11月13日から24日まで上野ストアハウスで上演いたしましたボブジャックシアターvol.24『ノッキンオンヘブンズドア』が無事に全公演終了いたしました!たくさんのご来場ありがとうございました。演出ノート的な意味合いも込めて振り返りブログを書きたいと思います。何気に演出ノートを楽しみにしてくださっているお客様がいらっしゃるみたいでありがたい限りです。公演が立て続けに入るとどうしても時間的余裕がなく書く余裕がない場合もあるのですが…。ではいってみましょう。

 

まずは、この作品について。再演なので以前の公演での振り返りブログでも同じようなこと書いていた場合はすいません!

 

『ノッキンオンヘブンズドア』は3年前に初演を上演したのですが、その時も今回同様「男女反転ダブルキャスト」で大変ご好評を得ました。演劇には様々なダブルキャスト公演があります。単純にキャストを変えただけの場合や男性バージョン・女性バージョンにしたものなどなど、それも非常に面白く興味深いものがあるのですが、なんか一筋縄ではいかないものをやってみたかった。そこで思いついたというかずっと以前からやってみたかったのが男女反転なのです。その仕掛けだけで見えてくる景色がかなり変わってくるのではないかと。とまあ言うのは易しですね。3年の初演は非常に苦労をいたしました。おそらく初演のブログでも書いたと思いのですが、「男女反転にしても成立することを前提に脚本を書けない」と脚本の守山に言われたため、脚本自体はAチームの性別を元に書いてもらいました。Bチームの脚本は、男女が反転したらどうなるだろうか?男性が女性を説得するときにこういう言い方をしているが、反転したらどんなふうに言うのかなどを考えて私が脚色、実際に稽古をしていく中で調整をしていって…と言う感じで作っていったのですが、まあ、そのあたりの作業が大変でした。今回はその辺の脚色作業に時間がかからなかったため、Bチームもしっかりと演出できたのではないかと思っております。

 

まずはキャスティングの話からしてみます。これは本当に裏話になってしまうのですが、実は「ノッキンの再演、できるかもしれない」と思ったのは、昨年末に上演した『ライナスの毛布』をやった時でした。初演でAチームの櫟沢みのりを演じてくれたのはまぁこ。そしてボブきのこで天国探偵社をやった時にみのりをやってくれたのもまぁこ。なので私の中では「みのり=まぁこ」という印象が強くなっておりました。ノッキンはいつか再演したいとの希望はあったのですが、まぁこが結婚し、お母さんになったため、「ああ、再演はちょっと難しいかな」と思っておりました。ところが、ライナスの毛布で森岡悠ちゃんとご一緒したときに「この子ならまた違ったみのりを見せてくれるかも!」と思い、よし早速再演やっちゃおう!となったわけです。なので最初にキャスティングで動いたのは森岡悠ちゃんでした。無事に悠ちゃんのキャスティングができ、さあ本格的に全キャスト探しの開始となったのです。出会いは大切ですね。

さて、今回のキャスティングはちょっと変わった感じにやりました。元々私の方で、この役はこの人にやってもらいたいなという希望もあったのですが、ご存知のように我が劇団員はありがたいことに色んなところに客演させていただいております。間違いなく彼らの方が色々な役者さんを演技だけではなく稽古に挑む姿勢なども含めて知っています。なので、劇団員だけでキャスティング会議をしてもらいました。下世話な話ですが、ギャラが高そうとかそういうのは抜きにしてとにかく理想的なキャスティングをと。まあ、上がって来るわ来るわ、理想的なキャストさんの名前が…笑。で、上がってきたキャストさんを私の方で配役を再吟味して「駄目元で声かけてみよう!」と動いていったわけです。半分くらいはダメだろうなというくらいの気持ちで声をかけていったのですが、奇跡的にスケジュールが空いていた方が多く、バンバン理想的キャスティングが進んでいきました。キャストさんを見ていただければわかると思いますが、うちの作品で代々ヒロインを演じてくれた女優さんが4人(栞菜ちゃん、あすぴー、さきっちょ、悠ちゃん)もキャスティングされてるんですからお分りいただけるかと思います。

 

とまあ、順調に滑り出したわけですが、一役だけ、ちょっと苦労した役がありました。その役とは……意外に思われるかもしれませんがAチームの「椎本詩」役です。初演で演じてくれたのは当時初舞台だった寺田真珠。初舞台だったため、まだみなさんもご存知ない女優で、かつ初舞台特有のわけのわからないエネルギー、そして真珠の特性を最大限活かそうと詩のキャラクターを真珠(の変な性質の方に)にかなり寄せたものにしてしまったため、まぁこ=みのりと同じく、私の中で「詩=真珠」という像が拭い去れず、そして初演をご覧になった方にも強烈なインパクトとして刻まれているだろうなというのがありました。そこを埋めてくれたのが新人劇団員の池澤汐音。彼女の才能に惚れ込んで、劇団に入る前からお仕事を振ったりしていたのですが、ノッキンのキャスティングをしていたときもたまたま彼女と「暗転エピローグ」という作品でご一緒しておりました。「暗転エピローグ」での演技や稽古に臨む姿勢が本当に素晴らしく「劇団員に欲しいな」とうっすら思っていたところに、同じく暗転エピローグの現場に入っていた丸山からも「汐音、劇団員に欲しいですね」と話をされ、それならと「劇団勧誘と同時にキャスティング」というウルトラC に出たわけです。汐音ならお芝居は間違いないので、あとはどういうキャラ付けにするかだけだなという問題だけ。またコンビを組む礼音に高田淳くんをキャスティング中(この段階ではまだ決まっておりませんでしたが)だったので、彼ならば汐音にどんな味付けをしても面白く料理してくれるだろうという根拠のない自信もありました(まだ淳くんは決まってませんでしたが笑)。

 

とまあ、色々ありましてキャスティングも完了。そしていよいよ稽古が始まったのですが、もう稽古開始から「うわ〜、これは絶対に良いものになる」という確信がありました。ここから先はちょっと私的な演出目線になるので難しい感覚かもしれませんが、良いものになるというのは「理想通り・想像通り」ではダメで「理想通り・想像通り」+α「ちょっとしたズレ」のバランスが良いときに私は感じたりします。まさにそれだったわけです。「この人がこの役やったらこんな感じになるだろうな。こんな印象を受けるだろうな」と思っていた通りの部分と「あれ? こんな風に感じるんだ」という部分が同居するといいますか。それが顕著だったのが、小玉さん、栞菜ちゃん、でした。まあ、小玉さんは「ド派手な」役を演じているところ、栞菜ちゃんは最近コメディエンヌをやっているところ、ばかりを見ていたのでそう思ったのかもしれませんが。とにかく二人のやり口にはワクワクが止まりませんでしたね。「え?え? そのやり口で行くの?どうなるんだろ?」という感覚。私は自分を凡人だと思っているので、私の予想通りはそんなに面白くないと常日頃から思うようにしております。脳みそは多い方が絶対に豊かなものになる。まあ、明らかにそれは間違ってるでしょというものは修正しますが、基本的にはみんなが出してきたものを活かす方向で演出をします。その中で私で思いついたことも伝えるようにしてと。そういう作り方なのでこの「少しのズレ」がとてもありがたいのです。お二人以外にも多くのキャストさんがそれを感じさせてくれました。想像が膨らみますよね?ゆえにこれは面白いものになると思ったわけです。

 

次に、今回の演出方針について……ですが、長くなってきたので今回はこの辺で。