それでは今回も張り切って『暗転エピローグ』キャストについてです。

 

○栗栖茶子役:林千浪さん

はい、このお方、モンスターですね。圧倒的なパワーとテンポ感、頭の回転も早いし、自由自在に暴れまわってくれました。すごいの一言。

恒例になった「シャー」で引っ張るシーン。種明かし的には会沢紗弥ちゃんの早替え時間を稼ぐという意味合いで行われていましたが、実はそれは結果論なのです。稽古当初に私が「ここのシーン、シャーで遊べるね」と言ったことが始まり。そこからは返し稽古をやるたびにいつも違うシャーネタをやってくれました笑。私はいつもそれを見て思っておりました。「鉄のハートを持った女優だな」と。久々に稽古場で圧倒されましたね。何度も言うようですが、すごい女優ですわ。で、通しでやった時にちょうどシャーネタのところで早替えの時間稼げるねとなったわけです。なので、早替えがなくてもあのシャーのシーンはあったのです。私は稽古場のノリで演出をつけることがあります。しかし大体は稽古途中で「やっぱり止めるか」となるのですが、シャーのシーンはいつも鉄板で面白かったので「こんな面白いシーンをお客様に見せないのはもったいない」と思いやり続けてもらうことにしました。

面白さや爆発力に注目が集まりましたが、実は細かいシーンで素敵な演技を連発してくれていました。一華に語りかける美咲を優しい眼差しで見つめていたり、お互いに頑張ろうと言い合っている一華と美咲を見て、荷菜とアイコンタクトを取ったり、などなど。うっとおしいライバル役だった茶子がお客様全員に愛されたのは、そう言った細かい部分も含めてのことだと思うんです。あんなハチャメチャな役にしっかりと人間としての命を与えたのは全て千浪ちゃんの功績だと思います。今回の作品で彼女に出会えたことは、演出家として最高に幸せなことです。シリアスなお芝居も非常に良いので、今後は色んな作品、色んな役柄でご一緒してみたいですね。『暗転エピローグ』という作品の影のMVPは間違いなく千浪ちゃんでしょう。作品に勢いとパワー、そして多くの笑いをもたらしてくれた素晴らしい女優。所属している劇団の活動が忙しいため、あまり外部に出ることはないようですが、もったいない!外部に出始めたら、間違いなく色んな団体さんで取り合いになるでしょう。ボブジャックにもいつか出てほしいなあ〜。

 

○小楠愛瑠役:渡壁りさ

ボブジャックシアターの永遠の妹。それが渡壁りさですが、まあ、身内を褒めても気持ち悪いので、あまり色々と書きませんが、今回は珍しく、パワー系の役。ここ数年、非常にたくましく成長してくれておりますが、こういうパワー系の役もできるようになったかと嬉しく思います。もちろん、まだまだ課題もありますが、今は自信を持って外部に出しても良い女優になりつつあるのではないかと。手前味噌ですが。

これからも精進してね。

 

○上柚美咲役:寺田真珠さん

初舞台から早三年。ここまで結構な回数ご一緒してるなあ。すっかり信頼できる女優さんになりましたね。今回の脚本を読んだら、おそらくほとんどの人が真珠がやったアプローチとは別のラインで美咲をやっていたと思います。彼女の役へのアプローチに触れた時「なるほど、そう来ましたか」と思いましたが、それが非常に真珠にマッチしていて、そのまま行ってもらおうと思った次第です。こういうの、非常に嬉しいし刺激的なのです。改めて真珠のすごさを実感したのはやはりエチュードですね。よくもまあそんな発想浮かぶなあということの連発でした。稽古中から。やはり、どこかぶっ壊れてるんでしょうね笑。

そして、最後に一華に語りかけるシーン。ここも彼女ならではの良さが凝縮しておりました。元々持っている柔らかさと彼女の邪気のなさが、本当によく出ていました。やはりお芝居というものは普段が出ますね。いつもギスギスしている人は、ギスギスした役じゃない時でも、何かそう言ったものが出てしまいます。彼女は普段から良い意味でニュートラル。そのことがお芝居に非常に良い方向に作用しています。何より、心の底からお芝居を楽しんでいる。3年やそこらでぐんぐん成長していくわけです。大きなコンテンツの舞台にも出演が決まっているし、今後は益々ビッグな役者になっていくのではないでしょうか?ビッグになっても私のことは無視しないでね笑。何度やってもまたご一緒したいと思わせる、素敵な女優さんです!

 

○森陽茉莉役:池澤汐音

彼女は「暗転エピローグ」の稽古中にうちの劇団員になった女優。なので残念ながら、壁ちゃん同様、あまり褒めるのは気持ち悪いので笑、多くが語りませんが、私は彼女の才能に惚れ込んでおります。初めての独白キャラだったみたいですが、聞き取りやすく、そして客観的でもあり主観的でもある難しいラインを本当によくやってくれたと思います。また、稽古場でも率先して代役をやってくれたり、一家に一台・池澤汐音です。もっと多くの人に池澤汐音というまだ若いが実力派の女優を知ってもらいたい。

劇団公演だけではなく、私が演出する色んな現場に連れて行って、沢山勉強させてあげたいなあ。兎にも角にも、今回も素敵なお芝居を見せてくれました。これからもよろしく!

 

○中野零治役:丸山正吾

彼についても多くは語りません。うちの劇団の看板俳優。私が最も信頼し、最も尊敬している役者。役者としてだけではなく、演出面でも彼には良く相談します。付き合いも随分と長いので、もう弟みたいなもんです。役者としてはすごいけど、普段は如何しようも無い弟。

今回の作品でも、おもしろにシリアスに大車輪の活躍を見せてくれました。どこに出ても、周りの役者陣とお客様を魅了してくる。脂乗ってます。すげー奴です。

 

○尾崎紅子役:山下聖良さん

今回、物語に落ち着きと重しをもたらす大人組役で出演してもらいました。そういった役所はほとんどやったことがなかったみたいでしたが、なかなかどうして、落ち着いたキャラクターを魅力たっぷりに演じてくれたと思います。最初の頃は、やはりやったことがないということで、どうしても大人特有の余裕をうまく出せなかったのですが、稽古が進むに連れて、それをものにして行ってくれました。最終的には、その他の大人組である丸山や越村さんと一緒にいても違和感なく、大人の空間に存在できていたと思います。彼女はとてもまっすぐで、本当に良い意味で「いい人」なので、そういった感じがうまく紅子にも乗っていて、学生たちを見守る新聞記者感が素晴らしかった。あと、何気にちょっと不思議な感性を持っているので、茶子の笑顔シーンでのネタ振りがいつもどこか抜けてる感じがしていて、面白かった。あのふわっとした感じのネタ振りのおかげで、お客様も笑いやすい環境になっていたのは間違いないと思います。

普段は若めの役をやることが多いそうですが、これからは今回のような大人な役も是非レパートリーに入れて欲しいですね。キュートだけど落ち着きもある大人な女性、いいじゃないですか!彼女も汐音同様、積極的に代役などにも入ってくれ、本当に助けられました。そういう献身的な部分も聖良ちゃんらしくてとても良かったです。

お芝居の質的にもパーソナル的にも雰囲気的にもこれから良さがドンドン出てくる女優さんだと思います。次ご一緒する時は、新しい魅力を備えた聖良ちゃんにお会いできることを楽しみにしております!

 

○湯郷純役:越村友一さん

今回、彼のようなベテランの役者がいてくれたことが、間違いなく作品に深みをもたらせてくれました。やはり、脇にビシッと締められる人がいると物語に厚みが出ます。決して出番は多くなかったですが、出てくると必ず何らかのインパクトをもたらしてくれる。ベテランならではですね。

越村さんは、何と言っても声が素晴らしい。低く太く落ち着きのある声。そして厚い歌声。歌が素晴らしすぎると笑えるんだなと今回気づかせてくれました笑。

そして、生徒を見守ってる感の説得力ね。いいわ〜。夜のシーンで、モヤモヤしているレイに語りかけるところの分厚さ。ああいう部分は、本当に物語を深くする。

若い座組をしっかりと下から支えてくれた越村さん。本当にありがとうございました!

 

 

というわけで、今回で振り返りブログを終えたいと思います。

『暗転エピローグ』という作品を演出できたこと、そして本当に素敵なキャストたちばかりだった今回の座組。間違いなく私の財産です。2019年の夏は、ちょっと特別なものになりました。また、今回のメンバーで『暗転エピローグ』がやれたらいいなあ。そう願って、筆を置きたいと思います。

沢山のご来場・ご声援、本当にありがとうございました!