さてさて、今回は『降臨ハーツ』の世界を彩ってくれたキャスト陣について書きたいと思います。

沢山いましたのでね、ちょいと時間かかるかもしれませんが。

みんなの今後の活躍と成長を祈ってエールを送る意味で書かせていただきますー。

 

◯沖田つかさ役:飯野雅さん

今回、座長を勤めてくれた飯野さん。多くのキャストが「今回の座組、ものすごく雰囲気が良かった!」と言ってくれておりますが、それは彼女が座長だったということが大きな要因だったと思います。時にはおバカに、そして熱く演じるその姿でしっかりと座組を引っ張ってくれました。小屋入りした日、キャスト陣が集合した時にキャストを代表してスタッフ一同に今日からお世話になります的な挨拶をしていました。まだ若いのに本当にしっかりしてるなあと感心したものです。かと思えば、みんなの前でバカなことをやったりとムードメーカーにもなってくれ、本当にありがたかった。

沖田つかさは非常に難しい役でした。最初、一見悪者のような描かれ方をしますが、実は心の底では物語の世界に疑問を持っており、流れに翻弄されるようにその立ち位置を変えていきます。しかし、彼女の中には「学園(世界)の治安を守る」という責務が常にあり、何が正しくて正しくないかがわからないような状況下でも必死に自分というものを保とうとする。ある意味、一番弱い人間なのかもしれません。拠り所を失った時に最も崩壊してしまうタイプの人間。彼女は抗い続けます。しかし、その先に待っていたものは、とてつもない喪失感でした。最後、沖田総司に「終わらせようか?(殺してあげようか?)」と言われます。あきらたちに出会い、戦いに遭遇する前のつかさであれば、終わらせる選択をしていたでしょう。しかし、彼女は生きる選択をします。この先どんなに辛く悲しいことが待っているかもしれないが……。つかさの選択した「それでも生きる」ということが、この物語が示すある種の生命の讃歌でした。

ね?自分で書いていてもなんて難しい役なんだと思います。本人も苦戦していたようですが、日に日に沖田つかさに迫っていきました。彼女の最大の武器はレスポンスの速さとカラッとした性格でしょう。非常に演劇向き。稽古をしていて少し女子っぽいところが出たら「女子出てるよ!」と注意。それに対して「わっかりました!」とカラッとレスポンス。非常に演出しやすかった。苦戦していたように見えた彼女が、稽古終盤ではかっこいい、ラズアズール隊長に変貌しておりました。稽古当初とは本当に別人の演技をしている彼女が舞台上にいました。稽古を通して、最も変わった・成長したキャストの一人だと思います。短期間でのこの変化。今後のさらなる飛躍が楽しみですね。

 

◯大江戸まつり役:野口真緒さん

野口さんは若くしてたくさんの経験を持つ女優さん。稽古当初からかなりのクオリティの演技を見せ、座組を引っ張ってくれました。役作りに関してはほぼほぼ彼女に全面委任しました。任せて安心!だって、本当に稽古の最初の段階から、その役を深く考察しなければ出てこないようなセリフの言い方や表現をバシバシ出してきてましたから。少しだけ、本人が悩んでいたところも、アドバイスをしたら次の稽古からはそれをものにしてくる。レスポンスも早いし、本当に素晴らしい女優さんだと思います。脚本を読んで、その役を構築する勘というかセンスが抜群なんですね。演技的ミスもほぼしない。だからと言ってただ安定感があるだけで女優さんではなく、パーンとやりきる爆発力も持ち合わせている。なおかつ、繊細な感情表現も素晴らしい。ホント、完璧か!と言いたくなります。ダンスもうまいですしね。スーパーハイスペック。その中でも私としては、やはり彼女の繊細な感情表現にものすごく惹かれました。今度ご一緒する機会があるときは、ストレート芝居で存分にその感情表現を発揮できるような作品で演出してみたい。もっと彼女に負荷を与え、グッとしたところで彼女から出てくる表現を見てみたいです。またまた、お気に入りの女優さんが増えました。ご一緒できる機会がきますように!

 

◯岡田いちか役:青葉ひなりさん

青葉さんは、自身が所属しているグループの活動も忙しく、そんな中で本当に頑張っていました。演技経験がなかったわけではないようですが、前回舞台に出てからかなり時間も経っていたみたいで、正直最初の頃は「だ、大丈夫かな」と思っておりました笑。ただ、彼女の独特の雰囲気や声が本当に岡田いちかという役にはまっていたので、うまくいけば絶対に良いキャラクターになると信じておりました。一つ一つ課題をクリアしていき、最終的には私の予想を遥かに超える岡田いちかになってくれました。普段のふわっとした彼女からは想像できないくらい向上心も高く、稽古が終わった後や本番中も「もっと上手く演じるためにはどうしたら良いですか?」と度々私に聞いてきたりもしていました。内に秘めた闘志は素晴らしいものがあります。彼女の最大の魅力は、独特な雰囲気と佇まい、そしてこれまた独特の声でしょう。演劇的なボイストレーニングや発声をもう少し学べば、彼女にしかできない役の造形が可能になると思います。いや~、非常に面白い存在ですね。グループ活動と女優活動を並行して行っていくのは大変かもしれませんが、やはり演劇人としては是非舞台も続けて欲しいなと思います。高瀬川すてらさん演じる岡田以蔵とのバランスというか凸凹コンビ感が秀逸でしたね。マイナスイオン出まくりの青葉さんが、最後の方で必死に叫んだり、感情を爆発させたりするシーンは毎回私も見ていてグッときておりました。間違いなく、最も成長したキャストの一人です。また、ご一緒できるといいね~。

 

◯西郷あきら役:橘はるかさん

本当に勘の良い子。これが2回目の舞台とは思えない安定感とステージ度胸。彼女はほぼミスがありませんでした。オーディションでお会いした時に「うわ~、西郷あきらがいる!」と思ったほど、今回の役にぴったりだったと思います。どうやら、私は彼女の演技に弱いらしく、稽古中から西郷あきらが必死に話していたり頑張っていたりする姿を見るとなぜだか目頭が熱くなりました。声も本当によく通るし、良い女優さんが出てきたな~と思います。今後、舞台に立てば立つほど、彼女は加速度的に良くなっていくことでしょう。色々な役所に挑戦して、是非演技の幅を広げていって欲しいですね。

小さな体を目一杯使った演技や明るくも切なくも聞こえる声、嘘のない感情、本当に色々な良さを持った彼女ですが、私が特にすごいなと思ったのが「客観視できる」能力。稽古中からそうだったのですが、彼女は役に入ってグッと演じている時も、冷静なもう一人の自分がいるんです。もしかしたら、本人はそれを無意識にこなしているのかもしれませんが、これはお芝居をしていく上で本当に重要な能力。北野たけし監督が役者の難しさを「どんなに役に入り込んで演じていても上空からそんな自分を見ているもう一人の自分がいないといけない」それはある種超人的…みたいなことをおっしゃっていましたが、彼女はそれをやっているように感じました。本人に確認したわけではないのでわかりませんが、それを感じることが多々ありました。もしかしたら、とんでもない女優さんになるかもしれませんよ~。楽しみな逸材!

 

◯西郷隆盛役:山本太陽さん

今回、最後に出演が決まった太陽くん。いや~、太陽くんが座組に入ってくれて本当に良かった。一家に一台、山本太陽!いてくれると座組が締まる。ムードメーカーにもなってくれるし、個々の出演者にアドバイスしたり注意したり、本当に恩恵が多岐にわたる。演技についてはほぼ何も注文しておりません。綿密なリサーチによる役の造形は今回も健在で、今までにない新しい西郷隆盛像を作ってくれたと思います。あんなにもかっこいい西郷隆盛、見たことありますか笑?。上野の銅像からは想像もできないような役作り。でもちゃんと西郷隆盛に見えるからすごい。

今回、座組の平均年齢が若かったこともあり、太陽くんや高瀬川すてらさんのような大人組がしっかりと座組を締めてくれていました。やはり、楽しく明るいだけでは座組はいつかバランスを崩してしまう。大人キャストがいることが座組に安定をもたらします。私も当然全てを見れるわけではないので、私の知らないところでも座組に大きな良い影響をもたらしてくれていたのだと思います。にしても、今回も大人の迫力と大人だからこその余裕とチャーミングさが遺憾なく発揮されておりました。なんなんでしょうね?あの説得力は。西郷隆盛は劇中で色々な提案や考えを述べるシーンがあるのですが、非常に説得力がありかつそれをテンポよく伝えてくれるので見ていて安心感しかありませんでした。橘さんのとバランス・相性も抜群でした。存在自体が、座組と作品のクオリティをあげてくれる。また是非ご一緒したいですね。

 

◯リュウ役:増田みなみさん

なんとも言えない舞台上での落ち着きと懐の深さ。特に何かをしているわけではないのにオーバーロードのリーダー感がすごかった。普段はおっとりしたマイナスイオン出まくりの子なんですけどね。舞台上での頼り甲斐が半端なかったと思います。リュウは説明台詞が多かったので、台詞をしっかりとわかりやすく、キーワードを立て言って欲しかったのですが、そのあたりの演出もすぐにレスポンスをしてくれ、やりやすかった~。そうなんです。今回の世界観の水先案内人はリュウだったのです。増田さんの演技が安定していたので今回の公演は多少のできの差はあったものの安定した回が多かったのだと思います。そういう「説明」部分での演技のクオリティは稽古後半から本番を通じて非常に安定していました。本番に入ってからはその安定した演技にかっこよさや感情的ゆらぎも入り、素晴らしかったと思います。公演中のツイッターでも呟いたのですが、私はオーバーロードメンバーの話にものすごく弱かった。彼らは凄惨な戦地から逃れてきた人々。ここからは僕の想像であり勝手な妄想です(役の年齢設定なども無視)。リュウ、シュウ、ミツは、ストリーマーズの攻撃で仲間たちが次々と命を奪われる中、命からがら逃げ延びます。そして別の時空へ行こうとしたその矢先、戦火の中、座り込み泣きじゃくる小さな二人の女の子に遭遇。ハンナとクラリスです。彼女たちはまだ幼く、殺戮された両親の遺体に寄り添って泣き叫んでいます。3人は身の危険を顧みず、幼い二つの命を救い出します。そして、彼女たちを連れ、別の時空に逃げ込みます。ハンナとクラリスを守りながらも、時空を転々とし戦い続けるオーバーロードの3人。そんなある日、大きくなり、自分の意思を持ち始めたハンナとクラリスが、自分たちも戦いたいと訴えてきます。戦いを教えることは二人を危険な事態に巻き込む恐れがある。リーダーであるリュウは葛藤します。しかし、二人の意思を尊重し、二人にオーバーロード内での役割を与える。役割を持つ、それは絶望した二人が再び自分たちの足で立ち上がるためのものでもあった…みたいな想像をしていたので、彼女たち全員がいつか幸せになってほしいと思って見ていました。物語中盤、坂本龍馬が「自分たちの世界を奴らに攻撃された」的な発言をしている時の、ハンナとクラリスがキュッと縮こまって話を聞いている様がなんとも切なくて…。おっと話がそれてしまいましたね。

影のMVP的な役割を果たしてくれたキャスト、それが増田みなみさんでした。ナイス安定感!

 

◯坂本龍馬役:真島なおみさん

とにかく存在感!役としての存在感ももちろん素晴らしかったですが、彼女は普段から存在感がすごかった。オーラというやつですかね。いわゆる持ってる人なのだと思います。

存在感やオーラというものは演出をつけられないものですからね。すごいことだと思います。もちろん、経験を色々重ね、どんどんオーラが出てくる人もいるかとは思いますが、弱冠20歳にしてあの存在感は純粋にすごいと思います。まだ20歳なのにあの存在感だから、多分いろんな現場でもっと大人だと扱われることが多いのだと思うんです。持って生まれた宿命ですね。大好きな映画スパイダーマンシリーズに「強大な力を持つものは、その分責任も生じる」的な言葉がありますが、そんな感じなんだと思います。だから私たちの知らないところでは色々と苦労もあるんだろうなと。だからこそ、年齢的にも大人になっていき、自分の存在感と年齢的なものが近づいてくるこれからが、彼女の本当の輝きが発揮される時期なのではないかと思います。今でもバシバシ輝いていますが、もっともっと上に行くようなそんな雰囲気がプンプンです。

彼女自身も言っていましたが、坂本龍馬という超絶人気キャラを演じるということは非常にプレッシャーだったと思いますが、よくぞ跳ね返してくれました。彼女は他の男性キャラを演じた子達とは違い、特に男性的な演技をしていたわけではないのですが、その存在感と演技パワーで男性顔負けのキャラ造形ができていたのではないかと思います。確かな演技力もあるし、感情的な表現も非常に繊細だし、しかも歌もメチャクチャ上手いらしいですからね。これから訪れるであろうビッグチャンスを彼女なら確実にものにできるのではないでしょうか?今後の活躍が本当に楽しみな子ですね。また是非ご一緒したいなあ。

 

◯高杉しずか役:中原ありすさん

彼女はとにかく声が特徴的で良いですよね。感情がものすごく声に乗るといいますか。しばらくブランクがあり、今年あたりから舞台の活動を再開したみたいですが、そんなブランクを感じさせない素晴らしいお芝居を見せてくれました。しずかという役は、この物語をスタートさせ転がして行く重要な役割。その役を中原さんに託した私の選択は間違っていなかったと胸を張って言えますね。彼女は闘志を外に向かって出すタイプではないのですが、うちに秘めたる闘志はものすごいものがあると思います。非常に頑張り屋さんですし、クレバーなところもあり、今後もどんどん経験を積んで行くでしょうし、もっともっと素晴らしい女優さんになることでしょう。今回のような熱い作品でも彼女の良さは十分に発揮されていたと思いますが、やはりストレート芝居をする彼女にも期待せずにはいられません。

最後、死を覚悟した戦いを前にして、武神である高杉晋作と交わされる会話は本当に素晴らしかった。彼女の「楽しかった。生きててよかった」というセリフに、高杉しずかという女の子の人生全てが盛り込まれているような演技。いつもいつもブース(スタッフの席)で涙ながらに観ておりました。やはり、彼女のあの声で発せられる感情的なセリフは本当に胸に響く。あと、もう一つ!彼女の最大の魅力は気品と上品さです。これ、女優さんには本当に必要な要素だと思うので、今後もさらに素敵な女優さんに飛躍していけるよう頑張ってもらいたいです。今度は、ストレート芝居で是非演出してみたいなあ。

 

長くなりましたが、とりあえずはこの辺で。