いや〜、今年は怒涛の後半戦だったため、恒例の振り返りブログを書く余裕がありませんでした…。楽しみにしてくださっていた皆さま、申し訳ありませんでした!年末にかけて今年の振り返りブログなどで触れられれば良いなあ〜。

 

さて、次の作品(演出助手ですが)に入り少し時間に余裕ができたので、ホーム劇団・ボブジャックシアターのvol.23『ライナスの毛布』の振り返りブログを書きたいと思います。演出的なちょっと裏話も含めていきますよーー!

 

今回の作品、当初は「完全なオムニバス作品」にする予定でした。今までも番外公演の『オン/オフ』や外部提携公演『終わらない歌を少女は歌う』などオムニバス風作品はありましたが、これらはどちらかというと一つのお話をオムニバス風に話を分けたというものでした。なので一つ一つのお話はひとまずの終わりを迎えますが、広げた風呂敷は畳まず、あくまで「続く…」という感じの終わり方でした。そのため、お芝居の作り方的には実は1本の長編を作るのとあまり変わりません。しかし、今回は最初の企画の段階ではそれぞれが完全に独立した話でした。どちらかというと後付けで諸々の繋がりを作った感じですね。…おっと、結構な暴露話ですね笑。当初、どのようになるかはわからないが、ストーリー1の主人公がストーリー4に出てくるという部分だけありました。それが際立つように敢えてその他のお話の繋がりを作らないという方針でした。ですので、最後の北野と一樹(イツキ)の逢瀬や兄弟の成仏していない部分などはなかったのです。そこから脚本の守山と色々と話し合った結果、色々なところが最後の最後ちょっと繋がってという今回の流れにすることとなりました。やはり、ひとつひとつのお話では広げた風呂敷を畳んだものの、続けて観ると少し消化不良なのかなというものを感じたので。ただ、畳すぎるとお客様の想像を奪うことになるという懸念もありました。その辺りのバランスには非常に気を使いましたね。オムニバス作品だからこそ作れる余白を大切にしたかったと言いますか。ご観劇されたお客様一人一人に、様々な物語のその後を想像して欲しかったのです。そのための沢山のちょっとした物語上の仕掛けがあるのですが…これ以上は野暮ですかね笑。お客様からも色々な物語のその先を終演後に聞かせていただけて「なるほどなあ」と私も感想を楽しませて頂きました。

 

では、ちょっと演出的なお話を。今回、演出をしていて一番感じたことは「感情の流れがいつもより短い」というもの。物語にも起承転結があるように、登場人物の感情の流れにも起承転結があります。ところがオムニバスでは一つ一つのお話の時間が短いため、この起承転結を丁寧に紡いでいくことができない。特にそれが顕著だったのがストーリー1と4ですね。一段一段と階段を上がっていくところを、常に一段飛ばしで登っていく感じとでも言いましょうか。脚本的にもどうしてもそういう部分が出てきます。役者にも当然一段飛ばしで感情を作ってもらう必要がある。しかしただ飛ぶだけではダメなのです。飛んでいる部分を埋める、厳密には埋まっているように見せる必要がある。この部分に役者たちも当初は戸惑い、なかなかうまく感情を上げることができませんでした。どのポイントでジャンプするか、ジャンプするためにどのポイントは絶対に外せないかなど稽古しながらディスカッション。ただ、そこは歴戦のツワモノ達。徐々に掴み、稽古の最終段階ではほぼ自分のものにしておりました。ストーリー1では長橋有沙ちゃんがこの部分を非常に繊細かつ大胆に演じてくれたと思います。彼女の演技が、かなりの行間を埋めてくれました。本当に良い女優さんになったなあと。彼女の最大の良さは、素朴な普通の女の子や女性を演じられるというところ。そして、ここが私の一番好きなところですが、何かを背負わせても暗くなりすぎないというところ。これ、実はなかなかできるものじゃないんです。彼女のパーソナルな部分が大きいのだと思います。見た目や声の質など様々なものが要因だと思いますが、とにかく守山の書く「おもしろ切ない」が非常にぴったりくる女優さん。今回の「ライナスの毛布」が毎公演安定したものになったのは、彼女の功績が一番でしょう。彼女と絡む渡壁と小林加奈さん、花梨ちゃんも非常に良い芝居をしていたし、森岡悠ちゃんも良いアクセントを加えてくれていました。ストーリー1の安定感は本当に素晴らしかったと。毎回、ちょっと違うんですけどね。でもものすごく高いレベルの範囲で演じてくれていました。

そしてストーリー4…、これは本当に丸山と石部雄一さんの功績が大。この2人だからこそ成立し得たのかなとまで思っております。今回、ストーリー4を演出する上で、2人に投げかけたのは「セリフをセリフっぽく流暢に話さないで」ということと「ある程度のシーンの起伏の流れ」のみ。もちろん、演出としての微調整はしましたが、とにかく2人に「演技合戦」をしてもらいたかった。変にディスカッションやすり合わせをすることなく「俺はこう演じる。お前はどう来る?」「なるほどそう来たか。じゃあ、こっちはこう返してやる」とある意味エゴを出してもらいたかった。そしてそのぶつかり合いは非常に静かに、でも熱く。この辺りの攻防は稽古中から観ていてワクワクしましたね。そんな演技合戦の中、行間を埋めるジャンプをする時はお互いに協力して飛ぶという離れ業もやってくれました。ある程度まで来た段階での私のダメ出しは「今日は良くなかったね」「今回はかなりグッときた」というのみ笑。私としても今までにやったことのない作り方でした。いや〜、楽しくて刺激的でした。演出としてもっとお互いのバランスを取ったりなどしても良かった部分はあるかもしれません。しかし、それではあのなんとも言えない緊迫感は出せなかったんじゃないかなと。今は、今回のやり方で間違いなかったと自信を持っております。客席までも巻き込んだ2人の醸し出す緊迫した空気は圧巻でしたね。おそらく観劇した役者さん達は2人に嫉妬すら覚えたのではないでしょうか。本当に素敵でした。

 

長くなってきたので、ストーリー2とストーリー3については次回書きますー。