さてさて、本日も暗転エピローグのキャスト陣について。

 

○島崎藤子役:生田善子さん

原作者でもある生田さん。またゲーム版では実際にしーの声を担当していたこともあり、最初はゲームキャラとしてのしーと舞台キャラとしてのしーの違いに少し戸惑っているようでしたが、二人で話し合い、舞台版のしーはギリギリのラインまで人間味を出していこうということになりました。これ、ものすごく難しかったと思うんですよね。特に、一華を追いかけ語りかけるシーン。本当にギリギリを攻めてくれたと思います。しーちゃんから少し感情が漏れ出ているというのが本当によくわかりました。そのギリギリのラインがお客様の感動を呼んだのでしょう。ツイッターなどの感想にも「しーと一華のシーンで涙が溢れた」というご意見をよく目にしました。本当に素晴らしいお芝居だったと思います。

また、原作者として、私を信頼し、本当に好きなように演出をさせてくれました。私の方でもできる限り原作の良さを出すことに注力しましたが、結構舞台ならではの遊びも入れました。それをいつもニコニコ笑顔で稽古を見つめてくれておりました。演出家としてこんなに心強いことはありませんよ!とても良い環境で演出をさせていただきました。

演出家と女優という関係性では、今回が3度目だったのですが、振り返ってみればどの役も抑えた役ですね笑。1回目は未来の世界を牛耳るメインフレーム(マザーコンピューター)、2回目はライナスの毛布でのサイボーグ、そして今回の暗転エピローグでは人間であるものの、サイボーグのように心の底が見えない役。次ご一緒する時は、是非感情的な役をやっていただきたいですね。そんな彼女を見るのが楽しみです。

今後も「暗転エピローグ」の世界は彼女によって紡がれていきます。漫画版ではこれからどんな物語が待ち受けているのか?一読者として楽しみです!

 

○北原秋役:楓さん

今回の作品の重し的な役割を果たしてくれたふぁい。何があってもブレることなく、荷菜を一華をそして演劇部を支え続けます。まさに縁の下の力持ち、副部長の鏡のような存在。楓ちゃんの落ち着いたお芝居と淡々としながらも滲み出る優しさが非常にマッチしておりました。そんなふぁいが唯一自由にできる時間がエチュードシーンでした。重しから解放された彼女。言語センスが良く、キャラを崩さずに面白ワードを連発していた様は、流石の一言でした。

そして、何よりも重要なのはふぁいとしての説得力!かっこいい、男役を演じるというふぁいのキャラクターを演技とビジュアルで完璧にこなしてくれたのではないでしょうか?彼女も稽古場でのレスポンスが早かったですね。指摘したことをすぐに実行してくれる。ありがたい限りでした。

にしてもふぁいは本当にいいやつなんですよ。演劇部の勧誘を受け、一度は去ったものの戻ってきた一華の言葉を受け「だってさ、部長」っていうセリフや最後の方のシーンで、「舞台に立ちたい」と悲痛な思いで泣く一華に「私も見てみたいな、一華が舞台に立つ姿。きっと素敵だと思うよ」と語りかけたり、本当に演劇部のお母さん的な暖かさを持つ役。この手のセリフって下手すると臭みが出るセリフなのですが、楓ちゃんが言うと全くそんな風にはならない。それは彼女の元々持っているサッパリさや、ふぁいの立場をよく理解してくれていたからだと思います。「さあ、舞台に戻ろう」と一華に優しく語りかけるところは、密かに私の泣きポイントでした。とにかく優しさで溢れている。優しさに泣くってなかなかないですが、このセリフにはいつも泣かされておりました。

ふぁいはその他のキャラクターに比べ、どかーんと行く部分がないので、ともすれば埋もれてしまうキャラクターになってしまう可能性がありましたが、楓ちゃんの元々持っている存在感と、周りのキャラクターとは違ったアプローチの仕方のおかげで、「演劇部の安心装置」としてお客様の心の中に常にいてくれたのではないかと思います。荷菜とは異なりますが、演劇部に抜群の影響力を持つふぁい。彼女が引退してからの演劇部が心配でなりません笑。楓ちゃんも是非またご一緒したい女優さんでした!

 

○林菜奈子役:早乃香織さん

ふぁいと並んで、演劇部1、2位を争う普通のキャラ。それが菜奈子でした。また、原作キャラではありますが、原作でもまだあまり描かれていないキャラでもあり、今回のななちゃんのキャラクター像を膨らませてくれたのは完全に彼女の功績です。まず特筆すべきは、「演劇部であることの説得力」ですね。劇中劇などではいわゆる「演劇部っぽい」芝居をしっかりとしてくれておりました。こういうディテールが結構大事なんですよね。演劇人としての能力が非常に高い彼女。よく通る声、美しい歌声、キレのあるダンス…、彼女自身のポテンシャルを遺憾なく発揮し、演劇部としての説得力を支えてくれておりました(周りが変なキャラばかりだったので笑)。

稽古中は、エチュードが少し苦手なような感じでしたが、本番ではエチュードでも活き活きとお芝居をしてくれておりました。さすがです笑。そして、彼女の特筆すべき二つ目は「安定感」。実は色んなセリフの言い方を毎回、ちょっとずつ変えていたのですが、どんなアプローチで演じても常に安定したお芝居を披露してくれておりました。

菜奈子は演劇部の中で、唯一、一華に厳し目に接しています。レイちゃんにダメ出しにされ、一華が飛び出した時も「一人にしてあげよう」と言ったり、戻ってきて再び演じることを命じたレイちゃんに久代が「先生もう(これ以上はやらせないであげてください)」と庇ってあげようとした時も久代を諌めたり、優しく励ましてあげることだけが優しさじゃないというスタンスを取り続けております。根底には先輩としての大きな愛情があるのですが、敢えて頑張らせることで一華を成長させようとする。そういった菜奈子の機微を彼女はしっかりと演じてくれておりました。彼女や楓ちゃん演じるふぁいが演劇部の多様性を示してくれておりました。また、影芝居での他の役者との目線のやり取りなど、本当に非常に細かいところまで演じてくれ、場の空気感を作るなど、楓ちゃん同様、演劇部の縁の下の力持ちとしてしっかりと座組を支えてくれました。私の持論ですが、「脇を固める役者のクオリティが、作品全体のクオリティを支える」と思っており、そういった意味でも彼女のクオリティの高さが作品全体のクオリティを高めてくれたのだと思います!

 

○壷井八栄役:大澤実環さん

今回の座組の最年少。現役高校生。…嘘でしょ?というくらいしっかりとしたお芝居を見せてくれておりました。今回のような濃いめのキャラは初めて演じたみたいですが、なんのなんの。宮島小百合ちゃんにも負けないくらいパワフルに演じてくれておりました。前回ご一緒した時に「高校生とは思えない芝居力」に惚れ込んでオファーをかけたのですが、今回は「とんでもない思いっきりの良さ」という実環ちゃんの新たな一面も見せてくれました。稽古中、私が何か演出を付けると、一発目から100%のパワーで実行してくれる。この子もレスポンス抜群でした。彼女は若いながらも芝居力が高く、安定感も抜群なのですが、もしかしたらそれが足かせになる可能性もあります。以前のブログで野口真緒ちゃんのところでも触れたのと同じ理由からです。ですので、しばらくは「安定感ではなく、チャレンジするアプローチ」で芝居に取り組んでみるのも良いかもしれませんね。安定しようとすれば、いつでも安定できる芝居力があるんですから。

にしても末恐ろしい女優さんですよ。芝居力はもう大人の女優レベルに達していると思います。これから色んな役に触れて「大澤実環」という個性をもっと磨いていけば、非常に素晴らしい女優さんに成長していくことでしょう。今回やったようなハチャメチャな役柄が、彼女の糧になっているといいなあ。

最後の最後、一華をみんなで勇気付けるシーンで「もし本当に止まっちゃったら、私がセットをぶっ壊してリアル事故に見せかけるっすから!」というセリフで笑いが起きていたことが、彼女のキャラがお客様に愛されていた何よりの証拠。自信を持ってドンドン次のステップに進んでいってほしいですね。

小柄な体からは想像できないパワーと音圧。また是非ご一緒して、彼女の新たな魅力を発掘したいなと思っております!

 

○夢野久代役:がーな

去年、アリスインプロジェクトさんの「アリスインデッドリースクール楽園」でご一緒した時より、数段お芝居の実力が上がっていたがーなちゃん。そんながーなちゃんが一番苦戦していたくらい、今回の座組は本当にレベルが高かった。彼女は非常に努力家さんなので、自分がなかなかできなかったシーンを家でもたくさん練習してきてくれたのでしょう。日に日に良くなっていく姿を見るのはやはり楽しかったですね。おそらく彼女の中で「お、この役、ちょっと楽しくなってきた」と思えた頃から、お芝居が良くなってきたというか、キラキラとした華がキャラクターにも出てきました。何度も言うようですが、お芝居の実力はやっていればそのうち付いてきます。彼女は本格的にお芝居を初めてまだ数年なので、苦戦することもあるでしょう。しかし、彼女にはステージの上で輝ける華がある。こればっかりは教えて身につくものではありません。そんな才能を持っているのだから、これからもバシバシお芝居を続けてほしいですね。彼女の活動拠点は名古屋(今はほとんど東京なのかな?)なので色々と苦労もあるかとは思いますが、東京で活動をする際にはできる限りサポートしてあげたい。演劇人として、才能は惜しみなく育てたい。そう思っております。

早乃さんのところでも書きましたが、先の実環ちゃんやがーなちゃんのように脇を支えてくれた役のクオリティが高かったからこそ、今回、座組全体のクオリティが高まったのは間違いありません。脇とはいえ、お客様の感想で久代が良かったというご意見が多かったのも、すべて彼女の功績。ちなみに、一華との読み合わせで、一華が急に普通にセリフを言った時に固まってしまうがーなちゃんの演技は死ぬほど上手かった。あのリアクションを毎回できることに彼女の成長を一番感じました。次ご一緒する時は、さらに良い女優さんになっていることでしょう。今から楽しみです!

 

今回はこの辺で!