改めまして、アリスインプロジェクト二月公演『DANCE!DANCE!DANCE! 踊りが丘学園』〜これが私の舞活動〜が無事に全日程終了いたしました!たくさんのご声援やご来場、誠にありがとうございました!16公演と長丁場でしたが、お客様から頂いたパワーのおかげで、誰一人欠けることなく乗り切ることができました。改めて深く御礼申し上げます。

さて恒例の演出ノート的な意味合いも込めての振り返りブログです。

まずは、作品や演出や諸々のネタ笑について書いていきたいと思います。

 

今回の演出のお話をアリスインさんから頂いた時は、「え?なんで私なんだろう?」と思いました。普段私は劇団ボブジャックシアターというところで演出をしているのですが、そこではダンスも殺陣もない会話劇をメインにやっています。アリスインさんをはじめ外部で演出する時は少し派手にするためにちょっとダンスを取り入れたりするものの、ベースが会話劇になっているものを今までやってきました。なので「ダンスバトル」と聞いてちょっとびっくり。しかも、企画のメインはこの「ダンスバトル」で、元々の話の内容もいわゆる殺陣シーンをダンスに置き換えたようなものでした。それが色々な話し合いで「学園もの」「コメディ」を基軸として「ダンスバトル」を盛り込む物語に変わっていきました。

でもこの方向転換があったからこそ、今回の作品は皆様から愛していただけるものになったのではないかと密かに思っています。今回はあくまで学園コメディでその中で起こる揉め事をダンスで解決するという部分で「ダンスバトル」を使用していましたが、ここが肝だと思います。だって、本当の意味での「戦い(体を傷つける)」だったら、絶対殺陣の方が直接的で迫力出ますからね。まあ、もしそういう意味での「ダンスバトル」だった場合はもう少し別のやり方、別の雰囲気の作品にはなっていたと思いますが。私としては、今回のストーリーの方が演出しやすかったのは確かです。

 

今回のお話、ダンスシーンが多いということもあり、起承転結が端的にされておりました。特に込み入った難しい設定や背景はなく、ストレートな物語。なので今回のテーマはリズムとテンポと笑いとエネルギーでした。これを満たすことができれば面白くなるだろうと考えプランを練りました。リズムとテンポでは物語が端的にまとめられているという点を活かすため「次々に何かが起こる」という印象を観ているお客様に与えるためにはどうすれば良いか、どれぐらいのテンポ感が良いのかを考えました。上演時間は短いけど盛りだくさんな感じになればいいなと。エネルギーはこの座組なら自然に出るだろうと考えていましたが、モブの芝居、特に人数も多かったのでガヤをみんなにもしっかりとやるように指示しました。笑いについては、後ほど書きます。

 

要素としては、ダンス、ネタ、ストーリーというのがちりばめられているのですが、とにかく作品全体としてのテンポ感を最重要視しました。単純に会話のテンポをあげるということではなく、シーンのつなぎや場面転換などをスムーズかつテンポよく作ることです。脚本をお読みになった方はわかると思いますが、脚本上の暗転をほとんどなくしました。別の方法でシーンをつなげました。この辺りは変更を快くOKしてくださった脚本の三井さんには感謝しております。三井さんが「面白くなるならなんでもしてください」というスタンスでいてくださったので本当に自由にやらせて頂けました。追加した部分も三井さんにチェックしていただき、キャラクターや脚本の雰囲気上、ズレている点などを修正していただきました。稽古場ではいつもニコニコしておられ、稽古後に「面白かった!」などありがたりご感想もいただき、大変勇気づけられました。

 

「ダンスバトル」「大人数」と私的にも未体験ゾーンがたくさんあったこの作品ですが、まず最初に頭を抱えたのはやはり登場人物の多さ。劇場KASSAIですから!というのもありますが、果たして全キャラをちゃんと生きたキャラにできるかどうかという部分も大きいですね。特にアリスインさんで演出させていただくときには「全キャストになんらかの見せ場や課題を与えたい」というのが私の中にはありまして、そこを考えるのがまず大変でした。もちろん、脚本でもキャラ付けはされていますが、演出側でも味付けをしないと特徴のあるキャラにできません。特に演技経験が少ない子や初舞台の子が多かったのでより気をつけました。小さなネタでもいいので何か見せ場を作りたい。そう思って稽古を進めながら「こんなのどう?」と提案していきました。もちろん、大人数が出るときの舞台上の配置にも相当苦労しました。スペースを確保するためにキャスト陣には動機的には少しずれている移動とかもしてもらいましたが、みんな上手く自分なりの整理をつけて動いてくれました。

 

ダンスバトルについては、振り付けをやって頂いた西田プロジェクトの皆様にコンセプトだけ伝えて後は全面的にお任せしました。部活ごとに特徴的な素敵な振り付けがあってこそのこの作品でしたので、本当に西田プロジェクトの皆様には頭が上がりません。ダンスの振り付け稽古自体は、上手い子が多かったので比較的スムーズにいきましたが(もちろん皆んなめちゃくちゃ練習してくれました)、ダンスとダンスのつなぎやそれに絡まるセリフなどテンポ感を失わずに作っていく部分では結構苦労しました。そのあたりの段取り稽古に結構時間を割きましたね。キャストのみんなにも色々意見を聞いて協力してもらいました。特に月組のMisakiちゃんには「このタイミングだとダンスに入りやすいです」とか「これぐらいの間隔があれば次の体勢にいけると思います」とかアドバイスをしてもらいました。私自身、ダンスのことはあまり詳しくないので非常に助かりました。

 

あと大変だったのは日替わりネタですね笑。元々脚本的にも「置かれている状況や流れが面白い」というシチュエーションコメディ的なものではものではなくセリフの小ネタやその登場人物のキャラクター性でおもしろが書かれていたので、ロングラン公演特にリピーター様が多いアリスインさんの公演では笑いが減っていくだろうなというのは予想しておりました。もちろん、お客様の声が薄くなっても面白いシーンではみなさまニコニコ観て頂いているのだとは思いますが、キャスト陣の勢いがなくなる可能性があります。やはり、お客様の生の反応はそれすなわちキャスト陣の活力ですから(若い座組では顕著ですね)。特に笑いに関しては絶大です。リピーター様でも何度も声を出して笑ってもらえるようなネタの刷新、雰囲気作りが必要だと思い、日替わりネタを取り入れました。また、誰かに日替わりネタをやってもらうと他のキャスト陣も「私も何か変えたい」となってきます。こういう流れは非常に重要です。芝居に前向きに接するといいますか。そしてその日替わりがウケたりすると「芝居って快感!」となります。演劇人としては多くの若い子達にお芝居を好きになってもらいたい。それは演劇界の未来に繋がると私は信じています。実際にアリスインさんをはじめ、ガールズ演劇で芝居を磨いた子たちが様々な舞台で大活躍して演劇界を盛り上げていますから。もちろん、日替わりネタが最も効果があるとは思いませんが、今作はコメディでしたのでやはり笑いを取らせてあげたいと。

とはいうものの、毎日毎日ネタを考えるのは相当大変でした笑。ネタの質はもちろん、みんなができそうなネタを提供しないといけませんからね。あーでもないこーでもないと開演直前まで頭を悩ましておりました。日によっては「ここは日替わり」と考えていたところじゃないシーンでもキャストが「私も新しいことがしたいです」と言ってきたときはなるべく新しいネタを提供してあげるよう頑張りました。大変でしたが、そう言ってくれるのがものすごく嬉しかったです。キャストによっては自分で新しいネタを考えてきてくれる子もいました。そのままOKを出したり、ちょっと修正したり、本番では「ウケてくれ!」と祈りながら観たり、なんやかんやで私も楽しんでました。

民本とのネタ会議は、お互いがネタを持ち寄って今日はこの組み合わせで行こうみたいな感じですかね。ちなみにネタがOKかの判断基準は渡壁ちゃんに観てもらって笑うかどうかでしたww。

 

今回は稽古期間中にインフルエンザが流行ったりなどなかなかに大変なことも多かったのですが、とにかくみんなが明るくて「なんとかなるんじゃない?」と私も常に前向きな気持ちでいれました。「踊りが丘学園」という名にふさわしい、賑やかな座組でした。「アリスインでは異色作」と多くの方から言われましたが、それも受け入れてたくさん笑って頂けたお客様があってこそ、この作品・そして座組は成長していくことができたのだと思います。

全キャスト・スタッフ、そしてすべてのお客様に改めて感謝!16公演、本当にありがとうございました!

 

次回はそんな賑やかなキャスト陣について書いていきます。