して前にはもどらない
  きみは決していまを離れない

  皁莢
(さいかち)の枝に行くて阻まれ
  見知らぬ骸
(むくろ)に躓きながら
  たどりついた木蔭には
  いつもすでにきみはいない

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