◆三つに分裂


アレクサンダー死後の三つの王国(アンティゴノス朝マケドニア、セレウコス朝シリアープトレマイオス朝エジプト)を指す。


富は東方に残ったままであった。


インドではアーリア人の王国がい-つも繁栄した。


中国では紀元前二二〇年から11年間にわたる秦の始皇帝の驚きに満ちた君臨によ-'成陽に首都を建設することによって国家を統一しまた、文字を統一し、石でできた兵士たちを地中に埋葬する(始皇帝稜の一部である兵馬佃)前に、万里の長城を建造させた。


ここで時代の転換期となる新たな漠王朝が誕生した。


漠は儒教を採用し'いわゆる旬奴と呼ばれた遊牧民の侵入を防ぎ、西洋との通商路となるシルクロードを開設した。


西側ではローマがアテネと戦火を交えることもなく、その後継地となった。


ローマは中心地がはじめて西洋に存在する新たな帝国となった。


同じユダヤ・ギリシャの価値観をもち'さらにこれを推し進めたローマは'万神殿(パンテオン)や政治システムの観点からもちアテネをより、壮大にした都市国家であると自負していた。


ローマは'アテネがマケドニアに敗れたこと、また計らがプレヌス率いるガリア人との敗戦から教訓を見出し、陸軍を大幅に強化した。


ローマはまもなく西ヨーロッパ全域へ北アフリカへ地中海地域を支配するようにな-'北ヨーロッパやバルカン半島まで勢力を拡大した。


紀元前一七〇年、アンティオコス四世はエルサレムを破壊した。


紀元前一二五年,ローマがガリア南部を支配下に置いた。


ローマの平和すなわちパックス・ロマ-ナの絶頂期は'紀元前四四年に北部ガリアで勝利したユリウス・カエサルが元老院をひざまずかせ'彼こそが勝者の代表であることを認めさせ'皇帝であることを宣言しょうとしたときである。


さらにカエサルは彼のライバル[誓岩㌘]を暗殺しょうとエジプトまで追跡した。


紀元前二七年,彼の後継者オクタビアヌスが初代皇帝アウグストウスとなった。


その後の後継者たちは国境付近の反乱を押さえ込もうと'エジプトの反乱を鎮圧し'反逆派を一掃した。


そのなかには紀元三〇年のイエス・キリストという名のエルサレムのラビ(ユダヤ教の宗教指導者)が含まれていた。


その後,他のユダヤ人も反逆したが'紀元七〇年にエルサレムは破壊され'またしてもユダヤ人全員が抹殺された。


キリス-教の誕生である。


紀元四八年にはエルサレムで初の宗教会議が開かれ'キリスト教徒(最初はユダヤ人と敵対するローマ人と同盟を組んだが'次第にユダヤ人同様に嫌われることになる)は'ユダヤ教のメッセージを'イエス・キリストのもとに人々は集まるというメッセージに変えへこれを古代の異教徒に流布していった。


なぜならばへ予定されていた救世主がやって来たのであ-'この日がやってくることを信じていたユダヤ人たちはへその存在意義を失い、改宗することを余儀な-されたからである。


キリスト教は'キリスト教徒とは選ばれた新たな人々であ-'貧困と非暴力だけが救いの道であると説いた。


またへ愛(アガペー)は永遠への条件であ-'富の創造はもはや天の恵みではなく進歩も重要性をもたないと説いた。


こうしてユダヤーギリシャの理想が'大幅に見直されることになったのである。


そこでキリスト教・ローマ人・ギリシャ人・ユダヤ人の考え方を融合させ、神への愛はもっとも貴重な価値軌であるが'教会と付随的に教会にしたがう君主は'富を蓄積することができ、各教会はこれを救いの準備に役立てることができると説いたのである。


こうしてキリスト教は、その教えだけを武器にローマ帝国内に数多-の信者を獲得した。


当時、友愛・平等・非暴力・質素・謙虚といったキリスト教の徳によ-'市場、自由、個人主義の秩序が退けられる可能性もあったと思われる。

しかし'決してそうはならなかった。


ここで未来への教訓。


宗教の教義は'たとえどれほど影響力があったとしてもう個人の自由の歩みを遅らせることには成功しなかった。


実際に'宗教であろうが宗教から独立した権力であろうが'現在までにいかなる権力も、この歩みを持続的に押し止めることはできなかった。


これまでの帝国と異な-'ローマ帝国は当時、競争相手をもたず'東方からやっノて来るゲルマン民族という外敵だけが脅威であった。


ローマは、その富や温暖な地中海の気候を目指してやって-る部族に悩まされていた。


こうしてローマの国境警備費用は'徐々に膨大な額に達した。


ローマは'兵士の多言語と多宗教、費用が重なり続ける兵端を管理し'これらの財源を確保していかなければならなかった。


ローマ五賢帝の最後の皇帝マルクス・アウレリウス皇帝は'一六〇年から一八〇年までの間、自ら帝国の国境警備にあたった。


しかし'こうした努力も徒労に終わ-'ローマ人はゲルマン人とスラブ人に脅かされ'ローマを覆した彼ら自身もまたトルコ人やモンゴル人によ-覆された。


こうしてローマは次第に後退し'疲弊した。


まもなくローマ帝国は分裂し'小アジアのビザンティン帝国と西ローマ帝国などの他の帝国と競合することになる。






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  5. 4--〈帝国の秩序)から(相場の秩序)へ

    第2章 1-(市場民主主義)の誕生-紀元前12世紀

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    第2章 2--「自由」こそ究極の目的-古代ユダヤ・ギリシャの理想

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    第2章 2--◆春秋戦国時代

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