さあ、続きです。今回はストーリー2とストーリー3ですね。

 

表題作であるストーリー2『ライナスの毛布』。表題作が一番の悲劇というか後味の悪い作品っていうね笑。個人的には一番好きなストーリーでした。

ここから、ボブジャックらしい?暴走も始まりましたが、結末は非常に悲しくも後味が悪い。いわゆる「世にも奇妙な物語」的なお話。この作品で特筆すべきはやはり兄妹を演じた森岡悠ちゃんと蜂巣のハッチでしょう。まず、なぜこの役にハッチをキャスティングしたかというと、ツイキャスでもお話ししましたが「どうなるか想像できなかった」からです。私は配役を決めるときに「ああ、まさにこの役はこの人だ!」と配役するケースと「う〜ん、この人がこの役をやると想像できないな」というケースがあります。どういうときにどっちの配役をするか…それはなんとなくの勘です笑。年齢的なものも含め、選択肢はハッチかことりでした。デブ二択!ことりはこういう思い悩むシリアスな役をやったことがあるのでしっかりやってくれるだろうなという予想が立ちました。ハッチもシリアスな役をやったことは当然ありますが、こういうテイストの役をやっているのを見たことがなかった。ハッチがどうなるか見てみたいという期待も込めてハッチにやってもらうことにしました。結果、ハッチにして正解だったなと思っております。もちろん作品的にもということもあるのですが、ハッチの成長として今回の役をやらせて良かったと。それは、今までなんとなく気づいていたハッチの演技癖(良くない)などが稽古中から色々と露呈したからです。役者にとって自分の良くない演技癖に気づき、どんどん研磨していくことは非常に大切なことで、その作業を色々できたのは今後のハッチにとってプラスになったのではないかと。ハッチは見た目同様に演技でも個性が強く、そしてその個性でどんな役でもねじ伏せて来れた。個性は役者にとって一番大切な要素。これがないとそもそもキャスティングされません。しかし、個性では乗り切れない役に遭遇したときに、今まで気にならなかったものや足りなかったものが色々と出てくる。今回のハッチはまさにそんな感じでした。もちろん、全てを今回矯正できたわけではありませんが、指摘したことに対するハッチのレスポンスの早さには驚きました。「こいつ、まだまだ良くなるぞ」と楽しみになりましたね。今後のハッチに期待ですよー!ちなみに稽古中に私がマインドコントロールのように何度もハッチに言っていたことは「もっと苦しんで、もっと」でした。ドSでゴメンなさい笑。

そして、森岡悠ちゃん。まさにスポンジ。言ったこと、指摘したことをどんどん吸収していく。学ぼうとする姿勢が強烈なので、こちらも色々と言ってあげたくなる。そりゃ、加速度的に上手くなっていくわけだと。勘も抜群に良いです。声もいい。表情もいい。今回ダンス部隊を除けば、3役やってもらったのですが、それぞれ素晴らしかった。今回の稽古中にもぐんぐんうまくなっていく彼女を感心しながら見ておりました。間違いなく今後素晴らしい女優さんへと益々成長していくことでしょうし、今回も多くのお客様の心に残るお芝居をしてくれたのではないかなと思います。まあ、折角なので褒めるだけではなく今後の課題的なものも。彼女は非常に勘が良い。それゆえ、その役の「とりあえずの正解」を導き出すのが早い。だからこそ、当たり障りのない役作りになってしまう可能性を秘めています。実は「正解の演技」というものが往々にして面白くないということがあります。そうなんです、お芝居は正解を求めるものではないのです。正解を出すのは当然。そこからその役にどういったプラスαを与えられるかが役者の本当の仕事なのだと思います。まあ、それが実はお芝居の本当の面白さであり、難しさでもあるんですけどね。彼女はまだ経験は浅いですが、ポテンシャルなども含め、もうそういった役作りをしても良い段階にあると思います。学ぶ姿勢を保ちつつ、我を出していいところはどんどん攻めていく。いいんです。稽古ではどんどん攻めて、どんどん間違いを出しても。間違いが「演出家も考えつかなかった新しいキャラクター像」につながることもあるので。真摯に役と向き合い、貪欲にそして大胆に役を捉えてみるといいますか。まあ、もちろん「正解を出せ!」という演出家さんもいるので、上記はあくまで私の考えではありますが。とはいえ、様々なアプローチの仕方を持っておくことは間違いなく良いこと。これからも色々な現場を踏んで色々な芝居の作り方に触れて欲しいなと思います。そして、必ずまた一緒に作品作りをしたい。そう思わせてくれる女優さんでした。

はい、お待ちかね。今回のカオス代表、ストーリー3についてです。まあ、我ながらハチャメチャに演出したなあと思います笑。まあ、これもオムニバス作品の醍醐味だということで。まずは民本しょうこ。もう、こういう役所をやらせたらちょっと唯一無二な感じですね。まあ、あんまり劇団員を褒めるのは好きではないので多くは語りませんが。でも、ユメコはおっちょこちょいだけど意外に普通の女の子だったんです。きのこちゃんみたいな「キャラ」ではない。ちゃんと人間臭いところもあって、それでいてぶっ飛んでる。なかなかユメコのあの役作りには行き着かないのかなと。もちろん、稽古中は不安定の極みでしたけど笑。あそこからストーリー4の花ちゃんですからね。違和感なく入れているのはちょっとすごかったなと思います。そして花梨ちゃん。あんな変な奴の品評会みたいな中にいてもしっかり輝ける個性。今回はストーリー1では生っぽい感情のお芝居も披露してくれたし、本当に成長し続けているなあと思います。花梨ちゃんも悠ちゃんに書いたように、自分からもっと提案できるようになると更に高みを目指せるんじゃないかなと。ただ、彼女の良さは(私がそうなだけかもしれませんが)、見ているとどんどんアイデアが浮かんでくるところ。やっぱり花梨ちゃんは演出していて楽しい。…なるほど、そういうアイデンティティもあるんですな。今気づきました笑。彼女もまた一緒にやりたいと思わせてくれる女優さんですね。生田さん。ストーリー3は彼女がキモでした。彼女は何があってもブレてはいけない役所。ミッションコンプリートですね。ストーリー3がお話としてギリギリ成立していたのは間違いなく彼女の功績が大きい。今回は稽古参加期間が短いこともあったので、次ご一緒するときはガッツリやりたいですね。私自身、彼女の魅力をまだまだ引き出せていない悔しい気持ちもあるので。しかし、短い期間でもあのストーリー3にちゃんとフィックスしてくるところは流石の一言。アトミが生田さんで本当に良かった。小島ことり、やっぱり最高のブサイク。ちなみに、稽古中にダメ出しをほとんどしない劇団員はことりだけです。宮井なんちゃら波動拳。今年一年、全部あのキャラでやらせました。本人は大変だったと思いますが、なぜかお声が色々とか掛かってきている不思議。来年はボブジャック以外での宮井くんの活躍を色々とご覧いただけそうです。最古株ですからね。徐々にホットな存在になってきていることが素直に嬉しいです。

 

ちなみに、ストーリー3の終わりが4の始まりとシンクロしたり、ストーリー2の2人が成仏していないなどは全部後付けで考えた部分です。二つとも他の話とは全く繋がりのない話でした、当初は。脚本的な裏話になりますが、実はこういう流れになった最初のとっかかりというのは守山からポロっと出た一言でした。「30代になった北野と若いままの一樹(イツキ)が出会って『なんか老けたね』とか話したりできたら面白いだろうね」…この話を聞いたときに是非とも実現させたいと思い、色々知恵を絞った結果、今回のそれぞれがちょっと繋がっているという展開になりました。一樹が「生まれてきた意味を探している女の子」だったりなどなど、そこから生まれてきた設定が多々あります。何がどう転がるかわからないもんですね。

 

さて、振り返りブログもこの辺で終わりたいと思います。来年の予定はまだボヤッとしか決まっておりませんが、また皆様に楽しんでいただけるような公演ができるように精進していきます。ひとまずは、良いお年を!ありがとうございましたー!

 

あ、年末にかけて、今年の振り返りブログを書かせていただくと思います。お時間あるときにでも読んでいただけると幸いです。