2--「自由」こそ究極の目的-古代ユダヤ・ギリシャの理想


紀元前1300年ごろ、地中海地域で生活するきわめて革新的なギリシャ人、フェニキア人、ヘブライ人により、これまで世界を支配してきた周期的変動に異変が生じた。


彼らに共通することは'進化、形而上学の問題、行動、新しさ、美しさといったものなどに対する情熱であった。


ギリシャ人は隣国の攻撃から自衛するために、船舶、武器、陶器、天文学に大革命を起こした。


シリアと地中海沿岸部を拠点にしたフェニキア人は、初のアルファベットを作-出したことで、隣国との円滑な通商関係を築-ために必要な他言語を自国語に書き換えることが可能となった。


まった-同じ時期に'少数の羊飼いでヘブライ人と自称していた人々は'メソポタミアの地を離れ、唯一普遍の神の言にしたがい'約束の地力ナンに定着した。


三者にとって'人間の生活はいかなるものにも優先する。


つまり'彼らにとってすべての人々は平等であり(奴隷と「よそ者」はのぞ-)、貧困は宿命的不幸であり'人間にとって世界とは'統治でき、改善でき、築き上げてい-ものであった。


その一方で'彼らは救世主が定めを変革しにやって来るのを待つのであった。


人類は、このときはじめて地上の未来が過去よ-も素晴らしいものになると考えた。


また、物質的に裕福になることが'神または神々に近づ-方法であると考えられるようになったのもこの時期である。


こうした考えは西洋の理想として社会に根づき'現在においても市場の秩序の根幹となっている。


すなわち、これがユダヤ・ギリシャの理想である。


一世紀後の紀元前二一〇〇年ごろへフェニキア人は'ティルス'サイドン、ウティカ、カルタゴ、カディスに都市国家を築いた。


ヘブライ人は'カナンからエジプトに向かった。


ギリシャのペロボネソス半島では'中央アジアから来た二つの部族(ド-リア人とイオニア人)が'農業国家で多くの外国人奴隷を使っていたスパルタや'沖合に向けて通商を行なうことになる小さな港町アテネをはじめとする都市国家を発展させていった。


農民であ-'定住民のスパルタ人は'奴隷の叛乱を恐れて軍事国家となった一方で'商人で教養があり海洋民族であったアテネ人は隣国からの攻撃を防ぐための巨大な艦隊を装備した。


同時期に'伝説によればミケーネ人、つまり'クレタ人はトロイを滅ぼした。

これはヨーロッパとアジアの史上初の戦争である。


哲学者'神託の判断者へ船乗り'医者、芸術家、商人(ギリシャ人へフェニキア人、ユダヤ人、さらにはモンゴル人,インド人、ペルシャ人)たちは'ユーラシア大陸全土の帝国の間で通商を発展させていった。


彼らは戦時中においても'通商ネッ-ワークを通じて理念や製品をイベリア半島から中国にまで流通させていた。


ところで中国では'商(股)王朝が'歴史的にはじめてきちんとその存在が確認されている周王朝により葬り去られた。


ちなみに、その王朝のリーダーたちの称号は天の子という意味の「天子」と称した。


紀元前二〇〇年ごろ、ユダヤ人は彼らのリーダーの指示にしたがい'エジプト滞在の後へ自らの土地にもどった。


次に、紀元前l〇〇〇年へペリシテ人の攻撃に対する自衛策として'魂の死という危機感をもったユダヤ人は,紀元前九三l年に二つの王国[靴㍍耶鑓謎]に分裂するまで王政を敷いた(サウル王へ次にダビデ王へ次にソロモン王)。


これも史実である。


その直後、アテネの商人は'周辺地域における彼らの所有権を行使した。


そこで彼らは'自らの利益確保のためにへ民主主義の基盤と貨幣を発明した。


民主主義は王朝や帝国の衰退をうながした。


貨幣によ-'単一尺度によってすべてのモノの価値を示すことが可能になった。


民主主義と貨幣は、宗教や軍事力から権力を引き剥がし'これを商人に
託す方向に作用した。


宗教と軍事力という二つの秩序において必要不可欠であった奴隷制度はこの新しい市場の秩序においても長年にわたって必要とされた。


ユダヤ・ギリシャの理想とは'自由こそが究極の目的であり'また道徳規範の遵守ともなり、牛存条件でさえあることを明確にした。


富とは神の恵みであと貧困は脅威であった。


この時点から個人の自由と市場の秩序は不可分なものとなる。


この傾向は現在の我々の時代にまでさらに進化していく。


紀元前八五〇年へフェニキア人は彼らの文字記号を洗練させたが'これが現在、我々が使っているアルファベットである。


イスラエルにおいてはヘアモスへイザヤ'オセアといった預言者が活動し'アラム人はシリア全域に定住した。


その直後の紀元前七五三年、弱小国家アテネは'軍事力よりもアイデアや芸術品に関して世界でもっとも影響力をもつ都市国家となった。


その同時期に'はるかに人口の多かった中国の周王朝は'干朝内の内乱で分裂した.


地中海の反対側の岸[封削]では'ある村がひっそ-と誕生した.


これが後のローマである。




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