はい、というわけで振り返りブログの第二弾です。今回は作品に命を吹き込んでくれたキャスト陣について。大所帯の座組だったため書き上げるのに時間がかかるかもしれませんが・・・。

今回は三部作ということもあり、各物語ごとに進めていきたいと思います。たまにはいつもと書き方を変えないとねっ。

 

【物語A:終わらない歌】

○中森あゆみ役:相笠萌さん

今回の作品は三部作ということもあり、明確にこの役が中心!という役がなく各物語に主人公がいる感じでした。ただ、やはり物語全体を通じての中心はこの「中森あゆみ」だったと思います。それだけに、普通の主人公よりももしかしたら演じるのが難しい役だったかもしれません。そんなあゆみを抜群のバランスで演じてくれました。決して物語的に前に出るタイプの役ではないのですが、しっかりと常に物語の中心にいてくれました。座長としてもこの大所帯の座組を引っ張ってくれました。背中で引っ張るタイプですね。セリフもいち早く覚えてくれましたし。

萌ちゃん、とにかくこの1ヶ月ちょっとでものすごくお芝居が上手くなったと思います。発声の仕方、セリフの明瞭さ、滑舌、感情表現、表情、目線の演技etc、稽古当初とは別人と言っていいくらいだと思います。まあ、彼女は最初からお芝居経験が1年未満とは思えないほどしっかりしたお芝居をしていましたが、今回の公演を通じてなんか「女優」としての凄みまで出てきたというか。まず特筆すべきは萌ちゃんはミスがほとんどない。とにかく芝居にブレがない。もちろん感情的なシーンなどは公演ごとに多少のブレはありますが、それでも高次元でのブレです。芝居が安定しているというのは役者としてものすごく大切だと思います。とにかく安心して観ていられました。特に今回は主役ですので、主役がブレないというのは作品にとってものすごく大きい。そしてやはり、繊細な感情表現には目を見張るものがありました。私の大好きな感情表現というかですね、とにかく萌ちゃんの感情はどの場合も一色ではないんです。なんか色々なものが混ざっているように感じる。複雑に感じるからこそ、ちょっとしたセリフや表情にハッとする。表に出ているものはちょっとしたものなんですが、その中身がものすごく濃厚。感情表現って、パーンと外に出すことができる人は多いのですが、ちょっとだけ出してその一端から濃厚な中身を観ている側に想像されるということができる人が案外少ない。特に若い役者さんは。彼女はそれができる。多分鍛えたとかではなく才能なのだと思います。だからこそ、舞台だけではなく映像とかでも良いお芝居をする女優さんになるのではないでしょうか?

静かな役、演技なのにしっかりと作品の真ん中にいる。これ、なかなかのことだと思います。本当に末恐ろしい。とにかく、ものすごい可能性を秘めている萌ちゃん。これからもメキメキ女優としての凄みを身につけていくと思います。非常に今後が楽しみですね。またご一緒したい!

 

○美空晴子役:小原莉子さん

今回の作品、彼女なくしては成立し得なかったと思います。それほど重要な役割を果たしてくれました。前のブログでも書きましたが、元々舞台上で弾き語りをやりたいと思っていたので、ギターの弾けるキャストが必要で、アリスインさん側にも事前にお話をしておりました。そこでキャスティングされたのが莉子ちゃんでした。しかも、今回は役としても準主役。晴子を助けるための1時間50分(その結果あゆみを慰めることになる)ぐらいの勢いでしたから。元々はアコギでの弾き語りだけの予定でしたが、エレキが本職と聞いたので無理言ってエレキも弾いてもらいました(ネタとして)。するとそこから「オープニングでもエレキを弾いちゃいましょう」という流れになり、急遽振付のリズと相談してエレキの演奏も入れました。今思えば、たくさんの負担をかけて申し訳なかった・・・。しかし、彼女はお芝居に演奏に歌にと黙々と取り組んでくれました。彼女のおかげで作品全体のクオリティが何倍にも膨れ上がったのは間違いありません。お芝居においても一切妥協はせず、キャラのことやセリフの言い方、感情の表現など色々質問をしてくれました。本当にストイック!舞台上のあの晴子のキラキラした笑顔は、そんな彼女を微塵も感じさせない太陽の暖かさ。こんな頑張り屋さんがいるんだ!と驚かされました。今回の物語Aの配役のバランスは本当に最高だったと思います。自分的最大のファインプレーの一つですね。三人とも見た目も声も芝居の仕方もバラバラ。しっかりと色分けができている。莉子ちゃんは声優さんをやっているので他の二人に比べてセリフをかなりはっきり明瞭に言います。これは良い悪いの話ではなく。だからこそ晴子にぴったりだったなと。あの笑顔、そして喋り方、ビッカビカの太陽でした。また、そんな晴子が三人の中で一番小さいっていうのもいいんですよね〜。舞台に立ったのはこれが2回目くらいとのことですが、いや〜、莉子ちゃんはこれから舞台女優としてもバンバン人気が出るんじゃないでしょうか。今回の作品だけでも相当ファンも増えたのでは?それほど舞台上で輝いていたと思います。本当にお世話になりました!あなたが出演してくれて本当に良かった!

 

○松田佐江役:寺田真珠さん

真珠ちゃんは今回ご一緒する前、私がやっている劇団ボブジャックシアターに昨年出演してもらいました。その時が初舞台。あれから数回の舞台を経て、今回9ヶ月ぶりのご一緒。びっくりするほど上手くなりました。正直、稽古当初はそこまで上手くなったなあと感じていませんでした。というのも、彼女は元々初舞台の時からお芝居上手でしたから。みなさん、彼女のぶっ飛んだキャラに惑わされているだけです。それがこの1ヶ月でびっくりするくらい上手くなったというか芝居が豊かになったというか。彼女のお芝居センスは本当に抜群です。私は演出するときに「こういう風にやって」と実際にやって見せることが結構あるのですが、彼女は「こういうイメージでセリフ言って」「こういうテイストの芝居をしてほしい」と言葉で伝えるだけで、いきなり出来てしまう。この辺は相笠萌ちゃんも同じかもしれません。彼女にも実際にやって見せたことが一度もない。ニュアンスを伝えると出来てしまう。本当にセンスが素晴らしい。稽古当初、まあ当然といえば当然ですが、独白のなんたるかを分かっていなかったのでほぼ0点の独白の言い方をしていました。しかし「この独白は佐江が、晴子を失ったことに対して一つの区切りを付けるために書いた日記や物語を読んでいるイメージ。どっぷり悲しみの底にいるのではなく、完全に心の傷は癒えていないけど、歩き出しているイメージ」「独白はリズム」と伝えると自分で考え、メキメキ独白をものにして行ったのです。本当に驚きましたね。また、今回は感情表現も実に繊細なものを見せてくれました。そして持ち前の遊び心も失わず、本当に良いバランスでやってくれたと思います。佐江という一見テンプレートになってしまいがちな役を真珠ちゃんがものすごく豊かなキャラにしてくれました。あと、彼女はお芝居をものすごく楽しそうにやる。だから演出していて本当に楽しい。ちょっと民本に通じるものがありますね。色々やらせてみたくなるというか。そういう部分もあったので、今回彼女を佐江という役にしたのもあります。真珠ちゃんがどうなるか見てみたかった。いや〜、この配役は大正解でしたね。近いうち、またボブジャックシアターにも出てもらいたいなあ。

 

○近藤千佳役:民本しょうこ

言わずもがな、私の劇団の看板女優。モンスター。今回も大いに暴れまわってくれました。まあ、あんまり自分のところの役者を褒めるのも気持ちが悪いのでほどほどにしておきますが、やっぱり民本とやるのは楽しい!純粋にそう思います。これほどまでに私の演出欲を刺激してくれる女優はいませんね。

今回は面白だけではなく、生徒への想いとか大人の部分も出していこうと話し合ったのですが、その辺もしっかりやるところが女優として様々なものが身についてきたんだなと思います。にしても、舞台上に出てくるだけでお客様が笑ったり笑顔になったりってどういうことだよ!今回も民本無双が発動してましたね笑。物語の最後、良すぎる感じで終わりたくなかったので民本を使ってまたひと笑いを取りましたが、あそこで確実にとってくれるのは本当にすごいなあと思っておりました。もちろん、そこまで持ってきた出演者全員の想いがあったからこそ、あそこでお客様が笑ってくれたのだと思いますが、「ランナーを貯めて、確実にホームに返す4番バッター」という風格が漂っていました。絶好調の時の松井秀喜を彷彿とさせる活躍でした。

今回もさすがの一言!

 

やはり書くと長くなってしまいますなあ・・・。まだまだ言い足りないくらいですが笑

次回は物語Bのキャスト陣についてです。