さてさて、いよいよ今日で振り返りブログも佳境です。ラストを飾るのは物語Cのキャスト陣についてです。一番佳境の物語。物語Bと物語Aのバトンを受けてラストに繋げる難しい物語でしたが、キャストたちがしっかりと演じてくれました。

 

○真野朝美役:針谷早織さん

物語Cの主人公であり、静かに迷いながらも再起動の方法を探し続けるという難しい役どころ。不安や葛藤など細やかな心の表現、つまり大人な演技が求められる。彼女は今までギャル系とかの役が多かったらしく、最初は不安だったみたいですが堂々と演じてくれたと思います。当初は大人っぽさを意識しすぎて少しローテンションな演技になっていましたが、次第に掴んで来たのかただ静かなだけではなく色々な感情の流れを出せていたと思います。朝美が最後の最後、メインフレームが再起動せずに追い込まれ、必死に「再起動してよ!」と叫ぶシーンは本番後半くらいからどんどん良くなり、それまでの様々な感情を抑えて任務に徹していた朝美の本当の叫びが聞けた気がして胸が熱くなりました。こういう役というのは本当に難しいと思うんですよね。やりすぎてもダメだし抑えすぎてもダメ。バランスが求められる。しかも元々物語C自体が難しいものだったんで尚更ですね。非常に頑張ってくれていたと思います。彼女は私的には器用な子だと思うんです。演出したことを結構レスポンス早くできてしまう。ただ、器用なだけにそのレスポンスがマイルドな感じで着地してしまいがち。100%、時には120%ドーンと行き切れるようになってくれば更に演技に磨きがかかってくると思います。今回はその片鱗を見せてくれました。これからどこまで上がっていけるか楽しみです。ハスキーな声も感情的なシーンでは生っぽくなるはずなので今後の武器になるでしょう。あと、幼くも大人っぽく見える見た目も武器ですね。ミステリアスな役とか面白いかもしれませんね。そして何と言っても華がある。やっぱり役者にとっては華が大切ですから!今後は女優としても頑張って行くみたいなので、これからが非常に楽しみな存在です。

 

○ハジメ役:松永真穂さん

松永さんはメインキャストの中で唯一の初舞台。かなり重要な役どころだったし、プレッシャーもあったと思います。しかし、元々セリフの読み方や声の感じが非常にハジメにマッチしていたので、あとはお芝居に慣れるのをじっくり待つだけだなと思っていました。実はハジメの演出の仕方自体を私もどうするか迷っていた部分がありました。ハジメは他のアンドロイドたち(シンギュラリティを超えたAIたちが作ったアンドロイド)とは違い、朝美(人間)が改造したものです。悪い言い方をすればポンコツなアンドロイド。なので感情の波がない、いわゆる「ロボット」っぽい演技をしてもらった方が良いのか?それもとあまり気にせずロボットさにこだわらずに演出するか?悩みました。結果的には二つをミックスしたような感じになったかなと。彼女の演じ方ややりやすさを考慮したら自然とそうなった感じ。正解だったと思います。美雪を撃つところから美雪との最後の別れまで、最初は淡々と演じてもらっていたのですが、どうもしっくり来ず、普通に感情を出してやってもらうことにしました。しかし、まあいきなり言ってできれば苦労しません。最初は苦戦しておりましたが、あるポイントでスイッチを入れてもらうようアドバイスしたところ、急にめちゃくちゃ良くなりました。良い感性を持ってるなあと驚かされたものです。感情表現もものすごく良いものを持っているので、今後もお芝居を続けてくれるといいなあ。そのためにも滑舌や動き方などお芝居に必要な「器」の方もバンバン鍛えて欲しいですね。「器」がグレードアップすれば間違いなくお芝居の幅が広がるので。

 

○熊谷時代役:井上貴惠さん

きえちゃんは、最初なかなか稽古にも参加できず、役作りに苦戦しておりました。彼女の良いところは「めげない」というところ。彼女にはあれこれ注文をつけ、結構細かくダメ出しをしました。時代は難しい役どころ。とにかく説明台詞が多い。でもそれが説明説明した感じになると面白みがなくなる。時代の飄々としたあのキャラがあれこれ豊かに話すので説明臭さを消すことができる。私にとって物語Cのキーポイント的な役でした。時間もなかったのですが、最後の最後まで彼女には注文をつけました。しかし、きえちゃんは落ち込んだりめげたりすることなく頑張って食らいついて来てくれました。まあ、私の見ていないところでは落ち込んだりしていたかもしれませんが笑。お芝居をする上でこの「めげない」精神は非常に良い武器になると思います。稽古終盤くらいからは伸び伸びと演じることができるようになり、本番では物語Cに「説明」と「硬くなりすぎない空気」を与えてくれたと思います。彼女の声って明るいんですよね〜。良い特徴だと思います。明るい声の人に難しいセリフ言わせるのいいなあと思いましたもん。時代みたいな役はいわゆる「名バイプレーヤー」的な人たちが演じる役。飄々とどこか掴み所なく、でも心に実は熱いものを持っている。本当に難しい役だったと思いますが、よく頑張ってものにしてくれたと思います。元々声が大きいのは武器になりましたね。最後には声を枯らしての熱演。お見事でした!稽古当初、「役としてもっと偏差値高い感じにしようか」とか失礼なこと言ってごめんね笑。またご一緒できるのを楽しみにしております!

 

○真野美雪役:仲野りおんさん、佐藤愛さん

変則ダブルキャストなお二人。本番に入ってからの調整などなかなかに難しかったと思いますが、しっかり演じてくれました。りおんちゃんの演じた美雪は「純真無垢な少女」、愛ちゃんの演じた美雪は「元気(本当は体がよくないのですが)で明るい少女」。全然違う美雪だったと思います。

りおんちゃんは今回で2回目のご一緒だったんですが、台詞回しとか感情表現とかこの稽古中にかなり成長したと思います。りおんちゃんはとにかく声が良い。独特な響きのある声。やはり人とは違う部分というものはお芝居では大きな武器になる。彼女のあの声で発せられたセリフはものすごく「純粋にそう思ってるんだなあ」という印象を受ける。ちょっと弱々しくもあるがまっすぐで嘘のない響き。あと、キャラ的に抜群に美雪に合っていました。ハジメとの身長差も愛らしくて良かった。最後の弥生と言い争うところやハジメを追っかけてくるところは最初苦戦していましたが、稽古終盤では気持ちをしっかり出してやれるようになれましたし、本番ではさらに良い演技ができていたと思います。りおんちゃんの良い素材を上手くキャラに乗せたお芝居ができていましたね。

愛ちゃんには少し演出的なアドバイスをしました。愛ちゃんのお芝居の良いところは、やはり歯切れの良さとパワー。課題はその元気なキャラにセリフのニュアンスやしっとりとした感情を入れられるかということでした。愛ちゃんは良い意味でも悪い意味でもセリフをポンポン言う。良い意味ではセリフにエネルギーとテンポが出るのですが、悪い意味では情感がなくなってしまう。でも情感ばかりにこだわると愛ちゃんの良さが薄れてしまう。なのでお芝居的な緩急を意識して役作りをしてもらいました。簡単に緩急と言いましたが、これが難しいんですよね〜。最初は油断するとどうしてもセリフが走ってしまったりしていましたが、徐々に情感も出て来て良いバランスで元気と優しさが混ざった演技ができていたと思います。そして、ラストシーンでは愛ちゃんの持っている爆発力が炸裂していましたね。あんな叫び、心揺さぶられるわ!歌も人一倍大きな声で歌ってくれたし、素晴らしかったと思います。キャラクターは違えど、どちらも素晴らしい美雪だったと思います。

 

○メインフレーム(ハルカ)役:生田善子さん

実は、このメインフレームのキャスティングが一番最後まで決まっていませんでした。稽古開始後1週間以上経ってからですかね、決まったのは。いや〜、生ちゃんがキャスティングされたのは本当にラッキーでした。ご覧になられた方はお分かりになると思いますが、メインフレームはほぼ動きません。舞台上に出てくるために少し歩いたりはしますが、基本舞台のセンター上にいます。なのでお芝居がほぼ声だけの表現力に頼ることになる。これはセリフの情感とかニュアンスをかなり上手く出せる人じゃないと難しいぞ・・・とキャストが決まるのを待っていましたが、まさにうってつけの方がキャスティングされた!という感じでした。抜群の存在感を出してくれたと思います。純粋にお芝居やセリフの言い方がハイレベルなので物語の中心にズシンという感じがよく出ていたと思います。

もちろん声だけではなく、立ち振る舞いやちょっとした動きにもしっかりとニュアンスを加えてくれて、まさに「人ではないもの」になっていたと思います。挙句彼女は「人っぽい!」ということで自分で下まつ毛を全部抜いてしまいましたからね。狂ってますよ!いや〜好きですね〜そういう役者!そして素晴らしかったのは物語Cでの回想シーン。それまで機械的だったメインフレームがあゆみに優しく語りかけるシーン。あゆみが「そんな言葉が聞きたいんじゃない!」と飛び出して行った後のメインフレームの「あゆみ・・・」というセリフ。なんとも言えない切なさを醸し出していたのは圧巻でした。私の劇団ボブジャックシアターにも興味を持ってくれているみたいなので、是非劇団公演にも参加して欲しいですね。今度はめちゃくちゃ人間臭い役で!

 

さて、次でいよいよラストです!明日には書きます!明日が集大成だ!!