6月7日から11日まで池袋のシアターKASSAIにて上演させていただいた、劇団6番シード番外公演『ごめんなさいが言えない人々』が全9公演無事に終了いたしました!ご来場いただいた皆様、ご声援くださった皆様、本当にありがとうございました!

 

パンフレットの挨拶にも書かせていただきましたが、本当にプレッシャーがハンパなかったです笑。6番シードの脚本演出である松本さんは、本当に緻密にはっきりとした狙いを持って作品を作るお方で、公演を観るたびに「うわー、すごいなあ。よくここまで計算して作れるなあ・・・」と感心しておりました。

そんな松本さんに代わって演出をするわけですからね、期待と不安が入り混じった状態で作品作りに始めました。何より、松本さんの長編を演出するのは初めてでしたから、脚本の感じに慣れるのにも少し時間がかかりました。

そんな産みの苦しみに苛まれていた私を助けてくれたのは間違いなく今回出演してくれた10人の役者たち。松本脚本を良く理解している6Cのメンバーや出演経験のある客演陣、いつも通り稽古場で色々ぶっ込んでくれたボブジャックシアターのメンバーたち、本当にありがたかった。なので途中からはあまり難しく考えずに「彼らと一緒に面白い作品を作ろう」、「みんなの個性を炸裂させよう」と肩の力を抜いて演出をすることができるようになりました。

稽古中盤からは、丸山曰く「狂った演出」がいつも通り色々と浮かぶようになり、どうすれば良いかわからない部分などはキャストの土屋くんに相談したりしてシーンを固めていきました。土屋くんは稽古中も色々提案してくれたり問題提起してくれたり、本当にたくさん助けてもらいました。将来的にはぜひホームであるボブジャックシアターにも出てもらいたい。もっとディープなところで彼とは再び作品作りがしたいと思っています。

 

さて、松本さんの脚本を演出してみての感想ですが、本当に脚本が緻密なんです。何気ないセリフが伏線ではないけど他の部分にかかっていたり、シュチュエーションの面白みで笑いを取るところとか、本当に無駄がない。隙がない。私はどちらかというと、脚本の面白さを正確に伝えるというよりは、まず脚本に遊びを入れてぶっ壊し、そこから徐々に脚本の正しい面白さへとすり合わせしていくというスタイルの演出をします。なのでちょっと逸れた笑いのシーンや感情表現を逆手でやってもらったりなどなどが盛り込まれていきます。そして、そこからどうやって、どこで着地して本流に戻すかということを考えながら作ります。松本さんの脚本は、この遊びを入れ込む隙間を見つけるのが大変でした。もちろん入れ込むからにはさらに作品が面白く豊かにならなければいけません。入れ込むことでそうなる思える隙間がなかなか見つけられませんでした。でも臆していては何も始まらないので、実際に役者に「ちょっとここでなんかやってみて」とやってもらったりして徐々に隙間を見つけていきました。まあ、その作業が楽しかったりしたわけですが笑。

あと、松本さんの脚本の全部がそうなのかはわかりませんが、第1章「○○○」第2章「□□□」と脚本なのに章ごとにタイトルが付いてるんです!私は初めて見ました、そのスタイル。それがすごく面白かったので「これをお客様に見せない手はないな」と思い、あの移動パネルを使った演出を思いつきました。高畠と姐御が倉庫に立てこもった時の章のタイトル「ごめんなさいどころの騒ぎじゃない」(実際にパネルに書いた文です)は秀逸です!

 

とまあ、色々ありましたが、ご観劇いただいた皆様から多くの涙チョチョ切れるご感想をいただいたことで全てが報われました。本当に猛烈にしこたま嬉しかったです!一番多かったご意見が「6Cでもボブジャックでもない。新しい感覚の作品!」というものでした。そこを目指していたので本当にありがたいご感想でした。今回のコラボ公演が両劇団の発展につながれば良いなあと切に思います。最後にキャストについて。

 

主演の小沢さん。本当に素敵な方でした。私よりも全然先輩なのですが、真摯にお芝居に取り組む姿勢に何よりも感動しました。私を信頼して私の演出をしっかりやってくださって、本当にリスペクトです。あと、あの圧倒的な存在感と愛くるしさ。あんな訳のわからない社長、小沢さんじゃなきゃ成立しなかったんじゃないかと思うくらいです。でも一番印象に残っているのは稽古場でのお茶目な事故の数々ですね。本当に笑わせてもらいましたし、稽古場が和みました。もしかして、そのあたりを計算してやっておられるのか・・・?まあ、それはないでしょうね笑。是非、またご一緒したいです。今度はお父さん役とか演出してみたいなあ。

 

土屋くん。彼も本当に真摯に芝居に取り組む。そしてクレバー。色んなことを考えて演じるだけではなく、シーン全体の見え方とか共演者の見え方とかも考えて芝居をしている。ちょっとうちの丸山と近いものを感じました。今回初めましてでしたが、遠慮なく意見も言ってくれるし、言ったことはすぐにフィックスしてくるし、いい役者ですよ!こういう役者とは「一緒に作品作りをしている」という気持ちになれて本当に楽しい。私はそういうのが大好きなんです。しっかり作った芝居をするのも上手いですが、実はアドリブ的なものも得意だと思います。頭の回転が早いですからね。本番が始まってからもその日のお客様の雰囲気や笑いによって少し芝居や言い方を変えたりと変幻自在でした。今回の座組は土屋くん以外にもそういう変幻自在に演じてくれたキャストが多くて、最後の二日は「あ、この座組はどんな雰囲気の客席も沸かせることができるな」と思えたほど。その先頭を走ってくれたのが土屋くんだと思います。ボブジャックシアターにも出てくれると約束したので、楽しみがまた増えました!

 

瞬くん(藤堂)。役的にも演技的にも今回の「コラボ」というものが一番色濃く出たのが瞬くんなのかなと思っています。ハチャメチャなボブジャック勢との絡みが一番多かった6Cメンバーですね。瞬くんは非常に柔軟な役者さんです。きっちりやるところはきっちりやってくれるし、遊ぶところは全力で遊んでくれる。瞬くんと民本の立てこもりシーンで「ああ〜」だけで色々会話するところがあったのですが、最初に稽古場で私が「ここ、ああ〜だけで1分は遊べるね」と言った時、ちょっと当惑したような表情をしていました。しかし、最終的にはあそこまでいっちゃいましたからね(本番をご覧になった方ならお分かりいただけるかと笑)。気弱な役から、強い役、かっこいい役などなど色々なキャラクターを演じることができるカメレオンプチイケメン俳優。それが私が瞬に出した答えです笑。

 

リズ(エリザベス・マリー)。以前から舞台上で演じている彼女はよく観ていたし、振付師としての腕も抜群で、振付をしてもらったことなどはあるのですが、役者と演出家という立場でご一緒するのは今回が初めて。ようやく念願が叶いました。今回の作品はリズがペースメーカーでした。彼女がほぼブレることなく毎回作品を引っ張ってくれたので、本当に頼もしかった。陰のMVPでしょうね。もちろん、陰だけでは終わらず、貪欲に笑いも取りに行ってくれたし、素晴らしかった。パワーでも男性陣に一歩も引けを取らなかったし、芝居も正確だし、ホント、良い女優と巡り会えました。今回の役は、リズにしかできなかったんじゃないかなと思わせてくれるほどとにかく素晴らしかったです。ボブジャックに出てくれた時は、民本とのガチ対決をもっと観てみたい!

 

沙予さん(佐藤)。このお話の落とし所、重し。土台をしっかり支えてくれました。沙予さんのお芝居の説得力。小沢さんもですが、やはり生きてきた年輪が違うんだろうなと。舞台では若い子だけの演目もあるのですが、やはりこういったベテランの役者さんが一人入るだけで全然違いますね。今回のお話は、少し後半が急展開な部分があるのですが、そこを沙予さんがしっかりと説得力を持たせてくれたのが本当に大きかった。このポジションに沙予さんをキャスティングしてくれたプロデューサー、グッジョブ!そして、あの民本の包帯を取るシーン。実はめちゃくちゃ難しいんです、タイミングが。それが毎回ぴったり!神がかってましたね。沙予さんがいてくれて本当に良かった!ありがとうございました!

 

実里ちゃん(松田)。ノッキンヘブン以来の2度目。いや〜あの時より確実に上手くなってる!前回のノッキンヘブンの時にもブログで書きましたが、彼女の演出信頼力はすごい。言ったことを次の稽古では必ずしっかりやってくれる。しかも120パーセントで笑。出演する舞台で毎回それをやってるんですから、上手くなるのも当然ですね。ご一緒するたびにどんどん変わっていく役者さんは本当に演出していて楽しい。ワクワクします。今回は唯一と言ってもいいくらいキワモノではない(掃除婦の沙予さんもキワモノではないか)役でしたが、彼女の真摯な演技と感情量がうまく作用していました。先ほど書いた「着地」ですね。次も必ずやる機会があると思うので、どこまで化けているのか今から楽しみです!

 

大津くん。モンスター民本の手綱を引いてくれた男。民本は多少の出来不出来があるのですが(まあ、それも含めて彼女の魅力ですが)、大津くんはほぼブレがなかった。なのであのハチャメチャコンビがいつも安定して場を引っ掻き回してくれました。大津くんの貢献度大です。稽古当初はあまり舎弟感を出せずにいたので「もっと知能指数を下げて」と演出しました。彼なりに色々研究して、稽古中盤ぐらいから姐御に負けず劣らずの「バカ」に見えてきました。にしても、民本大津のコンビは面白かった〜。座組で1番2番の小者感溢れる二人がみんなを脅してるっていう構造がたまらなく好きでした。終演後ももっと物怖じせず、どんどん自分をアピールしていって欲しいなあ。大丈夫、君はそれぐらいしても良い演技をしてるんだから!若くてエネルギッシュな良い役者に出会えました!

 

丸山、ことり、民本。自分ところの劇団員を捕まえて手前味噌なのですが、とんでもない奴らなんだなと再認識しました。やばい役者たちです。ボブジャックを観たことがないというお客様、丸山と民本はうちの看板俳優・女優です。ボブジャックってどんなお芝居してんだろ?と思っちゃいますよね笑。意外としっとりした作品やってます笑。

この三人はどこに連れていっても恥ずかしくない。そう素直に思える役者に成長してくれたなあと思います。まあ、まだまだ改善しないといけないところもあるけどねっ!今回は彼らがいたから、私も伸び伸び演出できました。本当に感謝!

 

おっと、長くなってしまいましたが、ここで締めくくりのブログを終わりたいと思います。本当に楽しく熱い1ヶ月でした。ご観劇ありがとうございました!劇団6番シード、ボブジャックシアターをこれからも宜しくお願いいたします。

いつかうちの守山脚本、松本さん演出の番外公演もやってみたいですね。ていうか、実現させますのでお楽しみに!!